第1回「スポーツ×食 オンラインセミナー」レポートvol.3 サッカー元日本代表GKの川口能活さんが5月14日に行われる…
第1回「スポーツ×食 オンラインセミナー」レポートvol.3
サッカー元日本代表GKの川口能活さんが5月14日に行われる「スポーツ×食 オンラインセミナー~世界と戦うアスリートだけが知っている 明日から『食』でもっと強くなる方法~」に第2回ゲストとして出演する。競泳で五輪2大会出場の伊藤華英さんをMC、公認スポーツ栄養士の橋本玲子氏を講師に招き、スポーツに励む子供を育てる保護者から指導者、スポーツ愛好家などを対象に1時間に食をテーマにトークセッションを繰り広げる。
イベントに先立ち、3月に行われた第1回をプレーバック。ラグビー日本代表主将を長く務め、2015年ワールドカップ(W杯)イングランド大会に出場した廣瀬俊朗さんをゲストに招いて行われ、応募者300人が集まった。今回は橋本栄養士が行った「食とSDGs」のパートを取り上げる。スポーツ界でも注目され、動き始めているSDGsの取り組み。実際に私たちの日々の生活で何ができるのか、廣瀬さん、伊藤さんとともに考える時間となった。
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廣瀬さんと伊藤さんが元アスリートとして食にまつわる経験と考えを語ってきたトークセッション。続いて行われたのが、橋本栄養士による「食とSDGs」にまつわる講義だった。持続可能な開発のために国連が定める国際目標で、17の世界的目標、169の達成基準 、232の指標がある。スポーツ界でもSDGsを達成しようとする試みが、各方面で始まっているが、食の視点で世界にどんな課題があるか。
まずは5つのクイズが行われた。
【第1問】現在、約77億人の世界の人口は2050年には何人に達するでしょう?
(1)97億人
(2)105億人
(3)110億人
【第2問】日本の食品ロスは年間612万トンと言われています。この内、家庭から出ている割合は何%でしょう?
(1)18%
(2)30%
(3)46%
【第3問】日本の食料自給率は何%でしょう?(食料自給率=国内で消費される食料のうち、どの程度が国内産でまかなわれているかを表す指標)
(1)15%
(2)38%
(3)65%
【第4問】国民1人あたりが食べるお米の量は55年で何%減少しているでしょう?
(1)10%
(2)25%
(3)45%
【第5問】世界では肉の消費量が50年間で何倍に増加したでしょうか?
(1)約1.5倍
(2)約2倍
(3)約5倍
オンライン上で参加者とともにゲストの廣瀬さんも一緒に回答。「難しい、特にお米の量(問題4)はどうだろう……」と頭を悩ませながら、回答していった。その後、答えを発表し、橋本栄養士が各問題の解説を行った。
なぜ、牛肉を消費すると環境の負荷につながる?
【第1問=答え「(1)97億人】
人口が増えると、食はどんな影響を受けるのか。世界では約6億9000万人、11人に1人(人口の8.9%)が慢性的な栄養不足に陥り、日本では約2000万人が貧困ライン以下(全人口の中央値の半分に満たない所得)で生活しているというデータを紹介した。
「生きるために最低限必要、食べることさえも十分ではない人たちがいます。生活が困窮し、食費を削って必要な栄養素が摂れない。人口が増えることで、栄養が摂れない人も必然的に増えています。世界の人が栄養のあるものを平等に食べていけるように考える。これがSDGsの考えです。特にアジア、アフリカでは十分な栄養を摂れない人がいます。それは解決しないといけない課題です」
【第2問=答え「(3)46%」】
日本の食品ロスは54%(328万トン)がスーパー、レストランなどの事業系、家庭が46%(284万トン)というデータを紹介。これを日本人に分かやすく換算すると、国民1人あたり1日132g、おにぎり1個分に相当するという。
「食品ロスは『まだ食べられるのに捨てられること』を言います。食材を買いすぎて冷蔵庫の奥で腐ってはいないけど、心配だから捨てる。スポーツでは合宿のビュッフェでお皿いっぱいに盛ったけど、お腹いっぱいで半分を捨てる。日本の食品ロスは46%が家庭というのは驚きですが、日本の人口1億2000万人が1日1個おにぎりを捨てていると換算すると、私たちがどれだけ食べられるものを無駄にしているか分かります。これがどう環境に影響するかというと、生ごみにして燃やしたり、これを運ぶために燃料を使ったり。世界で排出される温室効果ガスは最新の数字で10%がフードロスによるもの。温室効果ガスが増えると地球温暖化につながるため、世界中で抑えようとしています。食べ物を捨てない、無駄にしないことが大切です」
