トロント・ラプターズの2020-21シーズンが終了し、チームはオフに突入する。最後の2試合では試合前後の会見に少しずつ…

トロント・ラプターズの2020-21シーズンが終了し、チームはオフに突入する。最後の2試合では試合前後の会見に少しずつプレーヤーたちがしばしの別れを告げに顔を出し、日本時間5月17日深夜(アメリカ時間同日朝)には、ニック・ナースHCが、その翌日には渡邊雄太とカイル・ラウリーも単独のズーム会見を行った。
本契約獲得の過程に「Deserving(ふさわしい)」とニック・ナースHC
渡邊は今シーズン50試合に出場。平均14.5分の出場時間で4.4得点、3.2リバウンド、0.8アシスト、0.5スティール、0.4ブロックというアベレージを記録した。また、シューティングに関してはフィールドゴール成功率43.9%、3P成功率は自身目標としていた40.0%に到達、フリースロー成功率も82.8%と良い数字だった。またディフェンス面では一歩目の速さ、鋭さについての定評とともに、対戦相手の主要プレーヤーのマッチアップを任されるほどの信頼を得た。
フリーエージェントからエグジビット10、ツーウェイ、そしてスタンダード契約へと1年間の間に一つずつステップを踏んで進化を遂げた渡邊は今や、正真正銘のNBAプレーヤーとしての立場を確立した。2年契約で2021-22シーズンは保証なしという立場ではあるものの、今シーズン積み重ねたことを継続しさえすれば、今後について悲観すべき要素はない。
その成長ぶりを一言で言い表すならどんな言葉か?――という質問を、シーズン最後の会見でナースHCに投げかけると、「Deserving(ふさわしい)」という答えが返ってきた。
「ふさわしい(Deserving)と言えるでしょう。(本契約に)まさにふさわしかったですからね。努力し続け、特筆すべき姿勢で取り組んでいました。少し驚かされました。ちょっと難しいかなとも思っていたんですよ。彼を呼び寄せて、何度も何度も何度も行ったキャンプの一つで頭角を示し、トレーニングキャンプに加わって、そこでも生き残って、その後も…。本当にふさわしいと思います」
“I would say “deserving”. He deserved that, right? He worked continually. He has really got a tremendous attitude. I think it was a bit of a…, a bit of a surprise and long shot, you know. I think we brought him in and had him in kind of one of our many many many camps you know and he made it out of that and made it to the training camp and he made it through that and you know, so he kept, you know he…. But he deserves it.”
「本当に良いヤツだし、ものすごい頑張り屋だし文字通りバスケとボールが大好きなんですね。向上し続けなければいけない部分で向上を続けました。まだいくつか課題はありますが、我々は後押しできると思うので伸び続けるでしょうし、より影響力のある存在になる、あるいはそうあり続けることができると思います。来年も今年のように三段飛びのような成長を見せられるなら、我々は大忙しですね(笑) 今年は大きなジャンプを3度やったのですから、同じことを来年出来たらこれはすごいことになりますよ!」
“He’s, as you know, a really good person tremendously hard worker. He literally loves the game. And he made a progress that he needs to continue to make a progress. I mean he needs to just do a couple things I think that we can help him with that he can be more of a factor or continue to be more of a factor and keep on growing. If he can make three more steps forwards next year, we’ll be in business. (He) made three big jumps this year, if he can do that again next year we’ll be in business, yeah,”
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渡邊の飛躍はナースHCにとって、うれしい驚きだったようだ(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)
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2021-22シーズンはトロントの町でさらなる飛躍に期待
翌日行われた渡邊自身の会見でも、同じ質問を本人にさせてもらった。「本当に中身の濃いシーズンだったので、一言にするのは難しいですが」と切り出した渡邊は、「とにかく楽しいシーズンでした」と答えた。「思ったよりチームは勝てなかったですし、(本来のホームとは)違う町にいたり、コロナのプロトコルで選手が途中でプレーできなくなったりとか」。そうしたしんどい時期に、「チームは一つにまとまって同じゴールを目指していましたし、僕自身もいろんな波がある大変なシーズンでした。今思い返しても本当に中身の濃い、楽しい1シーズンだったと思います」

2020-21シーズンは渡邊にとって飛躍のときとなった(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)
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ラプターズは今シーズンを通じて、本来のトロントではなくフロリダ州タンパに臨時のホームを構えて72試合のレギュラーシーズンをプレーした。その影響は大きく、ラプターズは開幕からの10試合で2勝8敗と低調なスタートを切ることとなった。
渡邊の活躍が特に脚光を浴びるようになった1月から2月にかけて徐々に復調し、2月19日にミネソタ・ティンバーウルブズをアウェイで破った時点で勝率が今シーズン始めて15勝15敗の五分に到達。2日後の21日にフィラデルフィア・セブンティシクサーズを倒した時点で16勝15敗と勝ち星が先行した。
ところが2月26日の対ヒューストン・ロケッツ戦前にチーム内で新型コロナウイルス感染が発覚し、ナースHCを含むコーチ陣6人がベンチに入れず、スターターのパスカル・シアカムも欠場という事態を迎える。パンデミックの直撃を受けたラプターズは、このロケッツとの試合こそ勝利したものの、続く15試合で9連敗を含む1勝14敗という泥沼にはまり、以降本来の力を見せることなくシーズンを終えることとなった。
そのような厳しい経過の中、渡邊は故障欠場した時期もあったが、特に4月以降急激にパフォーマンスを高め安定した出場時間を得るようになった。定評のあったディフェンス面での奮闘に加え4月には4度2ケタ得点を記録し、特に16日の対オーランド・マジック戦ではキャリアハイとなる21得点で勝利に貢献。急成長を見せた渡邊にラプターズは本契約をオファーし、18日にサイン、翌19日に発表するに至った。
ラプターズにとって厳しいシーズンだったに違いないが、渡邊の活躍はその中で明るい希望をもたらす要素の一つだったのは間違いないだろう。ナースHCの前述のコメントからも、ポテンシャルの高さに対する評価と今後への期待が感じられる。
ラプターズはオフに入ってからもしばらくはタンパを拠点とするだろうことを、ナースHCは明かしていた。しかし来シーズンに関しては、トロントに戻って本来の状態でシーズンを過ごすことについて楽観的な見通しを持っているようだ。トロントには日本人の大きなコミュニティーがある。現地記者は、もしも渡邊が実際にトロントでプレーすることになれば、ファンベースに非常に大きなインパクトがあるだろうと話してくれた。「普通に良いシューターのレベルから恐いシューターになってほしい」というナースHCの要求は高いが、若手の育成支援体制についてもラプターズは定評がある。2021-22シーズンには、トロントの町で爆発的な人気を獲得する渡邊の勇姿を見られるかもしれない。
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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)