”世界最強”ブライアン兄弟に学ぶI(アイ)フォーメーションダブルスのエキスパー…

”世界最強”ブライアン兄弟に学ぶ
I(アイ)フォーメーション

ダブルスのエキスパートである佐藤哲哉氏が、世界の第一線で活躍している男子ダブルスの強豪ペアを取り上げ、その得意な戦術やテクニックを詳しく解説。最初に紹介するペアは、長らく世界の強豪ペアとして活躍したアメリカのブライアン兄弟。彼らのプレーの特徴や参考にしたいショット、フォーメーションを紹介する。きっとダブルスをプレーする一般プレーヤーの皆さんにとってヒントになるはずだ。

※解説/佐藤哲哉:1991年、92年、93年、95年の全日本テニス選手権大会男子ダブルスチャンピオン。91年と92年にはデビスカップで松岡修造とダブルスを組んでいる。現在はダブルスのスペシャリストとしてジュニアから一般まで幅広い層を指導
※『テニスクラシック・ブレーク』2019年9月号に掲載したものを再編集した記事になります

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テーマ:“世界最強”と謳われたブライアン兄弟を徹底解剖!《前編》

【1】クイックサーブと
無理せず深く返すボレーが特徴

ブライアン兄弟は、119もの大会でダブルスの優勝を飾ったペアで、世界ナンバーワンに何度も輝いています。四大大会での優勝は数知れず、「世界最強のダブルスペア」とも言われました。

兄弟・姉妹でダブルスに出場するペアはいますが、彼らのように一卵性双生児のペアは非常に珍しいと思います。

彼らのダブルスの特徴は、スピーディーな展開が多いことです。どちらもクイックサーブを打ってくるうえに、息の合った連係プレーと無理せずに深く返すボレーで相手ペアをグイグイ押していきます。ポイントを取る時間が短く、見ていて歯切れがいい。

また、2人はコミュニケーションをよくとることも特徴です。プレーに入る前やプレー間の打ち合わせは当然のことですが、彼らはプレー中でも1人がもう1人のプレーを見て確認したりします。彼らほどプレー中にパートナーの動きを頻繁に見るペアはいないのではないでしょうか。そんな彼らの姿勢は、大いに見習うべきでしょう。

一般の方に参考になるショットは、前述したクイックサーブの他に、壁のように返し続けるボレーやコンパクトなリターンが挙げられます。これらのショットは基本に忠実なショットであり、その完成度の高さを見逃してはいけません(ショットは次回以降で解説)。

《ブライアン兄弟のプロフィールおよび
ダブルスの特徴と参考にしたいショット》

●名前
マイケル・カール・“マイク”・ブライアン(兄)
ロバート・チャールズ・“ボブ”・ブライアン(弟)

●生年月日
1978年4月29日(双生児)

●国籍
アメリカ

●利き手
マイク:右利き、ボブ:左利き

●プレーの特徴
・ボブがデュースサイドを守ることが多い
・スピーディーな展開になることが多い
・2人ともクイックサーブを使う
・ボレーの反応が素早い
・ボレーを無理に決めずに、深く返すことを優先
・プレー中でも振り向いて、パートナーの動きを見る

●参考になるショット
・クイックサーブ
・壁のように返し続けるボレー
・コンパクトなリターン



技術とは関係ないが、「ブライアン兄弟と言えばこれ!」と言えるのがビッグポイントを取ったあとジャンプしながらお互いの胸をぶつけ合う場面


【2】兄弟のI(アイ)フォーメーションの
成功率が高い3つの理由

次に、ブライアン兄弟のゲーム運びを見てみましょう。今回はサービスゲームのフォーメーションです。

世界のダブルスを見ると、必ずと言っていいほど出てくるのが、I(アイ)フォーメーションです。ブライアン兄弟もよく使っていました。

このフォーメーションの目的は、リターンの調子がいいレシーバーにリターンの方向で迷いを生じさせることにあります。そのため、サーバーはセンター寄りに構え、サーバー側の前衛はセンターライン付近に低く構えます。前衛は左右どちらにも飛び出すことが可能なため、レシーバーはどこに打とうか迷う、というわけです。

彼らがこのフォーメーションでの成功率が高かった理由は、ファーストサーブの入る確率が高く、コースを狙えるコントロール力に優れていたから。さらに、前衛の思い切りのよさも考えられます。

一般プレーヤーの皆さんも、この3つの理由を見習って、Iフォーメーションに挑戦してみてください。

I(アイ)フォーメーション
サーバーと前衛はほぼ一直線に構える

Iフォーメーションではサーバーと前衛がほぼ一直線に構える。サーバーはセンター寄りに構え、前衛はセンターライン付近に構える。一方、レシーバー側は2人ともベースラインに構える2バックになることが多い


Iフォーメーションから前衛がポイントを決める

(写真上から1コマ目)
サーバーはセンター寄りに構え、前衛はセンターライン付近に低く構える

(2コマ目)
サーバーがサーブを打った直後。まだ2人は動かないので、レシーバーはコースの選択を決断できない

(3コマ目)
レシーバーが打ったリターンの方向を見て、サーバーは即座に右サイドに移動し、前衛は左サイドに動き出す

(4コマ目)
前衛がリターンをポーチしてポイントを決めた


<後編に続く>