■5月15日/J1第14節 鹿島アントラーズー横浜Fマリノス(カシマ) Jリーグの誕生日である5月15日に、鹿島アント…
■5月15日/J1第14節 鹿島アントラーズー横浜Fマリノス(カシマ)
Jリーグの誕生日である5月15日に、鹿島アントラーズが横浜Fマリノスをホームに迎えた“オリジナル10対決”は派手な打ち合いとなった。白のユニフォームに身を包んだトリコロール軍団が先制したが、その後鹿島が5得点を奪って大勝してみせたのだ。相馬直樹監督が就任してこれで公式戦無敗試合数は「9」。リーグ戦連勝は「4」に伸ばした。
前半と後半で違った戦い方を見せた鹿島は、今季最多得点となる5ゴールを奪ってみせた。さらにFW土居聖真のハットトリックという豪華なおまけまで付き、チームとしてはこれで4試合連続で複数得点を奪ったことになる。好調な“相馬アントラーズ”はますます加速しそうだ。
ザーゴ体制での今季のリーグ戦成績は2勝2分4敗と、8戦してわずか2勝。昨季の5位という成績を考えれば今季は優勝争いが求められていたが、それからは遠い戦績だった。そんな低迷から一転、4月17日に行われた徳島との初陣で完封勝利を収めると、公式戦を合わせて今も続く無敗を継続。リーグ戦の戦績は5勝1分0敗とまさにV字回復。
さらに、ゴール数も増えて直近4試合で複数得点を奪っている。ザーゴ時代の8戦での1試合平均得点数が「1.25」なのに対し、相馬体制での6戦でのその数字は「2.5」。これは、リーグを独走する川崎フロンターレも視野に入る数字だ。
■現時点で見せる戦術的な柔軟性
では、ザーゴ鹿島と相馬アントラーズではいったい何が違うのか。まず挙げられるのが、切り替えの早さだ。ザーゴ前監督も重要視していた部分ではあるが、今季はここでパワーを見せられなかった。たとえばこの横浜Fマリノス戦は、相手が強く来るチームということもあってか、そこでの切り替えはとても速かった。
また、先述の柔軟性も挙げられる。この試合では、前半は横浜Fマリノスが求める“激しい展開”に引っ張られて相手にペースを与えてしまった部分があった。マリノスとしては、オープンな展開に相手を引き込むことで、そのスピード感の中で優位性を保ちたいという狙いがある。しかし、それを逆手に取って、後半は裏を突いていった。相手のプレスが激しく来ることから、引き寄せてスペースを作ることができていた。
さらに言えば、前節の名古屋戦では今節とは異なるスターティングメンバーで戦った。名古屋戦と横浜Fマリノス戦の両方で先発したのは5人。過密日程の中を考慮して選んだことはもちろんだが、半数以上が変わる中で、戦い方も変えた。鹿島では右サイドバックで起用されることの多かった小泉慶をトップ下で起用。もともとはボランチの選手だった小泉を1トップの土居聖真の下で使うことで、その運動量で前線に繰り返し飛び出すのと同時に、前線での守備で相手に“圧”を感じさせたのだ。
■相馬監督「鹿島はチャレンジャー」
相馬監督が就任してから1か月が経つが、それ以来、過密日程が続いており、おそらく戦術面では完全には落とし込めてない部分もあるだろう。それにもかかわらず、今季2勝しかしていなかったチームを6戦で5勝に導いた。名古屋戦では、2位のチームにシュートを1本も撃たせない完全ゲームまで達成してみせた。
それでも、まだまだ前進する余地がある。MFピトゥカやMFカイキといった新加入外国人選手がさらにチームに溶け込むことで違ったクオリティを出せることはもちろん、戦術の浸透が進むことでさらに強さと対応力を発揮してくることだろう。
また、この日PKを奪った松村優太や得点を決めた荒木遼太郎といった若手は、戦術が整理された今のチームのほうが、生き生きとプレーしている。さらなる成長が、チームの戦力を底上げしてくれるはずだ。
「自分たちがやれることをすべてやろう、ぶつけよう。チャレンジャーとして、今できることをすべてぶつけよう」
相馬監督は、こう言ってトリコロールとの試合のピッチに選手を送り出したという。チャレンジャーとして高みを目指す鹿島が、“常勝軍団”の名を再び取り戻してみせる。