プロレス大好き芸人ジグザグジギー宮澤聡が選ぶ「最高レスラー」 後編 前編を読む>> プロレスカード収集が趣味の芸人・ジグザグジギー宮澤聡。一般人に混ざって入り待ち、出待ちをしてカードにサインをもらった数は4000枚。取材を前に「もしファイル…

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ジグザグジギー宮澤聡が選ぶ「最高レスラー」 後編 前編を読む>>

 プロレスカード収集が趣味の芸人・ジグザグジギー宮澤聡。一般人に混ざって入り待ち、出待ちをしてカードにサインをもらった数は4000枚。取材を前に「もしファイルなどあれば持ってきていただけますか」とお願いしたところ、大量のファイルを持参してくれたが、「これで3分の1くらいです」と言われてひっくり返りそうになった。

そんな宮澤が選ぶ「最高レスラー5人」の前編では天龍源一郎、三沢光晴の心温まるエピソードを聞いたが、後編ではコレクター魂がさらに爆発する。


名前を挙げた

「最高レスラー」のサイン入りプロレスカードを持つ、ジグザグジギー宮澤

【最高レスラー#3】藤波辰爾

――前編に続く最高レスラー、3人目は藤波さんですね。

宮澤 藤波さんは、若い頃の下の名前が「辰巳」という漢字だったんです。今も藤波さんに「"辰巳"のサインを書いてくれませんか?」とお願いするファンの方が多いんですが、藤波さんは「ちょっとそれはなぁ......」という感じなんです。どうやって書いていたか覚えてないのもあるだろうし、「昔は振り返らない」という意味なのかもしれません。ただ......このカードを見てほしいんです。

――これは「辰巳」のサインですね!

宮澤 たまたま、藤波さんがちょっと手を滑らせたんですよ(笑)。立ちながらサインをもらった時に、「あっ!」と手が滑って、偶然、このサインになったんです。周りにいたファンに「これってあの"辰巳"ですよね?」と見せたら、「すごいじゃん! 藤波さん、そのサインは書かないよ!」と羨ましがられました。

――ほっこりしますね(笑)。

宮澤 現在、藤波さんの奥様が「藤波家の食卓」という食品ブランドを展開していて、デパ地下で一週間か二週間くらいブースを設けて販売しているんですけど、週末には藤波さんもいることがあるんです。知名度は抜群ですから、プロレスファンじゃなくても「藤波さんがいるんだったら買おう」となるみたいで。サインも写真も快く受けてくれますし、気さくに会話もしてくれます。SNSをチェックすると、奥様や藤波さん自身が「今日は何時からブースに行きます」といった投稿をしているので、その時間に合わせて行くと会える可能性は高くなりますね。

――SNSを見ておくのも、サイン集めには重要なんですね。

宮澤 サイン集めは、SNSの情報が命です。そこで出演するイベントなどの情報を書くということは、会いに行ってもいいということですから。

――そういう時のために、プロレスカードは常に持ち歩いているんですか?

宮澤 「ここなら出会いやすい」という人もいて、例えばDDTプロレスリングが経営するエビスコ酒場だったら、当然DDTの選手たちがご飯を食べに来ることが多い。新宿方面に行く時は、DDT勢のカードを持っていくことが多いですね。

【最高レスラー#4】ドン・フライ

――4人目は、PRIDEでも活躍したドン・フライ選手! サイン、シンプルですね(笑)。

宮澤 外国人レスラーの方のサインはシンプルなのが多いです。フニャフニャで、「本当にサイン?」みたいな人もいますね。

――ドン・フライ選手はどんな方でしたか?

宮澤 UFCでチャンピオンになったあと、1997年に新日本プロレスに参戦したわけですが、最初は小川直也選手のライバルで、ヒールだったんですよ。卑怯な手を使ったり、馬乗りになってパンチを入れてレフェリーが止めてもやめないとか。蝶野(正洋)さんのヒールユニットTEAM 2000にも加入していますしね。PRIDEに参戦してからは大歓声を浴びる人気者になるんですが、新日本にいる時は憎まれ役でしたね。

――サインもらうのも、勇気がいりそうですが......。

宮澤 でも、当時から会場での入り待ち、出待ちとかで恐る恐る近づくと、意外とファンサービスをしてくれました。日本のプロレスカードにすごく興味があるのか、いつも持っていったカードの表と裏をまじまじと見るんですよ。2、3種類持っていくと「Oh!」と反応もよくて。ただ、それだけならいいんですけど、「このカードをくれないか」と言われるのは参りました。

