4打差逆転Vの28歳「気持ちの浮き沈みを抑えようと」 女子ゴルフの国内ツアー・宮里藍サントリーレディスは13日、兵庫・六甲国際GC(6517ヤード、パー72)で最終日が行われ、4打差2位で出た青木瀬令奈(フリー)は5バーディー、ボギーなしの…

4打差逆転Vの28歳「気持ちの浮き沈みを抑えようと」

 女子ゴルフの国内ツアー・宮里藍サントリーレディスは13日、兵庫・六甲国際GC(6517ヤード、パー72)で最終日が行われ、4打差2位で出た青木瀬令奈(フリー)は5バーディー、ボギーなしの67で回り、通算17アンダーで逆転勝利を収めた。2017年ヨネックスレディス以来、1470日ぶりのツアー通算2勝目。上位2選手に与えられる海外メジャー「AIG女子オープン」(8月19~22日、スコットランド・カーヌスティGL)の出場権を獲得した。

 絶好調の稲見萌寧を止めたのは、28歳のプレーヤーズ委員長だった。4打差で出た青木は9番で首位に並び、11番で単独首位に立った。16番のバーディーで突き放し、追ってくる若い選手たちを1ストローク、寄せ付けなかった。

 4年ぶりに掴んだ栄冠。今年は13試合で5度の予選落ちなど苦しんでいた。「長かったです。今年は不振だったので、しんどかったです。そんな中、大変な時も支え続けてくれた大西(翔太)コーチに感謝の気持ちでいっぱいです。今日のプレー中も笑わせようとしてきたのですが、笑わないと決めていたので」。優勝インタビューでは涙した青木が、記者会見場で笑顔を輝かせた。

 ティーオフ前から「絶対に優勝する」と心は熱かったが、気持ちは“静”に徹した。「気持ちの浮き沈みが激しいので、そういうのを抑えようと。表情筋から無にしてやろうと。『心拍数と気持ちは低い位置に』というのはずっと心がけていました。ずっとしれっとやっていました」。バックナイン。痺れるような優勝争いにも、心が高揚しないように努めた。

 常に冷静に――。親交のあるレーシングドライバー・松下信治との会話の中でヒントを得た。こんなエピソードを明かしていた。

「レーサーの方って平常心を保つみたいなトレーニングを凄くするみたいなんです、『0.1秒』の世界で判断が間違えば、本当に大事故に繋がって命を落としかねないという中で戦っている。そういう中でも平常心を保てるようなトレーニングをやっていると聞きました」

 昨年はF2に参戦、今年からスーパーフォーミュラのシートに座る1学年下の松下からのアドバイスを実践。スマホのアプリを使ったトレーニングを就寝前のルーティンにするようになったという。

終わりの時期は「つくらない」 次は「また3勝目に向かって頑張りたい」

 新たな才能が次々と台頭し、盛り上がる女子ゴルフ界。28歳の青木よりも若い選手が、毎試合リーダーボードの上位を賑わせる。「私が20歳過ぎの時は自分の同世代が優勝すると、悔しいという思いでしたが、今は若い世代の子たちが人気も注目度もある。『みんな頑張れ』とお姉さんの目線で応援しています」と笑いながら胸中を明かす。

 一方でゴルフ人生の終焉も意識するようになったのも事実だ。「コロナ禍で試合がなくなって、昨年くらいから(引退の時期を)考え始めたのはある。ゴルフじゃない、色々な職業の人の中には失業した方もいる。私もどうしようかなと……。そういうのを考えてしまった。良くなかったのかなとは思うのですが、終わりを決めてしまおうかなって」

 なんとなく頭をよぎった、プロゴルファーとしての区切り。だが、そんな時にも松下からの言葉で気付かされた。「今いる位置が自分が行きたかったところだから、そこから自分で降りることはないんだよって。今の位置にいるんだからその間はしっかりと目の前のことだけやっていったらどう?」。それが先月のこと。今は「色々な人の意見も聞きながら、終わりをつくらずいこうと思ってます」。モヤモヤしていた青木の気持ちは晴れていた。

 だからすぐに次の目標も出てくる。「これから先も一つ一つの積み重ねを怠ることなく、一つ一つこなして、また3勝目に向かって頑張りたいと思います」ときっぱりと口にした。クラブを置くのはまだ早い。若い選手の前に立ちはだかる存在になる。(THE ANSWER編集部)