⻑野冬季五輪(1998年)を裏⽅から⽀えたテストジャンパーたちの奮闘を描いた映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』が6⽉18⽇、いよいよ全国の映画館で公開される。知られざる感動の実話をもとにした話題作の封切りを間近に控え、登場⼈物のモデ…

⻑野冬季五輪(1998年)を裏⽅から⽀えたテストジャンパーたちの奮闘を描いた映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』が6⽉18⽇、いよいよ全国の映画館で公開される。知られざる感動の実話をもとにした話題作の封切りを間近に控え、登場⼈物のモデルとなった元スキージャンプ選⼿の⻄⽅仁也さんと吉泉賀⼦さんが当時を振り返り、“物語の舞台裏”を語った。

『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』の登場⼈物のモデルとなった⻄⽅さん(右)と吉泉さん(左)

|対照的だった2人の五輪

西方さんはリレハンメル冬季五輪(1994年)で⼤ジャンプを披露し、⽇本代表の団体銀メダル獲得の⽴役者となった第一線級の選手だった。⻑野五輪でも代表候補として注⽬されていたが、腰の怪我で調整が遅れて落選。代わりに提示されたのは、テストジャンパーとして選⼿が安全に競技に臨めるよう何度もコースを跳ぶ裏⽅の役割だった。

本当ならば選手として立つはずだった五輪の舞台。⻄⽅さんは「⼤したプライドではないですけど、ライバルや知っている選⼿がいる前でテストジャンプをするのは悔しかった。その場にはいたくなかったですね」と当時の葛藤を明かした。

⼀⽅で、25⼈のテストジャンパーで唯⼀の⼥性だった吉泉さんは当時⾼校⽣。「あの頃は⼥⼦の⼤会がなかったので、試合に出させてもらえないことも多かった。初めて⽩⾺のスキー場に⾏って、しかもオリンピックに関わることができるというので、ドキドキワクワクがいっぱいでした」と希望に胸を膨らませていたという。

同じ⽴場で五輪に関わった2⼈の⼼境は、対照的だった。

裏方として長野五輪に関わることになった当時の葛藤を振り返る⻄⽅さん

|日本の“金”を託されたテストジャンパーたち

⼤会では、⽇本代表は岡部孝信、齋藤浩哉、原⽥雅彦、船⽊和喜の4選⼿で“⽇の丸⾶⾏隊”を結成しスキージャンプ団体戦に挑んだ。だが猛吹雪の影響で原⽥選⼿が⼤失速し、1 本⽬を終えた時点でメダル圏外の4位。さらに天候は悪化し、競技が中⽌されれば1本⽬の順位がそのまま確定してしまう事態に。

審判団から提⽰された競技再開の条件は「テストジャンパーがミスなく跳び続けること」。⽇本のメダル獲得の命運を託され、⻄⽅さんは「せめてメダルを取らせなかったら、選⼿たちの格好がつかない」。吉泉さんは「このままだと選⼿も関わった⼈たちも悔しいままで終わってしまう」。共通の⽬標に向かい、25⼈の思いが⼀つになった。

吹雪で視界が遮られる中、⼀丸となったテストジャンパーたちは次々とジャンプを成功。⻄⽅さんが基準地点を超えるジャンプを跳んだことで、競技再開に漕ぎ着けた。思いが実ったのか、2本⽬のジャンプで⽇の丸⾶⾏隊は好記録を連発。原⽥選⼿が1 本⽬の失敗を帳消しにする137mの⼤ジャンプを⾒せて、⽇本は悲願となる⾦メダルを獲得した。

なぜ、この“物語”は現実となったのか。

⻄⽅さんは「テストジャンパーには、⾃分も含めて本当は選⼿として出場したかったという⼈や、純粋にオリンピックに関わることができて感動している⼈がいて、⼀⼈⼀⼈に抱える思いがあった。そこに、⽇本のために選⼿にメダルを取らせてあげたいという共通の認識ができて、2週間の思いが1⽇に凝縮された感覚があったかな」と振り返る。

また、この経験は吉泉さんの中で⼤きな感動を⽣み、「当時はまだ⼥⼦のカテゴリーはなかったですが、将来⼥⼦種⽬ができた時には絶対に選⼿としてオリンピックの舞台に⽴ちたいと強く思うようになりました」と改めて決意するきっかけになったという。

テストジャンパーを経て、改めて女子選手として五輪を目指す思いが強くなったと語る吉泉さん

|物語の見どころ

映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』では、俳優の田中圭さんが⻄⽅選⼿の役を演じる。突然の怪我で五輪への道が閉ざされた挫折や葛藤、日本の金メダルのためテストジャンパーとしての役割を全うするまでの決意など、⼼の動きが丁寧に描かれている。
吉泉さんがモデルとなった⼥⼦選⼿・小林賀子を演じるのは、人気アイドルグループ『⽇向坂46』の⼩坂菜緒さん。ただ1人の女子選手として懸命に競技に向き合い、周囲の心を少しずつ動かしていく姿が見どころだ。
他にも西方選手を励まし支え続ける妻・幸枝(土屋太鳳さん)や、聴覚障害を抱えるテストジャンパー高橋竜二(山田裕貴さん)、西方選手の“因縁の相手”となった原田雅彦選手(濱津隆之さん)ら物語を盛り上げる登場人物が登場。それぞれの思いが複雑に交差し、感動のクライマックスへ続いていく。

自身がモデルとなった映画を見た2人の感想は?

⻄⽅さんは「⾃分は選⼿として⻑野オリンピックに出ることはできなかったけれど、感動をもらって気持ちに整理をつけることができた。映画を通じて、夢を叶えられなかった⼈たちが新しいきっかけを掴んでいただければ」と期待。吉泉さんは「⾟いことが多すぎる状況ですが、⽬標を持って⽣きていけば必ず明るい未来が待っていると前向きな気持ちにさせてくれる映画です」と呼びかけていた。

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