――選手もやはり欲しいんですね。

宮澤 トレーディングカードは海外のほうが盛んなので、外国人レスラーのほうが食いつきがいいかもしれません。ただ、持って行ったカードをあげてしまうと、サインを書いてもらうものがなくなってしまう。最初にドン・フライにそう言われた時は、中学生レベルの英語で「わかった、(カードを)届ける」と言いました。家に帰れば、同じカードが何枚もあるので。

――どこに届けたんですか?

宮澤 宿泊しているホテルに届けるのがもっとも確実です。調べていくうちになんとなく「ここかな?」というホテルはわかってくるんですが、どこで、どのタイミングで会えるかわからない。でも、他の選手でもそうですが、渡せる可能性が高いのは朝食。時間は6時とか6時半くらいですが、やはり彼もレストランに現れたので、「カード、持ってきましたよ」と差し出したら「Oh、Thank you!」と喜んでくれました。



サイン入りカードを前に、熱いプロレス話が止まらない

【最高レスラー#5】蝶野正洋

――5人目は、蝶野さん。カードの枚数が膨大ですね!

宮澤 蝶野さんだけで50、60枚あるんじゃないでしょうか。蝶野さんはとにかくファンサービスが神対応です。断るという感覚が、おそらく本人にはないと思いますね。マネージャーさんなどが「ごめんなさい、急いでいるので」と遮るパターンもありますけど、蝶野さん本人は、基本的には出されたものにはサインはするというスタンスです。

――これまでサインをもらいに行った中で、特に印象的な出来事はありますか?

宮澤 これは有名な話ですが、蝶野さんはものすごく時間に遅れる人なんです。一度、イベントの開始時間5分前になっても来ないことがあって。「ああ、やっぱり蝶野さんは当たり前のように遅れるんだな」と思っていたら、開始時間から10分くらいあとに車が到着したんです。でも、蝶野さんはまったく急がない。ゆっくり降りて、ゆっくり歩いて、僕たちファンに気づいて「サインするか?」と(笑)。さすがにマネージャーさんが「蝶野さん、あとです!」と止めましたが、ある意味、神対応中の神対応ですね。

――蝶野さんには怖いイメージもあったので、意外でした。

宮澤 ですよね。新日本の「黒のカリスマ」と呼ばれて、nWoからTEAM 2000というヒールユニットでやってきて、僕も最初は怖い人なのかなと思っていました。でも実際は、"闘魂三銃士"の中でも一番ファンサービスがよかった。武藤(敬司)さんも橋本(真也)さんも優しいんですけど、2人はタイミングがよければサインしてくれる感じでしたから。

――これで予定の5人は最後ですが、ちょっと怖いイメージだと、前田日明さんはいかがですか?

宮澤 前田さんもかなりファンサービスがいい方です。僕だったらプロレスカード、他のファンで昔のパンフレットなどにサインをお願いする方もいますが、書きながら「これは(ドン・中矢・)ニールセンとやった時で......」と、エピソードを話してくれるんですよ。写真を撮る時も、必ず肩を組んでくれますね。

――それはうれしいですね! すでに多くのサインをお持ちですが、今後、この選手のサインがほしい、何枚集めたいといった目標はありますか?

宮澤 小杉俊二 さんというすでに引退されている元レスラーで、現在、佐渡島で酒蔵をやっている方がいるんです。(獣神サンダー・)ライガーさんのひとつ上の先輩で、ヤングライオン杯(新日本プロレスの若手登竜門のリーグ戦)の第1回の優勝者です。コロナ禍が落ち着いたら、佐渡島にひとり旅がてら会いに行きたいですね。小杉さんのカードは1種類しかないんですが、それにサインをもらうために佐渡島まで行くっていうのが、ロマンかなと思います。

――佐渡島に行ったあとに、そのお話も聞いてみたいです。今回はありがとうございました!

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 サイン収集は、あくまでプロレスカードにこだわるという宮澤さん。夜、自宅でファイルをパラパラとめくり、「あの時はこうだったな、ああだったな」と思い出しながらお酒を飲むのが楽しみだという。プロレスについて語る宮澤の目は、少年のように輝いていた。

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