いばらきサイクリング協会主催の「ハーフセンチュリーいばらき2020」が11月1日に開催された。何かを競うのではなく、茨城県の那珂市、常陸大宮市に設定された特設コースを皆で楽しくサイクリングしようという大会だ。ハーフセンチュリーは100の半分…

いばらきサイクリング協会主催の「ハーフセンチュリーいばらき2020」が11月1日に開催された。何かを競うのではなく、茨城県の那珂市、常陸大宮市に設定された特設コースを皆で楽しくサイクリングしようという大会だ。ハーフセンチュリーは100の半分ということで「50」を意味し、50マイルに当たる80kmがメインのコース長となる。今回は周遊サイクリングと題した30kmのショートコースも設定された。


晴天の下、気持ちよくコースを走る参加者

スタート・ゴールになったのは、那珂市の那珂総合公園。朝7時55分までに参加者は車検を済ませ、注意事項および安全を確認した上で8時半にスタートする。


先崎市長はウェア姿で挨拶に登場。このためにトレーニングを積んできたという


自転車活用推進計画を策定した那珂市は、今後自転車を活用したまちづくりに臨む。策定委員とスローガンを発表

那珂市の先崎(まっさき)光市長は、マイバイクとともに登場。開会式では参加者に挨拶すべく、サイクルウェア姿でマイクの前に立った。トークセッションでの中で、大会のためにロードバイクを用意し、毎週練習を積んできたという事実が判明。集まったサイクリストから、どよめきと拍手が沸き起こった。聞けば、今日まで「鬼コーチ」に特訓されてきたという。「目標は完走」と笑顔で控えめな意気込みを語ったが、この日設定されたのは「アップダウンしかない」というやや難度の高いコース。市長の趣味はスポーツと公表されており、自信があるようにも思えるが、どのような走りを見せてくれるのかと、図らずも参加者の注目を集めることになった。


那珂市、常陸大宮市をめぐる80kmのコース(いばらきサイクリング協会サイトより)


元気にスタート!

この日の80kmコースは全て一般道を使用しており、交通規制は行わない。コース中には、9カ所ほど登坂があり、斜度10%にも達する上りもあるそうだ。特に中盤から後半に厳しい上りが集中しているとのこと。序盤に飛ばしてしまうと、あとでそのツケが回ってくるという一番しんどいパターンのコースである。

開会式を終え、まずはスタートに80kmコースの参加者が集まった。参加者を数名ずつのグループに分け、数分おきに各グループが出発していく。地域で暮らす人々の生活や、同じ道路を使うドライバーにストレスをかけないよう、できるかぎり参加者が分散してコースを走る形になるようにという配慮から生まれたスタート方式だ。

先崎市長は先頭グループでスタート。筆者もこのグループで走らせていただくことになった。このグループには、ビギナーの誘導に慣れた方が付くのだろうと思っていたら、スタートと同時にトップスピードの走行が始まるではないか! ウォーミングアップもないまま、市長は無言で先導に付いていく。想像よりはるかに速い。


淡々とグループに付いていく市長

ビギナーライドだろうと思っていた筆者には、暗雲が立ち込める。平坦エリアはまだよかったのだが、早々に上り坂が始まった。6~8%の上り坂が1kmほど続くのだとか! この上り坂もペースダウンすることなく、グループは快調に上っていく。俯き加減ではあるが、ペースを乱さない市長。さすが!


