タジキスタンに4-1。活躍した選手もいれば、それほど活躍できなかった選手もいた試合だった。特段、派手な活躍をしたわけで…
タジキスタンに4-1。活躍した選手もいれば、それほど活躍できなかった選手もいた試合だった。特段、派手な活躍をしたわけではないが、存在感を示した選手もいた。3月の韓国戦に続き、代表戦で2度目の先発を飾った右サイドバック(SB)の山根視来(川崎フロンターレ)は、その代表格になる。4点目を除く3点に深く関わる合理的なプレーを見せた。

タジキスタン戦にフル出場し、勝利に貢献した右サイドバックの山根視来
前半6分、浅野拓磨(無所属)のシュートを相手GKが防いだその跳ね返りを古橋享梧(ヴィッセル神戸)が蹴り込んだ1点目は、山根が浅野に送った縦パスが、一番の決定的なプレーになる。アイスホッケー的に言えば、「ダブルアシスト(ゴールにつながった2つ前のプレー)」と言っていいパスだ。
右から古橋がマイナスに折り返したボールを、南野拓実(サウサンプトン)が押し込んだ2点目(前半40分)でも、山根はダブルアシスト役を果たしている。古橋に切れ味鋭い縦パスを送ったのが山根だった。相手に1-1の同点に追いつかれたのが前半9分だったので、日本にとって好ましくない時間は30分以上経過していた。嫌なムードを断ち来り、試合を決定づけるような縦パスだ。
橋本拳人(ロストフ)の代表初ゴールとなった3点目は正真正銘のアシストだった。山根の右サイドから差し込むようなパスを、橋本が巧く流し込んだ格好だが、パスそのものも、正確なシュートを誘発するような、上質さに富んでいた。
"タラレバ"になるが、山根が先発出場していなければ、日本はもっと苦戦していたのではないか。まさに救世主と言いたくなるプレー。マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍とは、このことを指す。
右SBはこれまで、酒井宏樹(マルセイユ)が1番手で、室屋成(ハノーファー)が2番手だった。3月に行なわれた国際試合(韓国戦とモンゴル戦)では、その両選手を招集できなかったので、山根と松原健(横浜F・マリノス)の国内組が、それぞれ代表初出場を飾った。今回も右SBは、酒井がU-24日本代表にオーバーエイジとして加わったことで、1枠空いていた。山根がそこに呼ばれたわけだが、この日のプレーは、もう代表チームで何試合も出場しているかのような落ち着きぶりだった。
酒井、室屋とはまたタイプの異なる右SBだ。パスが出せるうえに、間も取れる。川崎で替えの効かない右SBとして今季、フルタイム出場を続けている自信を垣間見た試合でもある。右SBのポジション争いは、これで俄然、面白くなったと見る。
一方、左SBは、佐々木翔(サンフレッチェ広島)が先発した。広島ではSBではなくセンターバック(CB)でプレーする31歳のベテランを、森保一監督はなぜ左SBとして呼び続けるのか。理解に苦しむが、それはともかく、このポジションの一番手は長友佑都(マルセイユ)だ。
この日の佐々木は、小川諒也(FC東京)と2番手争いを強いられている状況を反映するかのようなプレーをした。右の山根より積極的に前に出た。「CB的な選手と言われたくない」という思いが滲み出るような積極的な姿勢だったが、その割に、左サイドからの攻撃は機能しなかった。
佐々木にとってアンラッキーだったのは、ひとつ前の列でプレーする原口元気(ウニオン・ベルリン)が、コンビネーションプレーを得意にする選手ではなかったことだ。単身で勝負したがる、悪く言うならば、独りよがりなドリブラー。左サイドの攻撃が単調になる原因はそこにあった。
タジキスタンに1-1にされた後の30分余り。日本の攻撃はなぜ滞ったのか。見えてくるのは、SBとウイング(4-2―3-1の「3」の左右)とのコンビネーションなのである。
山根と古橋の関係も、決してよくなかった。原因は古橋のポジショニングにある。山根がサイドでボールを保持したとき、縦に入ることはまずない。2人がタッチラインと並行になり、三角形(パスコース)の底辺を形作るケースはほぼなかった。古橋は、得点という結果を残そうと焦ったのか、内へ内へと入った。古橋の折り返しを南野が決めた2点目も、内に入り込んでいた古橋の鼻先にパスを送った山根のパスセンスなしには、決まっていなかった得点だ。構造的な問題を、山根の1本のパスが解決した格好だ。
古橋は後半、4-2-3-1の「3」の左に回ったが、ここでも同じようなプレーに終始した。佐々木、そして交代で入った小川を悩ませる動きをした。持ち前の走力で活躍したかに見えるが、相手のレベルが上がったとき、どうなのか。同じスピード系ならば、古橋より伊東純也(ゲンク)に一日の長があると見る。
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4-2-3-1の「3」の右には後半、坂元達裕(セレッソ大阪)が起用された。目立った活躍はなかったが、坂元は山根にとって歓迎すべき相手だったに違いない。酒井、室屋が槍タイプのSBであるのに対し、山根はジワジワ型のSBだ。家長昭博(川崎)的なテイストを備えた坂元の方が、良好なコンビネーションは築きやすい。
チームとしてSBをいかに活躍させるか。この現代サッカーの概念がこの日の日本サッカーには不足していたのである。
もうひとり、光った選手を挙げるならば、山根とのコンビで3点目のゴールを決めた橋本だ。中盤で攻守にわたり獅子奮迅の活躍を披露した。守備的MFといえば、現在の第一人者は遠藤航(シュツットガルト)だ。1ボランチ(アンカー)の4-3-3で戦う場合は、遠藤が一番手になる。また、最近株を上げているのが、このタジキスタン戦で後半投入された守田英正(川崎)で、U-24の田中碧(川崎)と板倉滉(フローニンゲン)も、グッとよくなっている。
さらに、所属の川崎でCBを務める谷口彰悟も、前戦(U-24日本代表戦)に続き、この日も後半から守備的MFとして起用された。橋本拳人がしばらく代表を離れている間に、ライバルは急増していた。
守備的MFは人材豊富になっているが、この日の橋本は、首位を行く遠藤航さえ脅かしそうな、スケールの大きな好プレーを披露した。パスのキレという点では遠藤より上だ。身体に無理を効かせた泥臭いプレーもできる。総合力が高い守備的MFであることを、この試合を通してアピールした。
森保監督の見立てはいかに。この先も各ポジションで、競争が激しくなるような選手起用をしてほしいものである。スタメンが誰かわからない混沌とした状態が続くことは、チームがレベルアップした証。筆者としては大歓迎である。