【第3問=答え「(2)38%】
日本の食料自給率は38%にとどまり、62%は輸入に頼っているというデータを紹介。その上で「食料の重さ」×「運ぶ距離」で算出されるフードマイレージという指標とともに解説した。
「日本人は普段コンビニが24時間営業し、食べ物がなくなるイメージは持っていません。ただ、去年のコロナ禍でスーパーから特定の食料がなくなり、初めてそういう危険を感じたかもしれません。有事の際、自分の国で作れないと食べ物がなくなってしまいます。海外からの輸入は移動にお金もかかります。二酸化炭素の排出量につながり、日本は他国よりフードマイレージの数値が高い。それだけ環境に負荷をかけています。自分たちの食は自分たちで作れるようになるのがベスト。カナダ、米国、フランスは(自給率は)100%以上。まずは農家、生産者を応援すること大切です」
【第4問=答え「(3)45%」】
日本は米の消費量がこの55年で45%減少(1人1年あたり1962年118.3kg、1990年70.0kg、2018年53.5kg)。原因は人口減少ともう一つあるという。
「『お米は太る』というイメージがあり、控えている人が多い印象です。ですが、コンビニで売っているおにぎり(鮭)1個は炭水化物35.9g、脂質1.8g、たんぱく質4.7g、たまごサンド1パックは同じく22.0g、26.4g、11.7g、パスタのトマトソース1/2人前で42.7g、10.1g、7.6g。おにぎりはすごく脂質が少ないんです。お米はアスリートにとって非常に優秀な食品なので、もっと食べて欲しいと思っています」
【第5問=答え「(3)約5倍」】
世界の食肉消費量はこの50年間でおよそ2倍、日本はそれを上回り、およそ5倍増加している。なぜ、牛肉を消費すると環境の負荷につながるのか。
「牛肉のような家畜を生産するには広い土地、エサに加え、水も必要。お肉を食べるためには多くの資源を使わないといけないということです。また、牛のげっぷに地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一つ、メタンが多く含まれ、牛を多く飼育している米国、ブラジルなどでは問題になっています。肉が悪いということではなく、環境のためにできること。その一つとして動物性の肉を減らしましょうと世界的に今、取り組まれています」
スポーツ現場にもある食品ロス「ホテルのビュッフェに無駄があるかも…」
続いてクイズで挙がった食品ロス、米の消費、肉の消費の3つについて、今これから私たちができることを考え、トークセッションが行われた。
橋本「今、お米を食べない日本人が増えていますが、ラグビー選手はお米を食べていましたか?」
廣瀬「すごく食べています。1回の食事でお茶碗2、3杯は食べていましたね」
橋本「ラグビーは体重100キロのフォワードの選手がハードな練習をすると、1日にごはんで換算すると、最低でも丼6杯が必要と言われています。もちろん、実際はお米以外も食べますが、それだけ食べないとハードな練習についていけないということです。炭水化物が不足すると、エネルギー不足で疲れやすくなったり、脳に栄養が行かずに集中力が低下したりします。あと、成長期の子供は筋肉をつけたくて、たんぱく質を摂りますが、意外とお米を食べることが頭から抜けている子が多い気がします。体を大きくしたい場合はプロテインの前にお米が大事だと私は思います。
スポーツの現場を見ていると、もっともっとお米を食べてほしいです。平成25年には和食が世界無形文化遺産に登録されました。日本人の伝統的な食文化、お米を食べたり、発酵食品を食べたりに加えて『いただきます』『ごちそうさま』というマナーも含め、次世代に伝えていきましょうということが登録された意味です。もちろん、ほかの国の料理も素晴らしいですが、日本人は日本食の素晴らしさを知り、普段の食事で日本食を食べるきっかけになってほしいと思っています。ちなみに廣瀬さんは環境を大切にするという意味もあって大豆ミートを食べているそうですね」
廣瀬「僕としては植物性たんぱく質を摂ると体に優しいし、ヘルシーでもあります。動物性たんぱく質は先ほどのSDGsの観点からCO2に影響するという問題もあります。環境のことを考えても、毎日ではなくとも、週1回は植物性たんぱく質を摂る習慣が広まっていくといいなと思います」
橋本「素晴らしい。アスリートの発するメッセージはすごく影響力がありますから。ただ、一般的にアスリートはお肉が好きです。今後、大豆ミートを取り入れましょうというような動きをアスリートは受け入れると思いますか?」
