「オープン球話」連載第66回 第65回を読む>>【『珍プレー好プレー』で見せる姿は仮の姿】――さて、前回に引き続き、現東…

「オープン球話」連載第66回 第65回を読む>>

【『珍プレー好プレー』で見せる姿は仮の姿】

――さて、前回に引き続き、現東京ヤクルトスワローズ監督・高津臣吾さんについて伺います。高津さんについて、「愛想のいい男」と話していましたが、プライベートではどんな性格の方なんですか?

八重樫 『プロ野球珍プレー好プレー』のアフロ姿が話題になったけど、僕から見た普段の臣吾は、決してああいうタイプじゃないんですよ。特別ひょうきんというわけでもないし、浮ついている感じもない。ただ、彼は気持ちの切り替えがとても上手なので、ピンと張りつめたときや緊張状態にあるときには、意識的に明るく振る舞うことができるタイプだと思うんです。



現役時代は明るいキャラクターが印象的だった現ヤクルト高津監督

――では、八重樫さんにとってテレビカメラの前の高津さんは、ファンサービスの一環として、意識的に明るく振る舞っているという印象なんですか?

八重樫 まさに、そうですね。リリーフ投手になって活躍していた頃のことだけど、彼はクローザーだから試合が始まったばかりの頃はクラブハウスで待機していて、試合途中に球場入りするんです。みんながベンチ入りするときに、明るい声で「頑張れよ」って後輩たちに声をかけたり冗談を言っているんだけど、そういうときは大体、臣吾自身の調子が悪いときなんですよ。

――調子が悪いときこそ、あえて明るく振る舞っていた?

八重樫 たぶんね。ブルペンに入るときも、僕の顔を見ながら「じゃあ、八重樫さん、行ってきます!」って元気に明るく言うんです。そういうときは調子が悪いか、肩や、ヒジに不安があるとき。現役晩年は痛み止めの薬をいつも飲んでいたけど、そういうときこそ明るさを失わなかった。とても好きなタイプの人間ですね。

――八重樫さんは、自分のやるべきことを黙々とやる人間が好きですもんね。そういう意味では、テレビのバラエティー番組で見ている姿と、本来の高津さんは違うんですね。

八重樫 僕は違うと思います。ただ、だからといって暗いわけじゃなくて、根は明るい男ですよ。僕が打撃コーチをしていたときも、試合前に顔を合わすと、「今日はやりますよ!」って人懐っこく近づいてくるんで、かわいかったですね(笑)。

【高津は大好きなタイプの男】

――池山隆寛、広沢克己両選手による「イケトラコンビ」が注目され、長嶋一茂さんも加わり、1990年代初頭のヤクルトはとても明るいチームでした。でも、一方では「上下関係が曖昧になっていった」と八重樫さんは言っていましたが、高津さんの先輩たちとのつき合い方はどうだったんですか?

八重樫 同世代といるときには、みんなでワーワー楽しそうにしていたけど、僕ら先輩に対してはしっかりとあいさつをする礼儀正しいタイプでした。きっと、亜細亜大学の厳しい伝統が身についているからじゃないのかな? 亜細亜の先輩の宮本賢治もそういうタイプだったし、宮本も高津のことをかわいがりつつも、厳しく接していたからね。宮本は、自分が現役を引退してコーチになってからも、亜細亜の後輩には厳しくしつけていましたから。

――自分の仕事は黙々とやり、普段は明るく人懐っこくて、その上、上下関係もきちんとわきまえている。そうなると、完全に八重樫さんの好きなタイプですね(笑)。

八重樫 そうそう、本当に好きなタイプ(笑)。だから、個人的にもずっと応援していたんですよ。

――クローザーとしての高津さんをどのように評価しますか?

八重樫 前回も言ったけど、ここまですごいクローザーになるとは思わなかったな。彼がすばらしかったところは、年々凄みを増していったところ。一球も抜かず、すべてのボールに気迫がこもっていた。ピンチの場面でも決して表情に出さないし、動揺するそぶりなんて微塵も見せなかったですからね。ああいう姿はベンチから見ていても、チームメイトたちからの信頼を得ますよ。でも、彼のすごいところはもっと別のところにあるんです。

――それはどんな点ですか?

八重樫 切り替えの早さ。気持ちのコントロールのうまさ。それは誰にもマネできない一流のものがありました。抑え投手は責任重大でしょ? 普通、自分が打たれて先発投手の勝利を消したり、チームが負けたりしたら落ち込みますよ。しばらくの間は、ネチネチ、グジグジといろんなことを考えるものです。でも、臣吾にはそれがなかった。その点だけでも、すごいことですよ。

【類まれなる「切り替え力」】

――もちろん、反省しないとか、落ち込まないということではないと思います。そういう悩んでいる姿を人前では見せないということですか?

八重樫 そうですね。たとえば、臣吾が打たれてチームが負けたとするじゃないですか? そうすると、黙ったままクラブハウスに戻ってきます。さすがに10分、20分はその日の反省をしているんだけど、それ以降は何事もなかった顔でスッと家に帰る。もちろん、悔しくないはずはないんです。でも、それを表に出さない。それが臣吾のいいところですよ。クローザーとして必要不可欠な要素だと思いますね。

――結果が良くても、悪くても、すぐに「切り替える」というのはクローザーにとってすごく大切な要素ですね。

八重樫 ヤクルトのクローザー時代もそうだったけど、後にメジャーに行ったり、台湾や韓国でプレーしたり、最後には独立リーグにも行った。どんな環境下であっても、それを受け入れて、黙々と自分のやるべきことをやる。それは彼の「切り替え力」があるからこそだと思うんです。

――なるほど。先日、高津監督にインタビューした際に、コロナ禍による選手離脱について質問した際も、「いない選手のことを言っても仕方ない。いる選手でできることをするだけだ」とおっしゃっていました。それもまた「切り替え力」の一環ですね。

八重樫 本当にそうですね。監督になってからの臣吾を見ていると、ますます切り替え力が増してきているように思うんだよね。彼がヤクルトの監督に就任することが決まったとき、僕はすごく嬉しかったんですよ。

――どうしてですか?

八重樫 「臣吾なら、絶対にいい監督になる」って思ったからです。僕が見てきた臣吾の経歴や考え方、野球への取り組み方を考えたら、すごくいい監督になれると。僕はいろいろな監督の下でプレーしたり、コーチをやったりしたけど、臣吾は三原脩さんタイプですね。

――「名将」と謳われた三原修監督タイプなんですか? ぜひ、詳しくお聞きしたいんですが、そろそろ紙幅も尽きました。この続きは、ぜひ次回にお願いします。

八重樫 今年のヤクルトは頑張っているよね。ぜひ、臣吾について次回もお話します。

(第67回につづく>>)