日本サッカーの歴代センターバックで最高峰と今も高く評価されている、中澤佑二と田中マルクス闘莉王。いったい2人はどちらが優…

日本サッカーの歴代センターバックで最高峰と今も高く評価されている、中澤佑二と田中マルクス闘莉王。いったい2人はどちらが優れていたのだろうか? 日本代表で共にプレーし、Jリーグでは彼らと幾度となくマッチアップしてきた前田遼一氏(現ジュビロ磐田U-18コーチ)に、「タイプが違う」という2人の特徴を詳しく語ってもらった。

 2011年のチャリティーマッチで、佑二さんと1対1の局面になったことがありました。その時もトラップしたボールが少し大きくなってしまった瞬間に体を入れられて、まったく勝負させてもらえませんでした。チャリティーマッチという真剣勝負とはちょっと違う試合でも、少しの油断も許されなかったのが強烈に印象に残っています。

 こうした佑二さんの守備は基本に忠実で、日本人DFに多いタイプと言えるかもしれません。佑二さんと正対した時にドリブル突破できた印象はほとんどなく、まずそういう場面で勝負しようと考えていませんでした。仕掛けるよりも一度パスしてからもう一度もらうとか、違う選択肢を考えていました。

 闘莉王は1対1になると、あまり飛び込んできません。じっと我慢して、最終的に僕が仕掛けたところを狙って動いてきます。佑二さんのように常に狙うというより、持たせておいて大事なところで止めてくる印象です。

 闘莉王はある程度こっちの間合いで仕掛けさせてくれるので、佑二さんより1対1の勝負がしやすかったと思います。だからドリブルで何回か突破した印象は、闘莉王のほうが強いです。ただ、大事なところは止めてくるので、そこからゴールを多く決められた印象はないですね。

 2人は味方チームのCKから、高さで得点を取れる選手ですが、ここでも2人の違いがわかりやすく見てとれます。

 佑二さんの場合、CKでは動きながらタイミングよく入ってくるタイプで、非常に厄介でした。しかも常に自分の最高打点でボールを叩いてくるので、並みの選手では太刀打ちできません。

 高校生の時に、一度東京ヴェルディの練習に参加させてもらったことがあります。ゲームでCKになった時に誰も佑二さんをマークしたがらず、僕がマークにつかざるをえなくなりました。そしてあの迫力で高い打点でヘディングをされて......。僕はなにもできず、ただ見ていることしかできませんでした(笑)。

 一方、闘莉王は、CKではファーサイドで待っている印象があります。佑二さんのように最高打点でヘディングをするケースはあまりなくて、相手によってどこでヘディングするかを変えてきます。「この相手ならこのくらいの高さで勝てる」という判断で、打点の高さを変えていた印象です。

"ビルドアップ"の局面になると、存在感があるのはやはり闘莉王です。ボールを持った時にこちらのプレッシャーの状況によって、緩急を使い分けてきます。ドリブルで持ち上がることもあれば、ロングフィードで攻撃の起点にもなれるので、非常に選択肢の多い選手でした。起点をつくらせるわけにはいかないので、僕は闘莉王に対してはしっかりとプレッシャーをかけに行っていました。

 佑二さんは難しいことはせず、シンプルに素早くつないで、チームの駒として忠実にプレーをする印象です。つまり、佑二さんのところでボールが止まることがあまりないので、こちらはプレッシャーをかけようとしても寄せられなかった感じでした。

 2人とは代表チームで一緒にプレーする機会がありました。その時に感じたのは、コーチングの違いです。佑二さんは守備の局面で、すごく細かく指示を出すタイプです。前線の守備や詰めが少しでも甘かったりすると、すかさず「遼一! さぼるな!」とか、「もっと寄せろ!」と声が飛んできたのをよく覚えています。

 逆に闘莉王は、攻撃の局面での声が多かったですね。「もっとシンプルに前につないでいけよ!」とか、ボールの動かし方についてはよく言っていました。僕のところでしっかりとボールを収められると「ナイス! 遼一!」。あまり調子が良くないと「あいつダメだ」とストレートに言うところは闘莉王らしかったです(笑)。

 2人の特徴をいろいろと見てきましたが、それぞれ強みが違って単純な比較ができないので、どちらが優れたCBなのかは、ものすごく難しいです。

 守備力や攻撃力などを数値化して、選手単体としての能力を単純に比較したら闘莉王のほうが上だと思います。サッカーセンスがあって、遊びのゲームとかでも闘莉王はうまくて、ゴール前に上がって足元の技術で点を奪えるくらいの能力があります。

 ただ、チームとして戦うとなったら、佑二さんは自分の能力をグッと上げられて、その存在は絶大ですよね。だから、組織の中の駒の能力となると、佑二さんも引けを取りません。

 2人と対戦するのは、嫌でしたけど楽しみでもありました。日本で最高のDFとの勝負ですから、FWなら誰しもチャレンジしてみたくなる相手だったと思います。

 中澤&闘莉王のコンビは「日本歴代で最高のCBコンビ」と言いたいところですが、今の「吉田麻也&冨安健洋」のコンビもかなりのクオリティです。ただ、佑二さんと闘莉王が日本代表でコンビを組んだあの時代は、間違いなくこの2人が歴代で最高のコンビだったと思います。

中澤佑二
なかざわ・ゆうじ/1978年2月25日生まれ。埼玉県出身。三郷工業技術高卒業後ブラジルへ渡り、帰国後ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)の練習生を経て99年にプロ契約。02年からは横浜F・マリノスでプレーし数々のタイトル獲得に貢献。04年にはJリーグMVPに輝いた。日本代表では00年シドニー五輪に出場。06年ドイツ、10年南アフリカとW杯2大会出場。国際Aマッチ110試合出場17得点。J1通算593試合出場36得点。18年を最後に現役引退し、現在は解説者をはじめさまざまな活動をしている。

田中マルクス闘莉王
たなか・まるくす・とぅーりお/1981年4月24日生まれ。ブラジル・サンパウロ州出身。98年に来日、渋谷幕張高-サンフレッチェ広島-水戸ホーリーホック-浦和レッズ-名古屋グランパス-京都サンガF.C.でプレー。J1通算395試合出場75得点。J2通算134試合出場29得点。浦和時代の06年にJリーグMVPを獲得。03年に日本国籍を取得し、日本代表では04年アテネ五輪に出場。10年南アフリカ大会出場。国際Aマッチ43試合出場8得点。19年を最後に現役引退し、現在はブラジルで実業家として活動している。

前田遼一
まえだ・りょういち/1981年10月9日生まれ。兵庫県出身。暁星高から00年にジュビロ磐田入り。09年、10年にJリーグ得点王を獲得。15年からはFC東京、19年からFC岐阜でプレーし、20年を最後に現役引退した。J1通算429試合出場154得点。J2通算71試合出場22得点。J3通算25試合出場1得点。日本代表にはユース時代から選ばれてプレー。国際Aマッチ33試合出場10得点。11年AFCアジアカップ優勝などに貢献した。現在はジュビロ磐田U-18のコーチを務める。