木材を積んだ光景が目につく。地域では積極的に木材の活用への取り組みが行われているそうだ


木屑などを固めた木質バイオマス燃料を発電に使うバイオマス発電所

どうにかアップダウンエリアを越え、緑の多いエリアを走っていると、木材が積まれたスポットが目についた。「この地域は、バイオマス発電などにも取り組んでいるんですよ」と市長。注目の再生可能エネルギーである木質バイオマス燃料を用いて発電も行っているのだという。調べてみると、石炭の発電に木屑などを圧縮成形したバイオマス燃料を加えることで、年間約8万トンの石炭消費量の削減と約22万トンのCO2排出量を削減できるのだそうだ。

2回目の久慈川を渡る。ここで、ありがたいことにコンビニ休憩をはさむことになった。慌てて店内に入り、すぐにエネルギーに変わる、ようかんなどを調達。朝食をほぼ食べずに来てしまい、このままではあぶなかった。こんなハイペースのライドになるとは思いもしなかったのだ。


この時期にも地域の象徴となるひまわりが咲いていた


先崎市長はまだまだ余裕。笑顔でVサインしてくれた

先崎市長はまだ余裕の表情。カメラを向けると明るくVサインしてくれた。ただ、このコースは中盤以降がきついという。序盤のハイペースは非常にリスクが高いが、問題ないのだろうか。聞けば「そうなんですよね」と、少し表情を変えたが、どうやら余裕がありそうだ。


さっそく登坂が登場。あっという間に取りに残されていく


上りと気持ちのよい下りが交互に現れる

コンビニを出てすぐに8〜10%の勾配の登坂が登場した。短いが、若干のつづら折りを見上げ、後半の登坂への不安がよぎる。ここは、マイペース、マイペース。だが、市長をはじめ、グループは軽々とクリア。市長のペースはその後も落ちず、おそらく地域の「鬼コーチ」に、このような走り方で鍛えられてきたのだろうと納得。

ゴルフ場が続き、緑の多い美しいエリアに入るが、規則的に登坂が登場する。500m、1kmと短くはない上り坂であり、オーバーペースにならないペース配分と、リズムを作って走ることが重要になるだろう。景観は美しく、常に変化していくため、飽きることはなく、苦にもならない。


川が登場。清涼感のある眺めを楽しむ

川が登場し、せせらぎの音を楽しんでいると、エイドのサインが見えてきた。やった!休憩だ!


エイドステーションでチェックを受ける


ごほうびの(?)おまんじゅうをいただいた

中に入り、ゼッケン番号をチェックしてもらう。ふっくらしたおまんじゅうが渡された。フードエリアには常陸大宮の有名菓子店の生大福が並んでいた。さらに柚子ジュース、カバヤのチョコレートも! 疲れた身体にうれしいものばかりだ。


常陸大宮の柚子ジュース


地元の人気店の生大福がふるまわれた。どのフレーバーにするか、悩ましい


カバヤさんからチョコレートのふるまいが!

ありがたく大福をいただく。もう一個くらい欲しかったけれど、一人一個とのこと。ここで販売してくれたら追加で買ったのになと無茶なことをぼんやり考えていると、市長が早々に出発の準備を進めているのが見えた。エイドでの休みすぎはダメージになる。筆者も大急ぎで出発準備をし、後に付いて行った。

だが、スタート直後に待ち受けていたのは激坂だった。助走もないまま、視界いっぱいに急勾配が現れ、大慌て。思わず「こんなことってありですかー!」と口走ると、みなさん苦笑されていた。


スタートしてコーナーを曲がったら、急勾配の上り坂!ギアチェンジにまごまごしていると、一瞬で離されてしまう

上で待っていてくれて、どうにかクリアして合流。この後は9〜10%の坂道が待っているという。食べたからには頑張らなくては!


しばらくは、美しいがアップダウンのあるエリアが続く

緑の濃い山間を抜けたり、少し開けた場所に出たりと、ルートはさまざまな景観の中を貫いていく。繰り返すアップダウン。でも、落ち着いて淡々と走れば、十分クリアできるレベルの勾配でもある。走っていけば、紅葉の進行状況も勾配や日照により各地が異なっていて、いろいろな色味を愛でられて、楽しい。この美しい季節の開催だった幸運を噛みしめながら進む。


市長の上りのペースは中盤も衰えず、ペースが合わず、周囲のライダーを抜いていくシーンも!


