高校時代は2017年のセンバツ制覇に導いた捕手

 本当に大学野球選手の取材時間なのだろうか――。「~ですけれども」「~だと思いますので」……。テンポよく流れる言葉の端々にしっかりとした人間性が感じられる。慶大の主将・福井章吾捕手(4年)の取材時間はまるで企業のプレゼンテーションを受けているようだ。あまりにもロジカルなトークにいつも圧倒される。【市川いずみ】

 主将で日本一は既に経験済み。大阪桐蔭では“主将力”という言葉を自らに言い聞かせ、チームを2017年のセンバツ制覇に導いた。当時から「チームが勝つために」自身が何をすべきかを最優先する主将だった。

 慶大主将として初めて迎える今春のリーグ戦。福井が任されたのは8番打者だった。「十分、クリーンアップも打てると思うんですけど、福井が8番にいるとチームも下位打線で、もう1回チャンスを作って、本来のクリーンアップの働きをしてくれるという期待もあります。相手も福井が8番にいるということで嫌じゃないかな、と」。堀井哲也監督は福井を8番に据えた理由をこう明かした。

 まさにその言葉通り、24日の明大戦では2-3と1点ビハインドの6回、1死満塁で福井に打席が回ってきた。もちろん、欲しがる気持ちは一切なく、冷静にチームバッティングに徹した。

「なんとか1点という気持ちをもって打席に入りました。打った瞬間、犠牲フライかなと。1点は入るかなという思いで1塁ベースを回ったのは覚えています」

 左翼へ高々と舞い上がった打球は「風のおかげ」で、フェンス直撃。逆転の2点二塁打となった。

「なんでもできる」と福井の魅力を語る指揮官が求める8番打者としての役割。“ただの下位打線”ではいけないことは背番号10が一番理解している。

監督の意図を汲み取る8番打者、「プレッシャーをかけられれば…」

「ピッチャー(9番)の前って非常に大事で。1番には廣瀬がいますし、2番挟んだら3、4、5と打力のあるクリーンアップがいますので。2アウトでまわってきたら、なんとか出塁して、次の回、1番からにできる展開を意識してやっております。個人としては、ヒットを打つとか、ホームランを打つというよりもピッチャーや内野、外野にプレッシャーをかけられればな、と思い、打席で色々やっています」

 堀井監督の意図をしっかり汲んでいる福井はここまで4試合でチームトップの4打点をあげている。

 この日の取材時間の最後に堀井監督にこんな質問を投げかけてみた。

「福井章吾とはどんな人間ですか?」

 指揮官は目じりを下げてこう答えた。

「今、監督になってもいいような感じで。すごいキャプテンシーを持っていると思います。その一言に尽きますね」

 福井は言う。

「僕自身は10番を背負ったからと言って何か変えたこともないですし、本当に8番バッターとしてキャッチャーとしてチームの勝ちに貢献することだけを考えてやっています」

 慶大は初戦の法大戦で三浦銀二投手(4年)に“ノーヒットワンラン”をされたものの、それ以降の3試合で30安打。3勝1敗で2位につけている。上向きの慶大打線をマネジメントしている22歳の8番打者から目が離せない。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。