このオフもJ1各クラブが精力的に戦力補強を敢行した。長引くコロナ禍にあって、いまだ期待の外国人選手が合流できていないチー…

このオフもJ1各クラブが精力的に戦力補強を敢行した。長引くコロナ禍にあって、いまだ期待の外国人選手が合流できていないチームも多いが、各クラブの補強について、ひとまずシーズン序盤戦での評価をしてみたい。新戦力が活躍しているチーム、補強がうまくいったチームはどこか。識者3人に「ベスト3」チームを挙げてもらった――。



今季新加入の選手が活躍し、リーグ序盤で3位という結果を残しているサガン鳥栖

昨季13位の鳥栖が驚きの3位躍進
新戦力の活躍なくして考えられない

浅田真樹氏(スポーツライター)

1位=サガン鳥栖

 昨季13位のサガン鳥栖が、昨季の王者・川崎フロンターレと3位・名古屋グランパスに次ぐ3位(※4月18日開催分終了時点。以下同じ)につけている時点でかなりの驚きだが、昨季終了後に主力の多くがチームを離れたことを考えれば、驚きはさらに増す。新戦力の活躍なくして、この順位は考えられない。

 戦略家である金明輝監督は、対戦相手によってさまざまな策をチームに落とし込むが、それでも新戦力が適応できるのは、指揮官の手腕もさることながら、自らのスタイルに合った選手を適材適所で獲得していることが大きいのだろう。

 新戦力の顔ぶれを見ても、チーム得点王(5ゴール)であるFW山下敬大(ジェフユナイテッド千葉→)をはじめ、MF酒井宣福(大宮アルディージャ→)、MF飯野七聖(ザスパクサツ群馬→)、MF仙頭啓矢(京都サンガ→)ら、J2クラブからの移籍加入が多く、過去にJ1実績十分と言えるのは、DFファン・ソッコ(清水エスパルス→)くらいのものだ。

 クラブの経営状況を考えれば、限られた予算内での人材の有効活用は際立っている。

2位=アビスパ福岡

 昨季J2では堅守を武器に、組織的でソリッドな戦いを見せていた福岡にとって、大きく選手の顔ぶれが入れ替わった今季は、決して戦いやすい条件が整っていたとは言い難い。

 だが、時にフィールドプレーヤーの半分以上が新戦力などという状況になっても、福岡は手堅く、粘り強い戦いを一貫して続けることができている。DF宮大樹(鳥栖→)、MF金森健志(鳥栖→)、DF志知孝明(横浜FC→)、MF吉岡雅和(V・ファーレン長崎→)ら、新戦力が早くも主力に定着し、忠実にチームでの役割をこなしているからだ。

 J1残留が現実的な目標となるチームにとって、厳しい戦いはこれからも続く。だが、3勝4敗4分けと五分に近い成績で11位につける現状は、大健闘と言えるだろう。

3位=セレッソ大阪

 新戦力の活躍度を、単純に人数や出場試合数で計るなら、おそらく浦和レッズや清水エスパルスが上位に来るのだろう。すでにJリーグでの実績がある外国人新監督という、いわば"最大の新戦力"に率いられ、いずれも今季新加入の選手が数多くピッチに立っている。

 とはいえ、いかに数ばかりが多くても、チームの勝利につながらなければ意味がない。浦和は10位、清水は14位という成績を加味して考えると、新戦力の活躍もインパクトに欠ける。

 新戦力の活躍が、どれだけチームの成績向上につながっているか。その点で言えば、やはりセレッソ大阪のFW大久保嘉人(東京ヴェルディ→)の活躍は見逃せない。大久保が開幕戦から3試合連続で決めたゴールによって勢いづいたチームは、現在4位につけている。

 また、FW加藤陸次樹(ツエーゲン金沢→)、MF中島元彦(アルビレックス新潟への期限付き移籍終了→)ら、才能豊かな若い選手が、ベテランFWの活躍に引っ張られるように貴重な働きを見せていることも、C大阪の上位進出を支えていると言っていい。大久保の存在がチーム内に好循環を生み出している。

王者はスカウティングも王者
戦力の底上げに成功している川崎

小宮良之氏(スポーツライター)

1位=川崎フロンターレ

 王者・川崎フロンターレは、戦力を底上げする補強に成功している。これは、優れたスカウティングの賜物だろう。確立したプレーモデルに適応し、革新させるような人材ばかりだ。

