『This is My Dance ~ 私の青春』(1)佐藤晴美インタビュー@後編前編はこちら>> 8歳でダンスと出会って以来、ステージのスポットライトを道標に突っ走ってきた佐藤晴美さん。15歳でFlowerメンバーの座を勝ち取り、E-gi…

『This is My Dance ~ 私の青春』(1)
佐藤晴美インタビュー@後編
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 8歳でダンスと出会って以来、ステージのスポットライトを道標に突っ走ってきた佐藤晴美さん。15歳でFlowerメンバーの座を勝ち取り、E-girlsではリーダーの重責も務めてきた。

 デビューから10年目を迎えた昨年、E-girlsは解散。彼女の旅路もひとつのマイルストーンに到達する。

 E-girlsとして「数々の夢を叶えてきた」という彼女は、ここから何を探し、どこへと進んでいくのか? 佐藤さんの"これから"を聞いた。



モデル活動について語ってくれた佐藤晴美さん

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「今回の撮影はインタビュー記事用なので、話している時の自然に生まれてくる笑顔とかも、ところどころに入れて。どんな記事のどんな場所でも使えるように、バリエーションをなんとなく意識してやっていました」

 インタビューが始まる前--。

 軽快に響くシャッター音に合わせ、彼女は次々にポーズと表情を変えていった。その動きはよどみなく、なおかつ、少しの視線、わずかな指先の動きひとつで、描く世界観や与える印象を劇的に塗りかえる。

 モデルとしてカメラの前に立つ彼女は、やはり、表現者だ。

「Flowerでデビューしてからまもなく、モデルのお仕事もやらせてもらえるようになりました。ただ、モデルに関しては『わたしなんて......』と思っていたので、そこからお仕事が広がっていくとは、あまり思っていなかったんです。でも、すごく楽しいし、もっとやれたらうれしいなーって思っていました。

 だからマネジャーさんやスタッフの方に『こういう写真を撮りたいんですけど、協力してもらえませんか?』と相談して、自社(LDH)刊行の雑誌で、好きなカメラマンさんやスタイリストさん、ヘアメイクさんに頼んでご一緒させて頂いたり。

 わたし、リサーチするのが好きで、こう見えても行動派なんです。すてきなモデルさんや海外の雑誌の写真を見つけたら、スタイリストさんやヘアメイクさんなどの名前をチェックし、そのアーティストのSNSも探したりして。いつか憧れのアーティストとご一緒できるように、と思いながら勉強しています。

 いろいろなことをリサーチしていると、自分がモデルとしてこういうふうに表現してみたいという思いが常にあったから次のステップに進んでいけたんだと思います」



 ダンスを始めた幼少期から、その優劣を周囲からジャッジされてきた彼女は、いつのころからか客観的視点を自身の内に育むようになったという。そのような自身に向けられる厳しい審美眼は、モデルとしての佐藤晴美も磨き上げた。

「ダンスを始めてから自然と、こういう曲の時に高い評価を得ているなとか......わたしは線が細くてなかなか筋肉がつきにくかったから、ダンスもジャズなど柔らかい動きが自分のパフォーマーとしての個性だと気づきました。

 モデルのお仕事が入るようになってからは、先生や学校に習いに行く訳ではないのですが、雑誌などで海外のモデルさんのポーズを見て勉強し、それをカメラの前で試したりしていました。E-girlsのアー写(アーティスト写真)撮影の時にも、勉強したことを試したり。インプットしたのをアウトプットして、その繰り返し。

 ただ最近は、逆にいろいろ考えすぎちゃっているのかも」

 モデルとしての仕事も増えていくなかで、何が正しいのか、どのようなポーズや表情が見る人の心を動かすのか......それらの試行錯誤を重ねて至ったのは、ダンサーとしての彼女が目指す地点とも同じ、表現者としての神髄だった。

「モデルとしての考え方は、ここ1年くらいでも本当に変わってきたと思います。洋服をきれいに着ることはもちろん大切だけれど、そのほかにモデル自身に魅力があるんだなと。

 以前は、きれいに着ようとか、そのためにスタイルを保とうって思っていたんです。でも、好きなモデルさんを見ると、やっぱりその人の人柄とか、中身を知りたくなってくる。だからわたしも、『知りたいな』と思ってもらえる人になりたいし、そのためには、どういう生活を送っているのか、どんなものを食べているのかも同時に発信していく女性になりたいなと思ったんです。