廣瀬「毎日は難しいかもしれないけど、週1回なら問題ないと思います。実際、僕は胃が持たれない感覚があるので、内臓に優しいと感じています。特に日本人は歴史的なことを踏まえると納豆、味噌汁なども好きなので、体に合うんじゃないかと思います」
橋本「肉をたくさん食べる西洋の国では、肉を食べる量をもう少し減らそうとスポーツ界でも積極的になっています。日本はそこまで肉を食べていないので、環境を考える1週に1回だけ植物性のものを食べると良いと思います。毎日、何が何でも植物性を摂ろうというより、できることをやってみることが大切です。そして、もう一つは食品ロス。家庭から排出される量が多いデータがありましたが、何か家庭でできることはありますか?」
伊藤「パンなど、冷蔵庫より冷凍庫に入れられるものは入れて長持ちするようにしています。最後まで食べられるように工夫はしていますね」
廣瀬「僕は残さずにちゃんと食べ切ること。あとは買い物に行く前に冷蔵庫を見ること。帰ってきて『あったじゃん!』ということもあるので(笑)。ラグビーではホテルのビュッフェでは無駄があるかもしれないですね。足りなくなったということが許されないと思うので、多めに料理を作っていただいていたと思います。今になってみると申し訳ないですね」
橋本「私は栄養士としてホテルにメニューをお願いする側ですが、今、ホテルに協力してもらっているのは実際にどれくらい残っているかをリストにして提出してもらうこと。明らかに出しすぎというものは調整するように相談しています。できることを一人一人が実行していくことが大事です」
廣瀬さん、伊藤さんがイベント回顧「なぜ農家を応援すべきか分かった」
最後に参加者からの質問コーナーが行われ、90分に渡ったイベントは終了。廣瀬さんと伊藤さんが取材に応じ、学びの詰まった1日を振り返った。
「SDGsのこういう視点がこういうイベントに出てくることはなかったので新しいし、面白かったです」と振り返ったのは廣瀬さん。伊藤さんも「牛のげっぷからメタンガスが出ると知らなかった。牛は高いお肉もあり、やっぱり美味しいのですが、環境という視点が入ってくると、食べたいものだけを食べるのではなく、自分の食生活が変わりそう。そういう視点が広まっていくといいなと思いました」と学びを得た様子だった。
「特に農業、農家をなぜ応援しなければいけないか分かりました。フードマイレージが高まっていると聞いて日本も変わらなければいけないところがある。自給自足じゃないですが、自分たちの国でつられているものを応援していく。ちょっと値段は高いかもしれないですが、できる範囲で意識することが大切」と伊藤さん。「お米は僕らラグビー選手も減らしているところがあったので見直していきたい」と廣瀬さんも頷いた。
最近はSDGsという言葉が普及しているが、なぜSDGsに取り組むべきかという動機はまだ浸透していない。廣瀬さんは「一つは今回のように僕らみたいなアスリートをうまく使ってブリッジになればいい。SDGsは意外と身近なところからできることがあると知ってもらえるきっかけになる」と提案した。
伊藤さんも「日本は平和で物が溢れ、食品ロスの問題もありますが、視野を広く持ってみると、地球という環境の上で生かされているという謙虚な気持ちになる気がします。今の環境を当たり前と思わず、何百年も地球を残すために必要なことが何かという意識が大切だと思います」と話した。
このイベントは今後も継続し、5月に第2回が行われる。食と健康という課題について、廣瀬さんは「僕自身、美味しいもの食べるために生きていると思うことがあります。美味しいものをいい仲間と食べたい、そういう気持ちと行動が健康につながっていくのかなと思います」と意識を語った。
「運動など、健康にまつわる因子はあるけど、食事のウエートが一番大きいと私は思います」とは伊藤さん。「お腹が空くので、食事は誰もが意識する。運動を毎日するのは難しいけど、食事は毎日するので、そこに気を付けることが健康につながっていくのかなと思っています」と明かした。
(終わり)
【川口能活さん、第2回「スポーツ×食 オンラインセミナー」登場】
5月14日午後5時から行われる第2回は元サッカー日本代表GK川口能活さんがゲストに登場。第1回に続き、伊藤華英さんをMCに迎え、橋本玲子氏と対談。ストイックで知られた川口さんが自身の食の習慣やこだわりを明かす。未来のトップ選手を目指し、スポーツに励む子供を育てる保護者から、指導者、スポーツ愛好家などを対象に「“炎の守護神”の現役生活25年を支えた食のこだわり」をテーマに1時間行われる。
参加費無料、締切は今日12日まで。応募は「THE ANSWER」公式サイトから。(THE ANSWER編集部)