2月11日と12日の2日間、流経大グラウンドに韓国から訪れたミョンソク高と、日本の東京高、昌平高(埼玉)が集まった。 3校で親善練習試合。東京は都新人大会で準々決勝敗退、昌平も県新人大会は6位に甘んじたが、花園を目指す秋へ向けて強化に取り…

 2月11日と12日の2日間、流経大グラウンドに韓国から訪れたミョンソク高と、日本の東京高、昌平高(埼玉)が集まった。
 3校で親善練習試合。東京は都新人大会で準々決勝敗退、昌平も県新人大会は6位に甘んじたが、花園を目指す秋へ向けて強化に取り組んでいる。
 ミョンソク高は2016年10月の「全国体育大会(国体に該当)」で準優勝。韓国のラグビーシーズンはこの大会で終わるため、冬でもラグビーができる日本へ試合経験を積むためにやって来た。2月2日から17日まで流経大に合宿している。

 流経大は池英基(チ・ヨンギ)学生生活部門長、コーチに李ジョンミン氏と韓国出身者が在籍。毎年、韓国で夏合宿をおこなっており、交流を深めている。毎年、韓国の大学チームの合宿、コーチ研修に門戸を開いてきた。
 ミョンソク高もこのルートで来日した。

 初日の11日。3校は朝11時開始でAチームが30分ずつ前半戦を戦った。その後、日本の2校がBチーム戦。さらに午後からAチームが後半戦を実施した。
 第1試合はミョンソク×東京。都大会で敗れたとはいえ2016年度の花園出場校だ。東京有利と思われた。しかし、ミョンソクが大きな体格、突破力を活かし見事に予想を覆した。
 12分に自陣から右オープンへ展開すると一気にWTBがゴールラインまで駆け抜け先制した。東京も20分にミョンソクゴール前へ運ぶとミニパントを蹴り、拾ったBKがトライを奪う。ミョンソクはFWが体格を活かしボールキャリアーになるとゲインを切り続けた。24分には東京陣でスクラムを得、左ライン際に運びトライ。26分にもトライすると圧巻は28分に起きた。東京が攻めてキックパスをインゴールでノックオンした後、自陣ゴール前5メートルのスクラム。NO8が持ち出すと東京ゴールラインまでつなぎ切り、4トライ目を奪った。トライ数4-1でミョンソクがリードした。
 午後の後半戦は東京が息を吹き返し3トライを奪うも、ミョンソクも2トライ。トライ数計6-4でミョンソクが勝利した。

 第2試合はミョンソク×昌平。ミョンソクのランナーはここでも生き生きとスペースを駆け抜けた。9分、15分と連続トライ。昌平も24分にトライを返すも、28分にミョンソクは昌平のキックを受けると左ラインから順目に回し右中間へトライを決めた。トライ数3-1でミョンソクがリードする。
 後半は、ミョンソクのアタックにスペースを与えない指示を受けた昌平が反撃する。3連続トライ、ゼロ封。4-3で逆転し終えた。

 日本勢同士の試合は、前半は東京がブレイクダウンで圧倒し、トライ数3-0。後半は昌平がミョンソク戦同様にディフェンスの粘りで東京のトライを1本に抑えたが、4-0で東京勝利。

 ミョンソクのイム・ビョングァン監督は「この時期、寒い韓国ではラグビーができない。3月(19日)に始まる春季リーグ戦に向けて試合経験を積みたくて来日した。流経大のグラウンド、施設、練習試合の数にすべて満足している。日本のチームは個々の力で突破するのではなくチーム全体でボールを運んでいる。そのスタイルを学びたい。選手には1人で行くのではなくつなぐ意識を話している。きょうの試合は、反則を得てもタッチへ蹴らずにタップしてボールを運ぶように指示し、トライを奪うことができた」と満足気だった。
 今季は「5回ある全国レベルの大会で3回優勝する」(イム監督)という目標を立てている。ライバルは国体で完敗した富川北高に、ソウル大附属高。いずれも中高ラグビー部が一貫で指導する。個人スキルに優れているチームだ。ミョンソクの学校がある大田市(テジョン)に唯一、ラグビー部があるのは佳陽中。毎年4人が進学してくるがほとんどの選手は高校でラグビーを始める。そのため昨年の国体も得点源は、体力で奪えるゴール前ラインアウトのモールに徹していた。
 去年までのスタイルに加え、つなぐラグビーへ。「日本に来て生徒にはパスなど基本スキルの大切さを学んでほしい」というのは金泳男(キム・ヨンナム)コーチ。長身の元韓国代表LOはリコーブラックラムズ、クボタスピアーズでプレーした。自身が日本にやって来て感じたことを生徒に伝える。練習をみると基本のランパスを繰り返していた。よいパスには「チョアヨ!(いいぞ)」と声をかけていた。

 日本勢2校も関東大会に出場できないこの時期に試合ができることを感謝している。
 東京の森秀胤監督はミョンソク戦の前半を「相手は体が大きいと勝手に意識してしまい委縮したようだ。ミスが起きて自信を失う負のスパイラルは起きている。変えていかないといけないのに。心を鍛えていきたい。夏合宿ころに積極性が出てくるようになると『花園』が見えてくる」と現時点の課題を見つけチームに変化を促していく。

 昌平はリコーでFL/NO8としてプレーした後藤慶悟コーチが2014年に加わった。「うちは体が小さい。とにかく前に行くディフェンスとフィットネスで上回り勝ちにいく」と、鍛えぬいて、深谷高が一歩抜きんでる埼玉勢に戦いを挑む。

 流経大では、今後も日韓交流を続ける。昨年、大学本体は韓国の代表レベル選手が兵役を過ごす軍体育部隊(尚武)とラグビーに限らない協力契約を結んだ。相互訪問し、レベルアップに務める。ラグビーについて池氏は「来年は韓国から3校ほど来てもらい日本の高校と合わせて10校くらいで合同練習や試合をできれば」と計画を明かした。(文・撮影/見明亨徳)