角田裕毅も、レッドブル・ホンダも、今週末のエミリア・ロマーニャGPでは開幕戦で掴み損ねたものを掴み取るつもりだ。 角田はバーレーンGPで9位入賞を果たした。だが、アルファタウリと自身のポテンシャルからすれば、目指していたのはこんなものでは…

 角田裕毅も、レッドブル・ホンダも、今週末のエミリア・ロマーニャGPでは開幕戦で掴み損ねたものを掴み取るつもりだ。

 角田はバーレーンGPで9位入賞を果たした。だが、アルファタウリと自身のポテンシャルからすれば、目指していたのはこんなものではなかった。



アルファタウリ・ホンダを駆る20歳の角田裕毅

「僕としてはもうちょっとポイントを獲りたかったな、というのが正直な気持ちでした。もっと上のポジションを目指していましたし、実際にトップ6に入ることは可能だったと思います。

 9位っていうギリギリの(入賞)ラインだったので、そこまで満足できなかったし、そんなにうれしくなかった。ですけど、完走できたことで次のレースへの反省点だったり課題が見つかっていい準備ができたので、1戦目としてはすごくいいレースだったと思います」

 膨大なデータを分析してレース週末をじっくりと振り返り、うまくいかなかった点はしっかりと見直して学習してきたという。

 予選Q2でリスク覚悟のミディアムタイヤを選んだのは、角田自身の希望だった。

 失敗を恐れずに攻めて限界を経験し、ミスを犯したならそこから学ぶ。開幕前から言い続けてきたスタンスを貫いた結果だった。

「チームとしては僕がミディアムタイヤでQ2を突破できるか自信を持てなかったようで、Q2のタイヤをどうするか聞かれたんですけど、僕はピエール(・ガスリー)と同じ戦略にしてくれと言ったんです。クルマのパフォーマンスはすごくよかったので、ミディアムでQ3に行けるという自信があったんです。

 それに、こういう機会もそう多くはないと思ったので、今後のためにもミディアムでチャレンジさせてくれと頼みました。それがうまくいかなくてQ3には行けませんでしたけど、インプルーブしなければならない改善点が見えたわけですし、今後に向けていい経験になったと思います。次はその経験を生かして、しっかりとQ3に進めるようにしたいと思っています」

 アタックの直前に前走車とのギャップを作るためスローダウンしなければならず、その際にステアリング上に表示されないタイヤ表面の温度が下がっていたことに気づかなかった。また、2回目のアタックに向けてセットアップ変更を施したにもかかわらず、ドライビングも変えてしまいそれが裏目に出た。

 この"失敗"をしたことで角田は多くを学び、レースエンジニアとの間で「次からはこうしよう」という相互理解が深まった。この学習スタンスこそが、角田の急激な成長の理由だ。

 そして1周目の攻防についても、完走最優先で安全にいったバーレーンGPの"失敗"から学び、今週末のイモラでは果敢に攻めていくと豪語する。

「開幕戦は何よりも完走して経験値を高めたかったので気をつけすぎたんですけど、周りがどういう動きをするのかも理解できたので、今回のイモラではもっとアグレッシブに行ってポジションを上げられるようなスタートをしたいなと思います」

 昨年10月にF1初テストを行なって以来、イモラでは幾度も走行を重ねてきた。

 アルファタウリのファクトリーがあるファエンツァからわずか12kmほどの距離に位置するイモラは、まさに角田にとって庭のような場所だ。ほかのドライバーたちも走行経験がほとんどないだけに、ルーキーとしての不利は少なく、むしろ走り込んでいるアドバンテージさえある。

「イモラはオフの間に相当走り込んでいて、もう目をつむってでも走れるサーキット。テストで培った経験値を最大限に生かしていい結果を手にしたいと思っていますし、もちろんバーレーン以上の結果を望んでいます。とくに今回は予選でQ3に進みたいですね」

 2018年のタッグ結成以来、アルファタウリとの間に並々ならぬ関係値を築いているホンダも、「ホームレースとして非常に気合いを入れてモチベーション高く臨んでいます」と田辺豊治テクニカルディレクターは語る。

 バーレーンGPでは、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポールポジションを獲得。決勝ではルイス・ハミルトンと熾烈な優勝争いを繰り広げた。

 レース序盤はディファレンシャルに問題を抱えてリアタイヤが片輪だけ空転するような状況に見舞われ、レース後半はパワーユニットの信頼性に関わる懸念が生じてセッティング変更を余儀なくされた。これによって、パワーユニットの性能を抑えた状態で走り続けなければならなくなってしまった。

「熱問題というよりはもう少し複雑で、信頼性に懸念が持たれる状況になったので、ICEのセッティングを変えて走行しました。本来は(予選・決勝シングルモード規定により)セッティング変更は許されませんので、レース中にFIAに状況を報告して(信頼性目的であると)許可を得たうえで変更し、結果として若干のパフォーマンスダウンもありました。その後は再びモードを戻したり変更したりが許されていないので、そのモードのまま最後まで走っています」(田辺テクニカルディレクター)

 それでもフェルスタッペンはハミルトンを追い詰め、ターン4でリアがスナップしてコース外に飛び出さなければ、オーバーテイクを成功させて優勝をかっさらっていただろう。

「勝てなかったのは残念だった。だけど、残り22戦に目を向ければ、僕らのクルマはかなりコンペティティブなようだからね。今週末はどうなるかわからないけど、去年のここ(イモラ)でもかなりコンペティティブだったし、すばらしいサーキットだから楽しみだよ」(フェルスタッペン)

 ただ、0.388秒もの差をつけた開幕戦での予選アタックに関しては、「ルイス(・ハミルトン)がターン10でミスを犯して0.3秒ほど失ったから」と冷静に分析している。つまり、メルセデスAMGに先行しているとは言っても、その差は0.1秒ほどでしかなかったと見ているわけだ。

「彼らが予選で完璧なアタックを決められていなかったので、決勝で僅差になったことにはそれほど驚かなかったよ。僕らは僕らでいくつか問題を抱えながらの走行だったし、スムーズな戦いができたわけじゃない。

 だけど、僕らももっといいレースができるし、いいフィーイングを掴んでいる。彼らだってもっとうまくやれたはずだから、結局のところはマシンにアップデートを投入し続け、改善し続けるしかないんだ。もちろん、僕自身も進歩し続けなければならない」

 セルジオ・ペレスはQ2でブレーキに問題を抱えていたことが判明し、それがなければ上位グリッドにつけていただろう(予選11位)。そして、フォーメーションラップで電源がシャットダウンするトラブルがなければ、レッドブルとメルセデスAMGは2対2の戦いになっていたはずだ。

 昨年は1対2の戦いで逆転を許してしまったイモラだけに、今年は2対2で戦うことが勝利のための重要なカギになる。そのための準備はしっかりできていると言えそうだ。

 角田裕毅もレッドブル・ホンダも、開幕戦バーレーンGPの"忘れ物"をしっかりと取り戻す。第2戦エミリア・ロマーニャGPはそんなレースが期待できそうだ。