後がない第4戦で大活躍を見せた八村(写真をクリックするとウィザーズ公式日本語ツイッターのインタビューが見られます) イー…

後がない第4戦で大活躍を見せた八村(写真をクリックするとウィザーズ公式日本語ツイッターのインタビューが見られます)

 

 イースタンカンファレンス第1シードのフィラデルフィア・セブンティシクサーズとのプレーオフ・ファーストラウンドに臨んでいるワシントン・ウィザーズが、シリーズ第4戦目にして122-114で初勝利を手にした。0勝3敗であと1試合でも負ければシーズン終了という瀬戸際で臨んだ試合。しかしウィザーズは是が非でも手にしたかった1勝をつかみ取り、八村 塁はキャリア初のNBAプレーオフ勝利という新たな一歩を印した。日本人プレーヤーとしては史上初めての快挙だ。
 しかも八村は20得点、13リバウンド、2アシストにスティールとブロックも1本ずつ記録。シューティング関しては、12本のフィールドゴールアテンプトのうち8本を成功させ66.7%、3P成功率も50%(6本中3本成功)という非常に堅実な数字を残した。得点はブラッドリー・ビール(27得点)に次ぐチーム2位、リバウンドはキャリアハイであり、かつラッセル・ウエストブルック(21本)に次ぐこれもチーム2位と、まさしくウィザーズの「ビッグスリー」の一角と呼ぶにふさわしい内容だった。
 これらの数字を並べただけでも驚くべき内容だということがわかるが、実際の試合の流れの中で展開に大きな影響をもたらす重要なプレーをいくつもやってみせていた。その一つがウィザーズの60得点目となったプレー。第1クォーターから2ケタの点差でビハインドという窮地に立たされたウィザーズだったが、前半残り1分を切って58-58の同点に追いつき、さらに勢いづこうという場面でだった。
 183cmとNBAでは小柄なガードのイシュ・スミスがシクサーズの得点源の一人であるトバイアス・ハリス(203cm)のレイアップをブロック。そのこぼれ球を拾ったウエストブルックが、トランジションですかさずフロントランナーとなった八村にパスを送る。八村はこのボールをファンブルしかけたが、左手でコントロールして空中に振りかざし、豪快なダンクでフィニッシュした。これがこの試合におけるウィザーズにとっての初リード。後半の戦いに向けチームに勢いをもたらす一撃だった。
 また、113-111の2点リードで第4Q残り1分16秒に飛び出した速攻でのダンクは、その前のポゼッションでオフェンス・リバウンドを2度奪われ、3度目のショットが外れたこぼれ球を、これもウエストブルックがフロントランナーとなった八村を見つけたもの。ここで得点を許していたら…という危機から一転115-111と2ポゼッションのリードにしたこのプレーで、ウィザーズは勝利に向けて良い流れをつかむことができた。
 さらに決定的だったのが115-112で迎えた残り45.6秒のプレー。ビールがトップからゴールにアタックし、ドライブ&キックでボールが右コーナーの八村の手元へ。ワイドオープンで狙った3Pショットはみごとにスウィッシュとなり、118-112とウィザーズのリードは6点差に広がった。最終的なスコアは122-114だが、このプレーがシクサーズの息の根を止めたと言っていいだろう。
 この勝利の意味は言うまでもなくウィザーズにとって大きい。前半半ばにシクサーズのジョエル・エンビードが膝の痛みを訴え離脱したこともあり、第5戦以降にどのような展開が待っているか、まったく予想がつかない状態となった。

 ウィザーズ側はこの日、ウエストブルックが前述の21リバウンドに加え19得点、14アシストでトリプルダブルといつも通りの奮闘を見せており、ビールも3Pショットこそ不振(シリーズ4試合で25本中成功が5本のみ)だが、得点自体は獲れている。シューターのダービス・ベルターンスがこの試合中に右ふくらはぎの張りを訴えて離脱した点は大いに心配だが、フィラデルフィアで行われる第5戦をしのげたら、その後の展開は本当にわからない。
 この試合ではウィザーズは、終盤ベン・シモンズにファウルゲームを仕掛け、それが奏功していた。シモンズはこのシリーズの最初の3試合でフリースロー9本すべてを外すという思わぬスランプに陥っていたのだ。第4Q終盤にボールがシクサーズに渡ると、ウィザーズはすぐさまシモンズにファウルし、フリースローを打たせる展開。シモンズは第4Qに8本のフリースローを得たが、そのうち成功は4本に終わりウィザーズの術中にはまってしまった。

 

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ブルックスHCも八村の活躍を絶賛していた(写真をクリックするとウィザーズ公式YouTubeの八村ハイライトが見られます)

 

 シクサーズのドック・リバースHCは試合後の会見で、「誰もが皆、この試合で決めなければと思ってしまいました」と話し、エンビードが離脱した後チームの中にスウィープでシリーズを終えようとやや気の焦りがあったことを明かした。「やるべきことはきちんとやらなければいけません。今夜はそれが攻守ともにできませんでした」
 一方、ウィザーズのスコット・ブルックスHCには、会見の出鼻から八村関連の質問が問いかけられた。「ルイは本当にこのチームで、攻守両面で大きな存在感を見せてくれています。いろんなタイプの相手をガードできるし、あのディフェンスでのリバウンドは欠かせません。(ウエストブルックがリバウンドに強いからといって)ポイントガードに頼るべきではありません。重要なスリーも決めたし、重要な局面で良いディフェンスを見せてくれました」と絶賛していた。
 ブルックスHCに続いてズーム会見に現れたのは八村だった。現地の記者たちは「Breakout game(大ブレイクした試合)」という言葉を使って八村の活躍を称えていた。最初に質問した記者(チェイス・ヒューズ氏)から、「もうプレーオフの舞台に慣れてきましたか? プレーインを含め6試合で心地よくプレーできるようになっているんでしょうか?」と聞かれた八村は、「今日は特に盛り上がったファンの前でプレーできて、特に楽しかったです(Yeah, especially tonight was really fun, you know playing in front of these fans. It was crazy.)」と心臓の強さを見せた。
 シーズン中の八村はミドルレンジからのショットを大きな武器としていたが、この日はそのアテンプトは1本だけ(成功)で、他はペイント(5本中4本成功)と3Pショット。ダンクが4本ありゴールに向かうアグレッシブさをより強く印象づけるとともに、アウトサイドで放っておけない存在であることを見せつけた。脅威のレベルは格段に上がっている。
 …と、書くのは簡単なのだが、どれだけすごいことか。八村はこの進化を、いわゆるイリミネーション・ゲーム(elimination game)と呼ばれる0勝3敗の崖っぷちで迎えたシリーズ第4戦で披露し、静かな表情で「楽しかった」と振り返る。ウインターカップで全国制覇をした後で「バスケは楽しいです」と言っていた当時のあどけない笑顔も懐かしく思い出された。今、目指しているのは最高峰NBAのチャンピオンシップ。あどけない笑顔は精悍な大人の顔立ちに変わっている。

 

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文/柴田 健 (月バス.com)
(月刊バスケットボール)