 それが理想なのかな。ひとりの女性として提案していきたいことがたくさんあるし、自分も楽しい。みなさんも、パーソナルな部分も知ることができたほうが楽しいのかなって。だから、私自身がまず、いろんな方面にアンテナを広げることを意識するようになりました」



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 自分が心地よく過ごせるようにライフスタイルや様々なジャンルに関心を抱くようになった佐藤さん。何を身体に摂り入れるかにも、彼女ならではのこだわりがある。

「食事は、なるべく添加物を摂らないように気をつけています。身体への影響がでると聞いて、可能な限り自分で料理する時は気をつけていますね。

 料理することの特権じゃないですか、何を食べるかを自分で決められるのは。でも基本は、好きなものは食べるようにしています。

 料理は好きですよ。無心になれるので。みじん切りとかに没頭していると、楽しくなっちゃう。浄化されるような気がするんです(笑)。

 ハマっている料理は、だし巻き卵です。お料理教室に通った時に、出汁の取り方をイチから教えてもらって、本格的なだし巻き卵を作れるようになったんです。フライパン選びも含めて、どれが一番きれいに巻けるか考えたりもしています。

 あとは最近、ワインにもハマっているんです。ヴァンナチュール限定の白ワイン。以前は全くお酒が飲めなかったのですが、今は自分の好きなワインを探して、夜に一杯だけおいしくいただきます。お母さんやお友だちと電話で話しながらワインを飲む時間が好きです」

 広くアンテナを張ることで、彼女は自分の新たな可能性を見いだしてきた。

 ただ、情報があふれる今の時代では、何を取捨選択すべきか戸惑うことも。そんな時に彼女が指標とするのは、自身の感性と、チャレンジ精神だ。

「今っていろんなことがすごいスピードで広がっている世の中だと思うので、すべての情報を受け止めてしまうと、自分がわからなくなる時代だなって感じています。

 でも、わたしは、自分が興味のある情報を取り入れることで、人生の幅を広げるのにはすごくいいのかなって思います。それこそ、料理も得意ではなかったけれど、やってみたら楽しくて、自分の余裕につながっている。

 思いもよらないところに、人生がよりよくなるきっかけがあると思います。いろんな情報があるので、見すぎると収集がつかなくなるところもあるけれど、興味があることにいろいろトライしてみることが、人生を楽しむ秘訣かなって思いますね」

 自分で自分の可能性を狭めることなく、人生の幅を広げていきたいという佐藤さん。そんな彼女に、今やってみたいこと、これから挑戦したいことを聞いた。

「デビュー曲を今踊ったら、どんな気持ちになるんだろうと考えることはあります。今の自分が踊る『Still』を見たら、ファンの方はどう思うのかなとか......想像すると、なんか泣けちゃいます。なにしろ、10年前ですから。

 ダンスで言うと、演者だけでなく、振り付けとかもやってみたいなって思います。これまでいろんなことを経験し、いいものを本当にいいと思える自分になれたので、いいと思うダンスも変わってきていると思うんです。今の自分で、立場を変えて振り付けにチャレンジするのも面白そうだなって思います。

 あとは......えー、なんだろ。お芝居もそうだし、モデルやライフスタイルも深堀りしたいし......。やりたいことはもう始めている、すでにチャレンジしている。なので、それらを突き詰めていきたいです!」

 ダンスを「原点」だと規定し、「人生を語るように踊る」ことを追及してきた彼女は、10年のマイルストーンに至った今、まるで原点回帰するかのように、デビュー曲を踊ってみたいのだと言った。

 そのスタート地点から視線を上げ、より広い景色をとらえながら、新たな道を歩んでいく。佐藤晴美という表現者が、もっとも輝ける場所を目指して。

(おわり)

Profile
佐藤晴美(さとう・はるみ)
モデル・女優・アーティスト
1995年生まれ、山形出身。2011年、Flower、E-girlsに加入。
2020年12月E-girls解散にともない、ソロ・アーティストとして
活動をスタート。173cmの長身でモデルとしても注目され、
ファッション誌やショーで活躍。また、女優として、ドラマや
舞台に出演するなど、幅広く活動している