サッカーファンは人生の多くの時間をスタジアムで過ごす。応援するクラブのホームスタジアムは、ファン、サポーターにとってき…
サッカーファンは人生の多くの時間をスタジアムで過ごす。応援するクラブのホームスタジアムは、ファン、サポーターにとってきわめて重要な場所なのだ。川崎フロンターレのホームの等々力競技場がサッカー専用に改修される。現在はサッカーのピッチを陸上用のトラックが囲んでいるが、改装で観戦スタンドとピッチの距離が近くなり、観客数も増える見込みだ。スタジアムは地域の社交の場でもある。良いスタジアムは人々の暮らしを豊かにする。専用スタジアムは、クラブだけでなく、市民にとっていかに大切であることか——。
■日本の各地にサッカー専用スタジアムが続々と
最近では日本でもサッカー専用スタジアムが数多く建設されている。
1993年にJリーグが発足した当時、日本には旧・国立競技場や広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)などいくつかの陸上競技兼用の大規模スタジアムと小規模な球技専用スタジアムがあるだけだった。
その後、2002年ワールドカップの開催をきっかけに新スタジアムがいくつも建設されたのだが、ワールドカップ決勝が行われた横浜国際総合競技場(日産スタジアム)など多くのスタジアムが陸上競技との兼用だった。また、スタンドの傾斜が緩すぎるとか、メインスタンドの屋根の下でも雨が降り込んでしまうなど必ずしも観戦環境の良くないスタジアムも多く、しかも2002年のワールドカップの時に建設されたスタジアムは築25年ほどになり、すでに老朽化も始まろうとしている。
そうした中、日本でも新しい世代のサッカー専用スタジアムが建設されるようになった。
2015年にはガンバ大阪が「パナソニックスタジアム吹田」を建設した。クラブがスタジアムを建設して、それを自治体(吹田市)に寄付するという方式も新しかったし、完成したスタジアムも4万人収容の専用スタジアムであり、ヨーロッパの最近のスタジアムに範を取った素晴らしいスタジアムだった。そして、それ以後、各地にサッカー専用スタジアムが建設され、また計画中のスタジアムも多い。
吹田スタジアムは大阪モノレールの駅から遠く、アクセスが悪かったし、売店やトイレが混み合うといった問題点も抱えていたが、その後に建設されたスタジアムはそのあたりも改善されているところが多い。
中でも、2020年に完成した京都サンガFCのホーム「サンガスタジアム by KYOCERA」はJR亀岡駅から至近距離でアクセスも抜群。サッカー専用でピッチに近く、しかも俯瞰的にピッチを見下ろせるスタンドの構造もよく考えられているし、また、ゲートをくぐってコンコースまで出なくてもスタンド内側にも売店やトイレが数多く設置されるなど観戦環境は素晴らしい。現在の日本で最高のスタジアムと言っていいだろう。
J1のセレッソ大阪のホーム「ヨドコウ桜スタジアム」は長居球技場(旧・キンチョウスタジアム)を改装したものだが、間もなく6月には開場。7月には東京オリンピックに出場するUー24日本代表とホンジュラスとの試合に使用されることも決まった。
J1やJ2リーグだけでない。今シーズンJ3リーグ入りしたばかりのテゲバジャーロ宮崎の「ユニリーバスタジアム新富」や関東サッカーリーグ1部所属の栃木シティFCの「CITY FOOTBALL STATION」など、下部リーグでも独自の専用スタジアムを建設するクラブが出現している。
■都市型スタジアムでのさまざまな空間活用
こうして、各地に新スタジアムが完成しており、いずれ新型コロナウイルス感染症が収束すれば観戦環境の改善による観客動員数の伸びも期待していいだろう。観客数が増加すれば、入場料収入やスポンサー料も増加し、クラブ経営にとっても明るい材料となる。
今後の課題は都市型の専用スタジアムとしてスタジアムをどのように活用していくかというソフト面での工夫であろう。
最近のヨーロッパの(あるいはアメリカの)都市型スタジアムでは、スタンド下の空間がさまざまな用途に利用されるようになっている。昨年、日本代表が親善試合を行ったオランダ・ユトレヒトのハルヘンワールト・スタジアムが1982年に全面改装された当時、コーナー付近に小さなオフィスビルを設けたことで注目を集めたが、今ではそうした構造は当たり前のこととなっており、スタンド下にはショッピングモールや映画館、会議場、ホテルなどを併設することが一般的になっている。
こうした施設は試合のない日でも市民が集まるコミュニティーの交流の場になるので社会的な意味を持つし、また試合のない日でもスタジアムから収入が生まれるのだ。
日本では、スタジアムの多くが公園法という法律に則って建設されていることもあって、スタジアムの商業利用は進んでいないが、「サンガスタジアム」ではスタンド下がスポーツショップやイベント会場として利用されている。
川崎フロンターレといえばアイディア溢れるファンサービスを駆使して「地域密着」を実現してきたクラブだ。新スタジアム完成後はスタジアムの指定管理者となって、所有者である川崎市とも連携して、スタジアムをコミュニティーの中核とするためにうまく活用していってほしいものである。