市長たちは快調なペースで登坂をクリアしていく。取り残される筆者

市長はだんだん本領発揮し、登坂でサポートライダーを追い抜くシーンも。忙しい公務の中、イベントに参加するために、これだけの準備をしてこられるという姿勢に感服だ。市長はペースを落とすことなく、力強くコースを走り抜けていく。


美しいダムエリアに到着。ここまで来れば、きつい上りは無い

ルートは美しいダムエリアに到着。ここまできてしまえば、あとはもうきつい上りもない。山々と澄んだ空気、陽の光を受け、キラキラ輝く湖面の眺めを堪能。残りは、無理のないペースをキープしていれば、完走できるだろう!


細い林道に突入。冒険みたいで、楽しい!時に葉を踏み、五感で環境を楽しんだ

ここから、冒険のようなルートに差し掛かる。道幅は狭く、生い茂った木々に囲まれ、路面には落ち葉。まるで探検のようで、ワクワク感が高まる。カーブを曲がった後、何が見えるのか? もちろん路面には注意が必要だが、幹線道路を走るより、こういう道を行った方がずっと楽しい! さわさわと葉を踏み締める音も楽しみながら進む。

一気に視界が開け、爽快に走り抜けたくなる見晴らしのよい道へ合流した。11月ではあるが、緑がまだ驚くほど多く、美しい。


緑の多い広がりのあるエリアへ。伸びていく道が先まで見通せて開放感も大きい


向こうの山まで広がる広大な田園風景を眺めながら、気持ちよくバイクを飛ばしていく

まだ稲穂が揺れる田を眺め、ゴールを目指す。
ついに大きな橋が見えてきた! もうゴールは近い。


橋が見えてきた!ルート上はこのような立て看板で誘導されていた


市街地に入る。ゴールまで、あと少し

青い空の下、青い水が流れる那珂川を渡れば、間もなくゴール。ゴールが見えてきた!


市長は喜びがにじみ出るような笑顔でゴール!

登坂が多かった分、ゴールの感動もひとしおだ。余裕の表情で走っていた先崎市長も、最高の笑顔でゴール。スタートよりも、自信がみなぎっているように見えた。

ゴールタイムは12時20分。アップダウンばかりのルート80kmを休憩含めて4時間以内で走ってくるとは、誰も予想していなかったようだ。ほどよい疲れと、達成感。そして、気持ちよかった!

参加賞として、那珂市のサコッシュと、ひまわり油の焼きドーナッツ、地ビール、干しいもとボールペンをいただいた。使えるもの、美味しそうなものが詰まっていて、受け取った皆が笑顔になった。


市長もゴールの申告を済ませる


先崎市長の完走証も用意されていた!


全員に配られたお土産セット。中身はうれしいものばかり

今回はなかなかタフなルートで走行を楽しむイベントであったが、ショートコースを使用する「周遊コース」カテゴリーでは、ゲストを交え、ゆったりとしたペースで、周辺を楽しんだとのこと。ビギナーや家族での参加には、こちらのコースがよいかもしれない。


周遊コースは走行ペースも抑え、景観を楽しみながらのグループライドを行った


無理のないペースで休憩もはさみ、ゆったりと楽しんだという周遊コース


完成したばかりのサイクリングマップが参加者に配布された。グルメ情報も満載。ハート型のコースに、話題が集まった

ハートの形をした那珂市は、市の形状を生かし、ハート形のコースなどを提案中。ママチャリでも楽しめるグルメスポットを含めたショートコースが中心になっており、2021年度はグルメライドの企画や情報発信などもあるかもしれないとのこと。

全般を通じて、交通量も少なく、走りやすく、空が広く開放感を味わったり、気持ち良い木立の間を抜けたりと、趣向の違うエリアが隣接しており、サイクリングを楽しむにはうってつけのエリアだ。よし、次はグルメライドだ! いろいろとリサーチし、また走らせていただき、レポートしたいと思う。乞う、ご期待!

画像:那珂市、いばらきサイクリング協会、編集部

(※緊急事態宣言期間中ではない昨秋のレポートです)