突然のことながら歴史に残る一戦が組まれた。日本代表同士の対決。タブー視されるという話もある中で、日本代表と東京オリンピッ…
突然のことながら歴史に残る一戦が組まれた。日本代表同士の対決。タブー視されるという話もある中で、日本代表と東京オリンピックに出場するU-24日本代表の対決が実現した。
キリンチャレンジカップ2021で対戦する予定だったジャマイカ代表のヨーロッパ組の選手たちが、新型コロナウイルス(COVID-19)のPCR検査で陰性証明に不備があったことで来日できず。さらに、日本政府が掲げる感染防止の特別措置にあたる試合3日前の入国が不可能になったことで、中止となっていた。
その代役としてU-24日本代表との夢の対決が実現したわけだが、実際のところジャマイカ戦より楽しまれた方、または興味を持った方も多かったのではないだろうか。
「通常時では国際試合を行うのがベース」と反町康治技術委員長が語ったように、本来であれば組まれないカード。「非常時に限られているだけで、今後も実現しづらいと思います」と語ったように、もう二度と見ることはできないかもしれない。
そんな貴重な一戦だが、開始2分でA代表が先制。CKからいきなりゴールを奪うと、前半のうちに追加点。さらに後半も立ち上がりにゴールを奪い、終わってみれば3-0でA代表が勝利を見せた。
◆A代表が見せたメンタリティさ
「弟でもなんでもない」と反町技術委員長は語ったが、U-24日本代表といっても多くの選手がA代表を経験している状況。また、ヨーロッパでプレーする選手も多く、いわゆる世代別の代表という弱さはないチームだ。
しかし、3-0という結果になった差は確実にある。もちろん、致し方ない理由の1つとしてはコンディションの差だろう。
A代表は、5月28日に行われたミャンマー代表とのカタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選を戦うために、その前から調整。コンディションも整っている上、チームとしての活動期間も長く、その点では有利だったはずだ。
一方のU-24日本代表は5月31日にA代表との対戦が急きょ決定し、1日には北海道へ移動。当初の予定としては全くなかった移動と試合であり、選手たちは合流してから間も無く、5日のU-24ガーナ代表戦に焦点を当てていた。その点の差はあったと言えるだろう。
しかし、それ以上の差は別のところにある。1つは、A代表が見せたメンタリティだ。立ち上がり1分ちょっとで決めた先制ゴールもその1つ。室屋成(ハノーファー)が右サイドを仕掛けて得たCK。鎌田大地(フランクフルト)のクロスをニアサイドで大迫勇也(ブレーメン)がフリック。どフリーで待っていた橋本拳人(FCロストフ)が合わせた。
この場面、最初のセットプレーということもあり、U-24は少し緩んでいた。マークはついていたものの、動き出しに対してマークがズレると、ニアでフリックしたボールには誰1人反応できなかった。一方で、橋本はそこに来ることを読んでしっかりとポジションを取ったことで、嬉しい代表初ゴールを記録することとなった。
◆成熟されたオートマティズムさ
そのメンタリティとともに大きな差となったのが、チーム全体のオートマティズムだ。U-24日本代表の選手たちは、誰かがボールを持った際にワンテンポ動き出しが遅れる。ボールの出し手と受け手の連係が構築できていないことがわかるが、もちろんまだメンバーが決まっていない中、チームとしての活動時間も短いから仕方ない部分はある。
しかし、A代表は選手たちの意思疎通が図れており、2人目、3人目だけでなく、4人目や逆サイド、または攻撃時には守備陣も次の守備を予測したポジション取りと、全てがオートマチックに動いていた。
U-24日本代表がボールを握り、攻め込む時間帯も前後半ともにあったが、特に前半はA代表の守備陣は苦労せずに守れていた。それは、U-24日本代表がオートマチックに動かないため。
次何が起こすかを考えてからプレーするため、A代表の選手としてはスピード感も予測も上回ることができたと言えるだろう。
田川亨介(FC東京)が裏に抜けて独走したシーンが最大の決定機だったが、前半のピンチはあのシーンぐらいと言える。しかし、裏を完全に取られ、スピードある田川には追いつけないという状況。しかし、DF植田直通(ニーム)はボールや田川ではなく、シュートコースを限定しに動いていった。その結果、左利きの田川はファーサイドを狙えず、ニアを打ち抜こうとしたが、結果サイドネットを揺らすに止まった。
その判断力こそが、A代表とU-24日本代表との差であり、アジア2次予選で当たる国との差といえるだろう。すでに、そのレベルにはA代表はいないということだ。
◆真剣勝負の中の本気さ
「何よりよかったのは、昨日の試合に皆本気で悔しがってることです」と試合翌日にA代表のキャプテンであり、今回はオーバーエイジとしてU-24日本代表の活動に参加しているDF吉田麻也(サンプドリア)は語った。
U-24日本代表の選手たちは本気で勝ちに行っていたのだろう。結果は3-0だったが、決して諦めることなく、ハードワークし、本気で勝ちに行っていた。
しかし、勝利どころかゴールすら奪えなかったのが現実。様々な要素があっても、負けは負けだ。その差は、A代表が本気を出したからだろう。
ベストメンバーではなかったA代表だが、それでもそれぞれの選手が、A代表が目指すレベルのプレーを最初から発揮。U-24日本代表に、力を見せつけるという気概を感じた。
決して余裕があったわけではないだろう。気を抜けば、結果は違った可能性も高い。ただ、気を抜かなかったのがA代表であり、いつものパフォーマンスを出し続けようと突き詰めたのがA代表だったということだ。
U-24日本代表は、6月の2試合を終えて東京五輪へのメンバーが決定。そして1カ月後には開幕する。金メダルを目指すチームが、ワールドカップでベスト8を目指すチームから感じ取るものがあるのか。それは残りの試合と、東京五輪本番で見せてもらいたい。