15日、SPで2位スタートとなった羽生結弦 世界フィギュアスケート国別対抗戦初日の4月15日。昼前から行なわれた公式練習で、羽生結弦の表情には集中力の高まりが見えた。 前日にはややズレがあるように感じられたトリプルアクセル(3A)。この日の…



15日、SPで2位スタートとなった羽生結弦

 世界フィギュアスケート国別対抗戦初日の4月15日。昼前から行なわれた公式練習で、羽生結弦の表情には集中力の高まりが見えた。

 前日にはややズレがあるように感じられたトリプルアクセル(3A)。この日の公式練習では、最初に挑んだ3Aはパンクしたものの、4回転トーループ+1オイラー+3回転サルコウを跳んだ後の3Aはきれいに決めた。さらにイーグルからつないだ3Aも余裕を持って降りて納得するような表情を見せると、4回転ジャンプをきっちり跳んだ。

 曲かけ練習が始まると、4回転サルコウと4回転トーループ+3回転トーループをきれいな軸で決める。そして、位置をイメージしながら移動して、つなぎやスピンの動きを確認していた。

 再度3Aをきれいに決めて納得したのか、羽生はSPのスタートから3Aを跳び終えるまでのコースをゆっくり滑りながら動きを確かめて頷き、練習終了のアナウンスがあるまでリンクの外周をゆっくり回りながら集中力を高めていた。

 そうした余裕のある雰囲気は本番でも変わらなかった。冷静でありながらも気持ちが入った表情で滑り出すと、前半の4回転をしっかりと決める。つなぎも含めて計算された滑りでノーミスも見えてきたが、最後のジャンプだった3Aは前につんのめり、ぎりぎりで耐える着氷になってしまった。

 結局、その3AはGOE(出来ばえ点)で0.64点減点され、得点は107.12点。



SP演技を終え、ピースサインで笑顔を見せる羽生

「自分ではあまり聞く気はなかったけど、アナウンスが日本語なので宇野(昌磨)選手の点数があまりよくなかったのも聞こえてきたので緊張しました。ただ、彼はミスがあったけれど、彼の力とか魂とか、そういうものを受け取りながら自分も頑張れたと思います。この試合に貢献するためには、自分の演技にしっかり入り込んで、自分のペースでいることだと思っていました。今回は本当に最後の最後まで、宇野選手とともに外からの力を借りて滑らせていただいたと感じています」

 演技が終わった後の羽生は表情を何回か変えた。すべての観客が着氷で驚き、耐えきった瞬間には安堵のため息を漏らした3Aのミスが、複雑な思いとなって湧き出てきたからだろう。

 それでも羽生は「チーム競技というのではなく、自分の演技だけに限定すれば」と前置きしたうえで、「(大会の)このプログラム(『レット・ミー・エンターテイン・ユー』)で初めて4回転サルコウ、4回転トーループ+回3転トーループをきれいに跳ぶことができたので、成長しているなと思えています」と話した。

 この日の演技を振り返れば、プログラム自体の完成度は高かったと言える。力ではなく、羽生の高い技術力で跳んだ前半の2本のジャンプ、つなぎの滑り、スピンは余裕ある冷静な表現の滑りになっていた。それは、昨年12月の全日本選手権後に語っていたものだ。

「ロビー・ウイリアムズさんの『レット・ミー・エンターテイン・ユー』はイギリスのロックで、(自分の滑りより)もっと余裕のある曲だと思います。それがまだ表現できていなかったので、もっとスマートなものにしたいです」

 また、後半の鋭さと大きさのあるステップやスピンも、観客に対し一緒に楽しむことをアピール。羽生の生き生きとした気持ちが伝わってくる滑りだった。

 この日の男子SPの最高得点は最終滑走で109.65点を出したネイサン・チェン(アメリカ)。予定していた連続ジャンプを冒頭の4回転フリップに付けず、基礎点の高い後半の4回転トーループにつけて得点を上積みし、羽生を抑えた。

 技術点を見れば、羽生は連続ジャンプを後半にしたチェンより2.58点低いだけの59.27点。3Aをミスなく跳んで2点台のGOE加点を取っていれば、チェンを上回っていた計算になり、110点台に乗った可能性もあった。

 ノーミスではなかった惜しさが残る結果ではあったが、羽生が思う『レット・ミー・エンターテイン・ユー』の世界を、明確に感じさせる演技だった。