東京五輪代表を懸けた日本選手権1万m 東京五輪代表選考会を兼ねた陸上の日本選手権女子1万メートルが3日、静岡・エコパスタジアムで行われ、20歳・廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が31分11秒75で優勝し、初の五輪代表に内定した。27歳の安藤友…

東京五輪代表を懸けた日本選手権1万m

 東京五輪代表選考会を兼ねた陸上の日本選手権女子1万メートルが3日、静岡・エコパスタジアムで行われ、20歳・廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が31分11秒75で優勝し、初の五輪代表に内定した。27歳の安藤友香(ワコール)も31分18秒18の2位で内定。奮闘の裏には同じワコール所属のレジェンド・福士加代子の存在があった。

 安藤は必死で食らいついた。4人の先頭集団を引っ張る廣中にピタリ。15分28秒で5000メートルを通過すると、5400メートルで先頭に出た。7500メートルから並走。8600メートル直前でスパートをかけた廣中に追い抜かれたが、なんとか参加標準記録の31分25秒00に滑り込んだ。ゴール直後に2人で固い握手。レース後の会見で心境を明かした。

「最後まで諦めずに自分の走りに集中できてよかった。廣中さんについている時は、本当にいいリズムで走って胸を借りていた。廣中さんがいなければこのタイム、順位はなかったので感謝を伝えていました。自分自身を出し切ることと、後悔なく終えるレースをしたいと思っていた」

 言葉通りに力を出しきって掴んだ五輪切符。後押しとなったのは福士の姿だった。安藤は17年3月名古屋ウィメンズで当時日本歴代4位の2時間21分36秒で日本勢トップに。だが、同年の世界陸上は17位に終わり、19年2月にワコールへと移籍した。

後輩・安藤の内定に福士「うちのチームは凄い」

 ともに汗を流したのが4大会連続五輪に出場した福士。今年39歳となった大ベテランだ。後輩たちに与える影響は絶大なものがある。安藤は言う。

「福士さんと同じチームの一員として練習させていただいて、福士さんの取り組む姿勢にいつも学ぶことがたくさんあった。福士さんの状況でももがいている姿を間近に見てきた」

 先輩はマラソンで東京五輪を目指していたが、19年9月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)7位、20年の名古屋ウィメンズは途中棄権で出場できず。一時期に比べ、体が言うことを聞かない中でも走ることをやめない。「福士さんも頑張っているから、私も自分の状況でしっかり頑張ろうと思って凄く勇気をもらっていました」。懸命な39歳の姿を近くで見れば、背中を押されるのは当然だった。

「これまで自分が招いたことを人のせい、何かのせいにすることもあったんですけど、そういうことではなく全部自分が招いた結果。自分の意志、責任を持ってやることを学んだ。そこから毎日をしっかり充実させられた」

 この日は周回遅れの福士を追い抜いた時にペースを上げた。福士からは「うちのチームは凄いと思います」と称えられ、27歳で迎える初五輪。学んだ魂を胸に、大切な夢舞台を駆け抜ける。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)