現日本代表監督の森保一が初めて監督を務めたのは2012年のこと。 現役時代を過ごしたサンフレッチェ広島の指揮を執り、い…

 現日本代表監督の森保一が初めて監督を務めたのは2012年のこと。

 現役時代を過ごしたサンフレッチェ広島の指揮を執り、いきなりクラブに初優勝をもたらす快挙を成し遂げた。さらに2013年に連覇を成し遂げると、2015年には3度目の優勝を達成。その実績を認められ、ついには代表監督にまで上り詰めている。



リカルド・ロドリゲス新監督のレッズ改革は成功するか

 同等の結果を残しているのが、川崎フロンターレを率いる鬼木達だ。2017年、監督就任1年目にしてクラブに初のリーグタイトルをもたらし、翌年に連覇を達成。昨季は3度目の優勝を成し遂げた。さらに今季も開幕から圧倒的な強さを見せつけ、4度目のリーグ優勝に向けて驀進中だ。

 ふたりはともに新人監督として結果を出したが、当然チームを率いて1年目の新監督となる。監督によってチームは様変わりするが、このふたりは前年まで結果を出せなかったチームをポジティブな方向へと導いていった。

 過去の優勝チームを見ていくと、意外にもチームを率いて1年目の新監督が多いことがわかる。

 1993年の初代優勝チームであるヴェルディ川崎を率いたのは松木安太郎。こちらも森保、鬼木両監督と同じ「新人監督」だった。1995年に横浜マリノスに優勝をもたらした早野宏史は途中就任ながらV川崎の3連覇を阻み、現役時代を過ごしたクラブにタイトルをもたらしている。

 ほかにも、1996年のジョアン・カルロス(鹿島アントラーズ)、1997年の桑原隆(ジュビロ磐田/シーズン途中から監督代行として指揮)、1998年のゼ・マリオ(鹿島/シーズン途中に就任)、2000年のトニーニョ・セレーゾ(鹿島)、そして2007年のオズワルド・オリヴェイラ(鹿島)が就任1年目にして優勝を成し遂げている。

 確固たる強化方針を備える鹿島は、監督が代わっても結果を出せるチームであることがあらためて浮かび上がる一方で、森保、鬼木も含めた鹿島以外の5人は、前監督のもとでコーチを務めていた立場。その意味で、スタイルの方向性が劇的に変わったわけではない。

 そう考えると、結果を出せるチームには「継続性」という核が備わっていることがわかる。鹿島を除き、外部から招聘した新監督で1年目にして優勝を成し遂げたのは、2003年に横浜F・マリノスを率いた岡田武史、ただひとりである。

 近年の新監督の1年目の成績を見ても、森保、鬼木両監督を除き、結果を出している指揮官は限られる。代表的なのはミハイロ・ペトロヴィッチだろう。2012年に広島から浦和レッズに移ると、独自の攻撃スタイルを浸透させて3位と躍進。北海道コンサドーレ札幌の監督に就任した2018年にも、クラブ史上最高となる4位という成績を残している。

 そのほかでは、2017年のユン・ジョンファン(セレッソ大阪/3位)、2018年の城福浩(広島/2位)、2019年のミゲル・アンヘル・ロティーナ(C大阪/5位)あたりが成功例と言える。

 一方で、失敗例は枚挙にいとまがない。2012年にガンバ大阪の監督に就任したジョゼ・カルロス・セホーンは早期解任となり、この年チームは降格の憂き目にあった。2014年のC大阪はランコ・ポポヴィッチを招聘するも、結果を出せずに6月に解任。そこから立て直せずに17位で降格した。

 2016年には5人の新監督が就任したが、ミルトン・メンデス(柏レイソル)、城福浩(FC東京)、吉田達磨(アルビレックス新潟)、小倉隆史(名古屋グランパス)の4人がシーズン途中で解任されている。ほかにも、2017年の三浦文丈(新潟)、2018年のレヴィー・クルピ(G大阪)、2019年のルイス・カレーラス(サガン鳥栖)、2020年のピーター・クラモフスキー(清水エスパルス)と、新監督が毎年のようにシーズン途中で解任されている。

 今季も、J1では5人の新監督が就任している。手倉森誠(ベガルタ仙台)とレヴィー・クルピ(C大阪)はかつて率いたチームへの復帰となる一方、清水は昨季までC大阪を率いたロティーナを招聘し、浦和は徳島ヴォルティスからリカルド・ロドリゲスを迎えた。そのリカルド・ロドリゲスが抜けた徳島にはダニエル・ポヤトスが就任している。

 かつての監督を復帰させた仙台とC大阪には継続性が見込まれ、徳島も継続性を重視した選考を行なっている。その意味でガラリとチームが変わるのは、浦和と清水の2チームとなるだろう。

 両チームともに、ここまでは思うような結果を残せていない(浦和=8位、清水=16位)。だが、浦和にはポジティブな傾向を見ることができた。

 3−2で勝利した第11節の大分トリニータ戦では、守備面にやや不安を残した一方で、左SBの山中亮輔のクロスを右SBの西大伍がボレーで叩き込むという、新監督の求めるプレーが色濃く浮かび上がったゴールが生まれている。

 また、この西をはじめ、明本考浩、小泉佳穂、田中達也と、新戦力が躍動した点も興味深い。とりわけ、全ゴールに絡んだ小泉のインパクトは絶大だった。

「チームが目指しているサッカーの特徴とマッチしているので、評価されてきたと思う」と語る新戦力は、リカルド・ロドリゲス体制下での象徴となる可能性を秘める。

 実績十分の西を除けば地味な補強に映ったが(明本と小泉はJ2クラブからの加入)、新監督のスタイルに合うタレントを発掘してきた強化部の慧眼も変化を感じさせるポイントだ。

 気鋭のスペイン人指揮官の下で大きく舵を切った浦和だが、その改革の先に新たな「継続性」は生み出されるだろうか。