リーガ・エスパニョーラは残り5試合。乾貴士、武藤嘉紀とふたりの日本人選手が所属するエイバルは最下位に沈んでいる。下位3…
リーガ・エスパニョーラは残り5試合。乾貴士、武藤嘉紀とふたりの日本人選手が所属するエイバルは最下位に沈んでいる。下位3チームは2部へ降格で、残留圏17位のエルチェとの勝ち点差は7。道のりは険しい。
4月26日には、本拠地イプルアで同じバスク地方のレアル・ソシエダと戦ったが、0-1と敗れている。最近15試合は4分け11敗。打つ手がない。
ホセ・ルイス・メンディリバル監督が率いて6年目になるエイバルは、前線からの激しい守備とハイラインによる果敢な攻撃でセンセーションを呼び、1部の座を守ってきた。クロスや球際の強度を高め、選手のやるべき仕事を明確化。選手の成長を促してきたが、今季は主力の高齢化や移籍によって、そのバランスが崩れてしまった。
エイバルでのプレーが5シーズンになろうとしている乾、そして今シーズン入団した武藤の現状とは――。

今季はここまで26試合に出場、1得点の乾貴士(エイバル)
今シーズンの乾は「レギュラーと準レギュラーの間」と位置付けられるか。リーガでは33試合中26試合に出場し、21試合に先発している。しかし直近のレアル・ソシエダ戦は2試合連続ベンチで、出場機会がなかった。
スペイン挑戦6シーズン目。乾ほどコンスタントに試合に出場し、長く戦い続けてきた日本人選手はいない。メンディリバル監督に攻守両面で鍛えられ、エイバルで主力となり、ベティスでは苦労したがアラベスで復活し、エイバルで再び居場所を取り戻した。歴史的な功績をあげたリーガ日本人選手だ。
チームが不調の今シーズンも、目立って悪いわけではない。左サイドの定位置を売り出し中のスペイン代表ブライアン・ヒルに奪われることになったが、前半戦は右サイドやトップ下でポジションを見出した。有力な攻撃カードだったことは間違いない。バルセロナ戦では、浮き球のロングパスをワンタッチでコントロールしオスカル・ミンゲサを置き去りにしたように技術は出色だ。
主力選手として、ゴールへの意識の高さを見せたシーズンとも言える。プレーの選択肢の第一に、常にゴールがあった。積極的にシュートを打つ場面が目立ち、その姿勢は高い評価を受けた。
例えばレアル・マドリード戦でも、左サイドでカゼミーロを翻弄して際どいシュートを狙い、ゴール前でのクリアが甘いとジャンプしながら迷わず蹴り込むシーンもあった。どちらも名手ティボー・クルトワに止められたが、可能性を示した。
しかし、とにかく得点が決まらなかった。長いシーズンで、ゴールはレバンテ戦で決めたわずか1。これでは助っ人アタッカーとして及第点は与えられない。
相手ゴールに近いところでの貢献度が低いと、歯車が狂っていった。5-0で大敗したアトレティコ・マドリード戦では、途中出場したものの、パスミス、ボールロストのオンパレード。スペイン大手スポーツ紙『アス』は「プレーしなかったも同然。気力が感じられなかった」とまで厳しく評価された。
このままチームが2部に落ちた場合、今年で33歳になる乾の評価は下落を避けられない。
一方の武藤は、好意的に評価するなら「準レギュラー」か。23試合に出場し、先発が12試合。スペイン挑戦1年目としては悪くはない。
入団当初から、前線でのインテンシティは高く買われていた。プレミアリーグで戦っていただけに、高さや強さを苦としなかった。勤勉さやスピード、さらに無骨なFWが多い中でテクニックも十分にあり、積極的に起用されていた。ベティス戦でリーガ初得点。CKから味方がヘディングでそらしたボールに左足を突き出して決めた時には、「ストライカーとしてブレイクか」と期待感も高まった。
しかし現時点で、得点はそれのみに終わっている(それ以外にスペイン国王杯では2得点)。
いくら献身性を見せても、ゴールに直結する動きができない限り、FWは信頼を得られない。アトレティコ戦ではPKを誘うプレーがあり、セルタ戦ではポスト役からブライアン・ジルに絶妙な浮き球のパスを送り、得点をアシストした。どうにか先発の座を得ていたが、フィットしたとは言い難い。
今年3月、足首の痛みでビジャレアル戦のメンバーから外れて以後は、6試合連続メンバー外となっていた。
直近のレアル・ソシエダ戦は67分に交代出場し、競り合いでの強さやサイドに流れてボールを受ける巧みさも見せた。右サイドを駆け抜け、絶好のクロスも送った。しかしこぼれ球を打ち返したシュートはブロックされ、最後のプレーでクロスに対してシュートを打たず、後ろにパスをしてしまうなど、流れを変えるプレーはできなかった。
来シーズンは、所有権を持つプレミアリーグのニューカッスルが武藤を放出する意向を示しているが、エイバルへの完全移籍は現実性が乏しいだろう。移籍金や高額サラリーを、自前の練習設備すらないエイバルが負担することはできない。降格すればなおさらだ。残り5試合、武藤はチームを奇跡的な1部残留に導くゴールで劇的に評価を変えられるか。
ふたりの日本人の使命は明白である。エイバルを1部に残留させられるか。チームの浮沈によって、その価値がジャッジされる。