スターズ・オン・アイスで華麗な舞を見せた羽生結弦 4月22日に開幕した「スターズ・オン・アイス ジャパン・ツアー2021」横浜公演。羽生結弦はこのアイスショーについてこう話していた。「今回は(コロナ禍で)日本人スケーターだけの出演ですけど、…



スターズ・オン・アイスで華麗な舞を見せた羽生結弦

 4月22日に開幕した「スターズ・オン・アイス ジャパン・ツアー2021」横浜公演。羽生結弦はこのアイスショーについてこう話していた。

「今回は(コロナ禍で)日本人スケーターだけの出演ですけど、オープニングやフィナーレなど、すごく凝っている。(4月中旬の)世界国別対抗戦が終わってからの短い期間で非常に大変でしたが、みんなが一生懸命にスターズを作ろうと頑張ったのではないかと思います」

 初日のオープニングでは、『ブライディング・ライツ』に乗ってひとりで踊る、羽生の滑りから始まった。

 そして、第2部の大トリで出演した羽生が演じたのは、4シーズン前のショートプログラム(SP)曲『レッツ・ゴー・クレイジー』。初日の演技後には、こう語った。

「時差があって日本は日付が変わってしまっていますが、4月21日は(曲の歌手である)プリンスさんの命日でもあったので。プリンスさんの歌声とともに気持ちよく、そして、何よりも会場のみなさんも楽しみながら観てくださったと思うので、そういうことも含めて感謝しながら滑りました」

 今季SPで演じた『レット・ミー・エンターテイン・ユー』は、「こういう世の中だから観る人たちに楽しくなってもらいたい」という理由で選んだプログラム。今回滑った『レッツ・ゴー・クレイジー』も同じような意図を持って作ったもので、羽生自身、「観客とコネクトしたい」と口にするようになった曲だ。だからこそ、このアイスショーで演目として選んだのだ。

 翌日テレビ放映もされたその滑りは、そんな思いを発散するものだった。最初のループは前日と同じく3回転に抑えたが、次の4回転トーループには両手を上げた3回転トーループをつけて連続ジャンプに。そして、フライングキャメルスピンの後に、まるでステップとも言えるノリノリで踊る滑りでつなぎ、カウンターからのトリプルアクセルをきれいに決める。そして、終盤のステップシークエンスで、以前から彼が目指していた余裕を持ったクールな滑りを見せると、最後は足替えコンビネーションで締めくくった。

 演技後は荒い息遣いの中、笑みを浮かべて納得の表情。「ありがとうございます」と口にしながら四方に丁寧にあいさつをした。

「今回は、『楽しんでもらいたい』というのが一番です。そもそもアイスショーをさせていただくのも特別です。本当に苦しく、いろいろと生きづらい世の中ですが、それでもここに来てくれたからこその特別な意義を。せっかくだったらやっぱり、心から何かを燃え上がらせるような、明日への活力となるような演技をしたいと思いました」

 羽生は、来シーズンへ向けた4回転アクセルへの思いも話した。

「(3月の)世界選手権前にかなり4回転半の練習をして、やっと道筋が見えてきたかなという風に思うので......。ただ、がむしゃらにやるだけではなく、基礎練習や、アクセルのために何ができるかをまた一から考え直し、一から作り直す。羽生結弦のジャンプだと思ってもらえるようにするために、来シーズンへ向けて頑張っていきたいです」

 こう話す羽生は、「これから考えることがいっぱいありますから」と、オフシーズンを楽しみにする。「何よりも自分が試合やアイスショーなどで滑る意味を考えながら、一生懸命やっていきたい」と話した。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまな行動制限がある中で過ごした2020−21シーズン。特に3月の世界選手権から、帰国後の隔離期間も経て世界国別対抗戦に出場した1カ月間は、心身の疲労が大きかった。そんなシーズンであらためて感じたのは、東日本大震災を経験した後に感じたことと同じく、「自分は応援している立場ではなく、応援されているんだ」ということだった。

 何より、羽生がシーズン終了直後のこのアイスショー出演を決めたのは、「自分が滑ることで感謝の気持ちを伝えたい」という思いがあったからこそだろう。

「スターズ・オン・アイス ジャパンツアー2021」は、25日までの横浜公演の後、28〜30日の3日間で青森・八戸公演も行なわれる予定だ。