 ボランチのジョアン・シミッチ(名古屋グランパス→)は開幕当初はかみ合わないシーンもあったが、早くも色を出しつつある。タイプは違うが、守田英正の穴はほぼ埋まった。

 中盤は他にも、塚川孝輝(松本山雅FC→)、橘田健人(桐蔭横浜大→)、小塚和季(大分トリニータ→)と、それぞれ戦術眼と技術が高く、ケガの大島僚太の不在も感じさせないバックアッパーぶりを見せている。

 そしてヒット銘柄が、遠野大弥(アビスパ福岡→)だろう。FC東京戦でも、前線のインテンシティを注入。トランジションも速く力強く、チームに推進力を与えている。インサイドハーフ、トップ下、サイドアタッカーと、どのポジションでもゴールに向かうプレー強度を高められる選手だ。

 王者は、スカウティングも王者と言える。

2位=名古屋グランパス

 セレッソ大阪から移籍の柿谷曜一朗は、すでに主力となっている。前線でボールを収めて時間を作り、力強く運ぶ力はJリーグでも屈指。マッシモ・フィッカデンティ監督の「1-0の勝利の方程式」の精度を引き上げた。

 補強組でレギュラーとなっているのは柿谷のみだが、他の新加入選手も"援軍"として大事な役割を担っている。齋藤学(川崎フロンターレ→)は、アタッカーの誰かが消耗した時の有力な切り札に。長澤和輝(浦和レッズ→)も、中盤ならどこでも計算できる。そして木本恭生(セレッソ大阪→)は制空権やマーキングに優れ、5バックなど守備固めには欠かせない要員だ。

 選手層は確実に増した。

3位=清水エスパルス

 スタートダッシュとはいかなかったが、補強の効果は見えつつある。

 GK権田修一(ポルティモネンセ→)、FWチアゴ・サンタナ(サンタ・クララ→)の2人はポルトガルリーグからやって来て、能力の高さの片鱗を見せている。終了間際に引き分けたヴィッセル神戸戦も、2人の出来は出色だった。権田は決定機を阻止し、チアゴ・サンタナは左足のひと振りで脅威を与えていた。チームとしてフィットするなか、今後はさらなる貢献も可能だ。

 何より、新たに監督に就任したミゲル・アンヘル・ロティーナが「秩序」という色を見せつつある。プレーモデルの確立には時間を擁するが、かみ合った時が楽しみだ。

開幕ダッシュに成功したサガン鳥栖
少ない資金で手にした新戦力が大当たり

中山 淳氏(サッカージャーナリスト)

1位=サガン鳥栖

 今季は主力を多く失い、大幅な戦力の入れ替えを強いられたが、蓋を開けて見れば、少ない資金で手にした新戦力が大当たり。

 DFファン・ソッコ(清水エスパルス→)、MF飯野七聖(ザスパクサツ群馬→)、MF仙頭啓矢(京都サンガ→)、FW山下敬大(ジェフユナイテッド千葉→)らが主軸として活躍し、MF島川俊郎(大分トリニータ→)、DF田代雅也(栃木SC→)、MF酒井宣福(大宮アルディージャ→)といった面々も十分に戦力としての目処が立った。

 開幕ダッシュ成功は、金明輝監督の徹底した指導と補強策の成功の賜物と言っていい。これから合流する外国人選手も含め、チームとしての伸びしろも十分だ。

2位=川崎フロンターレ

 引退した中村憲剛と海外移籍した守田英正が抜けた中盤をメインに新戦力を補強すると、すぐに期待のジョアン・シミッチがアンカーに定着。前所属の名古屋グランパスとは180度異なるスタイルにフィットしたことが最大の収穫だ。

 さらに、FW遠野大弥(アビスパ福岡→)、MF塚川孝輝(松本山雅FC→)、MF小塚和季(大分トリニータ→)らもバックアッパーとして中盤の選手層に厚みを持たせている。今季はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の戦いも待っているが、ローテーションをしながら複数タイトルを狙えるだけの戦力は整ったと見ていい。

3位=名古屋グランパス

 ほぼ固定メンバーで過密日程を乗り切った昨季のメンバーをベースに、FW柿谷曜一朗(セレッソ大阪→)、MF長澤和輝(浦和レッズ→)、MF齋藤学(川崎フロンターレ→)、DF木本恭生(C大阪→)、DF森下龍矢(サガン鳥栖→)といった即戦力を大量に補強。

 まだ完全にスタメンを奪った新戦力はいないため、投資に見合った成果が得られているとは言い難いが、それでもスタメンを入れ替えても戦力ダウンしないだけの厚い選手層になったことは間違いない。

 シーズン後半戦になれば、ACLを考慮した補強戦略の成果がよりはっきりするはずだ。