中村憲剛×佐藤寿人第2回「日本サッカー向上委員会」@中編 1980年生まれの中村憲剛と、1982年生まれの佐藤寿人。 2…
中村憲剛×佐藤寿人
第2回「日本サッカー向上委員会」@中編
1980年生まれの中村憲剛と、1982年生まれの佐藤寿人。 2020年シーズンかぎりでユニフォームを脱いだふたりのレジェンドは、現役時代から仲がいい。気の置けない関係だから、彼らが交わすトークは本音ばかりだ。ならば、ふたりに日本サッカーについて語り合ってもらえれば、もっといい未来が見えてくるのではないか。飾らない言葉が飛び交う「日本サッカー向上委員会」、第2回は若い世代の海外移籍について語ってもらった。
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本田圭佑が次の移籍先に選んだ国はアゼルバイジャン
---- 海外のクラブからオファーが来るのは、かつては日本代表クラスに限られていました。しかし近年は、Jリーグでの実績がそれほどない若手にも海外からオファーが来る流れが生まれています。日本人選手が海外のクラブから見られやすくなったことも理由のひとつでしょうか。
中村 それは間違いないですね。ウインドーとして昔は見向きもされていなかったけど、カズさん(三浦知良/1994年にヴェルディ川崎からジェノアに移籍)、ヒデさん(中田英寿/1998年にベルマーレ平塚からペルージャに移籍)が切り開いてくれて、2010年頃の第2期に海を渡った選手たちが間口を広げていって、長谷部(誠/現フランクフルト)や(香川)真司(現PAOKテッサロニキ)たちが日本人のブランド力を高めてくれた。日本人に対する信頼というのは生まれていると思いますね。
佐藤 Jリーグの選手もある程度データとして数値化されていて、それが共通の指標として世界にも見られているんですよね。たとえば浅野(拓磨/前パルチザン)はあるひとつの項目、走る速さが突出していたのが目にとまって、アーセナルからオファーが来たんです。
---- しっかりとした評価軸があるなかでのオファーですから、年齢にかかわらず海外移籍を決断するのは問題ないと。
佐藤 僕はいいと思いますよ。最終的に決めるのは選手ですから。これは、国内・海外移籍にかかわらず同じこと。それに伴う責任と覚悟は個人のもので、そこをどう考えるかなんでしょうね。
中村 行くのは悪いことではないけど、準備も含めてやらないといけないということ。準備不足のまま行っても、なかなかうまくはいかないと思うんですよね。実際、ヨーロッパにはかなりの数の選手が行っているけど、活躍して取り上げられる選手はそこまで多くないのが現状です。
そういう状況を見ると、ある程度Jリーグでプロとしての土台を作ってから行ったほうが、長く向こうでできるんじゃないかなとは思いますね。でも、それだと年齢的にもう遅いという世界でもありますから、難しいですよね。
行くタイミングと、行くチームによってもかなり変わってきますし。そこは運みたいなところもある。自分を呼んでくれた監督がいなくなることも普通にあるので。あとは、圧倒的に違うのは「助っ人」という立場になるということですね。
佐藤 そういう感覚がまだないですよね。コメントとかを聞くと、「チャレンジしたい」とかいうじゃないですか。もうその時点で、助っ人じゃない。
中村 そうなんだよね。行くことはいいことだと思うし、違う文化に触れることもそう。僕は海外のクラブでプレーした経験はないけど、代表で海外に行って活動するなかで、食事や気候・文化など刺激を受けることはたくさんあった。
普通に生活するなかで、人間的に成長できることもあると思う。本場で揉まれれば、いろいろ経験できることもあるだろうし。でも、やっぱり試合に出られないのが一番厳しいと思う。しかも、伸び盛りの20代前半でそういう機会を逸してしまうと、積み上がるものも積み上がらない。
やっぱり、結果がすべての世界なので、試合に出られないともったいないです。そういう意味では、行けばいいというわけではないと思います。
---- 出られない可能性が高いビッグクラブからのオファーも、最近は増えています。
中村 板倉(滉/現フローニンゲン)がマンチェスター・シティからオファーを受けた時、本人から連絡があって。シティからオファーが来て、断るわけにはいかないだろうとは言いました。フローニンゲンにレンタルされることも決まっていたから、すぐにはシティでプレーできないけど、その枠の中に入っていること自体が大きいことだから行くべきだと。
彼の場合はフロンターレでそこまで試合に出られなかったけど、仙台で1年間レギュラーとしてプレーしてベースを作ることができていましたから、さっき自分が言った条件みたいなものには当てはまっていたかなと。結果として、今フローニンゲンでキャプテンをやるまでになっていますから。
だから、チームがその選手を獲る際に、熱意も含めてどれだけ考えてくれているかも重要なこと。そのあたりも踏まえて決断しないといけないだろうし、逆にこのタイミングでは早いからちょっと待とうと思っても、半年後に大ケガをして移籍のチャンスを逸してしまう可能性もゼロではない。だから、オファーが来た時に行けるような準備をあらかじめしておくことがベストなんじゃないかと思いますね。
佐藤 移籍は個人の意思の上に成り立つものですからね。選手がそれに対してどう準備をしていくか。そこは、年齢は関係ないですよ。経験値が足りないなかでオファーが来るかもしれないですけど、精神的な部分での準備はできる。
たとえば、グランパスからオランダのAZに行った菅原(由勢)も、プロ1年目はほとんど試合に出られなかったけど、U−20ワールドカップが終わったタイミングでオファーが来て。彼は若い時から海外志向が強くて、そのための準備をしてきていたので、オランダでもあの難しい後ろのポジションでしっかりと積み上げているな、という印象は受けますね。
中村 パーソナリティも重要だよね。明るいでしょ、菅原くん。
佐藤 めちゃくちゃ明るいですね。やっぱり通訳といる時間より、いかにチームメイトといる時間を長くするかが大事ですよね。僕らが外国人選手と一緒にチームを作っていくなかで感じたものを、どれだけ向こうで体現できるか。
中村 そうだね。外国人選手が入ってきて、日本語をがんばって覚えようと努力している姿とか、箸を持ってご飯を食べようとしているのを見るとね。
佐藤 何とかしてあげたいと思いますよね。
中村 僕らが期待していることを、向こうでやれればいいよね。よくよく考えると、海外で活躍している選手はみんなコミュニケーション能力が高い。川島(ストラスブール)、本田(圭佑/ネフチ・バクー)、吉田(麻也/サンプドリア)、長友(佑都/マルセイユ)、岡崎(慎司/ウエスカ)......。みんなよくしゃべるから(笑)。もともとシャイだった選手が、あっちに行ってキャラが変わることはそこまでないかもね。
佐藤 たしかに。
中村 もともと自己主張が強い選手が、さらに強くなるという(笑)。
(つづく)
【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに入団。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグ最優秀選手賞を受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重66kg。
佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重65kg。