今年の3歳牡馬戦線は、GI朝日杯フューチュリティS(12月20日/阪神・芝1600m)の覇者グレナディアガーズ(牡3歳/父フランケル)がマイル路線へ向かうことを早々に表明したことで、GIホープフルS(12月26日/中山・芝2000m)を無…

 今年の3歳牡馬戦線は、GI朝日杯フューチュリティS(12月20日/阪神・芝1600m)の覇者グレナディアガーズ(牡3歳/父フランケル)がマイル路線へ向かうことを早々に表明したことで、GIホープフルS(12月26日/中山・芝2000m)を無傷の3連勝で制したダノンザキッド(牡3歳/父ジャスタウェイ)が中心となって引っ張っていくと思われた。

 ところが、同馬が前哨戦となるGII弥生賞(3月7日/中山・芝2000m)でまさかの3着。それまでとは様相が一変し、牡馬クラシック第1弾のGI皐月賞(4月18日/中山・芝2000m)は、多くの馬に戴冠のチャンスが巡ってきそうな混戦模様となっている。



好メンバーがそろった共同通信杯を快勝したエフフォーリア

 新たに浮上してきたのが、2、3月のステップレースを勝ち上がってきた面々だ。GIIIきさらぎ賞(2月7日/中京・芝2000m)を勝ったラーゴム(牡3歳/父オルフェーヴル)をはじめ、GIII共同通信杯(2月14日/東京・芝1800m)を完勝したエフフォーリア(牡3歳/父エピファネイア)、リステッド競走のすみれS(2月28日/阪神・芝2200m)を快勝したディープモンスター(牡3歳/父ディープインパクト)。

 さらには、弥生賞でダノンザキッドを破ったタイトルホルダー(牡3歳/父ドゥラメンテ)に、皐月賞トライアルの若葉S(3月20日/阪神・芝2000m)で圧巻の強さを見せたアドマイヤハダル(牡3歳/父ロードカナロア)、GIIスプリングS(3月21日/中山・芝1800m)を勝ったヴィクティファルス(牡3歳/父ハーツクライ)らである。

 他に、GIII毎日杯(3月27日/阪神・芝1800m)ではシャフリヤール(牡3歳/父ディープインパクト)が驚異のレコード勝ち。同馬は皐月賞をスキップしたが、GI日本ダービー(5月30日/東京・芝2400m)では有力候補の1頭に挙げられるだろう。

 こうした状況にあって、パソコン競馬ライターの市丸博司氏はこう語る。

「今年の皐月賞は、空前の大混戦という様相を呈しています。前回(2月4日発表のランキング)のTF指数(※市丸氏が独自に編み出したデータ指数)上位馬があまり数値を伸ばせず、かといって、初めてランクインした馬もそれほど高い指数を出せなかったからです。その結果、上位はかなりのダンゴ状態となっています。

 こうなると、皐月賞ではとんでもない大穴が飛び出したとしても驚きません。逆に言うと、絶対的な軸馬が不在。どの馬からでも入れるため、予想においては非常に難解なレースとなりそうです」

 まさしく激戦必至の皐月賞。ここではその一戦を前にして、現時点での3歳牡馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今春のクラシックを目指す3歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランク付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。




 クラシック本番を目前にした最新ランキングは、これまでのランキングからガラッと変わった。1位は、エフフォーリア。初のランク入りでいきなりトップとなったこの結果こそ、牡馬戦線がいかに混戦であるかを物語っている。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「馬格のあるエピファネイア産駒。まだトモ腰に甘さがあり、頭が高い走法ということもあって、シャドーロールを装着しています。

 血統や脚元からすると、本来一瞬の速い脚は使えないはずなのですが、共同通信杯では直線を向いてからの残り2ハロンから1ハロンで10秒8というラップを記録。大型馬のわりには、回転の速い脚が使える特異なタイプです。血統+脚元と馬体+走法がマッチしていないことが、むしろこの馬の強さを生み出しているのかもしれません。

 好位から速い脚で抜け出して、上がりも最後までしっかりとまとめられるため、皐月賞でも、ダービーでもいい勝負ができそうです。共同通信杯で、朝日杯FS2着のステラヴェローチェ(牡3歳/父バゴ)をはじめ、のちにスプリングSを制すヴィクティファルスや、毎日杯を快勝するシャフリヤールらを子ども扱いにした内容は高く評価せざるを得ません」

土屋真光氏(フリーライター)
「毎年、共同通信杯は出世レースとして注目されますが、今年のエフフォーリアはその内容が特に秀逸でした。しかも、負かした馬たちがその前後で重賞を勝っていることで、その強さにより説得力が増しています。仮に皐月賞で取りこぼしがあったとしても、ダービーではそれなりの内容で、きっちり結果を出してくれるのではないでしょうか」

市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「3戦3勝で、いずれも先行して抜け出す"横綱相撲"。中山は初めてとなりますが、脚質からは逆にプラスでしょう。皐月賞での活躍が目立つ共同通信杯からのローテで、昨今の"直近のトライアル組は軽視"という傾向にも合っています。アドマイヤムーンやヒシアマゾンが出た名牝系の血筋で、軸馬には最適かもしれません」




 2位は、前回まで1位に君臨し続けていたダノンザキッド。弥生賞の結果を受けて、ポイントも大幅にダウンした。はたして、クラシックでの巻き返しはあるのか。

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「個人的にはランドオブリバティ(牡3歳/父ディープインパクト)に期待していたので、ここのところの内容を受けてクラシック戦線から離脱してしまったことはとても残念でした。ダノンザキッドには以前から不安を感じていましたが、弥生賞の結果によって、抜けた存在ではないことがはっきりしました。とはいえ、大崩れはしていません。使った上積みはあるでしょうから、本番での逆襲を楽しみにしています」

吉田氏
「弥生賞はスタートを決めながらも、無理をせずにじっくりと運ぶ形をとりました。跳びが大きく、エンジンのかかりが遅いことは誰もが承知のことですから、鞍上の川田将雅騎手も皐月賞&ダービーを見据えての騎乗をした、と見ていいでしょう。

 結果的には、スローペースで速い上がりが求められる流れとなり、外、外を回ったことで3着に終わってしまいました。それでも、トライアルという観点からすれば、上々の内容だったと判断していいでしょう。

 ただ、ジャスタウェイ産駒は競走成績に波があり、一度の敗戦が精神面に及ぼす影響は多分にあります。また、舞台設定からすれば、直線の長いコースで施行されるダービーのほうが対応しやすく、皐月賞に関しては若干の不安があることは否めません。勝ち負けを演じるには、好位で折り合って早めに踏み込めれば、といった条件付きとなりそうです」

 3位は初のランクインとなったヨーホーレイク(牡3歳/父ディープインパクト)。ホープフルS3着のあと、きさらぎ賞でも2着と奮闘したことでポイントを上げた。

市丸氏
「2勝馬ですが、ホープフルS3着、きさらぎ賞2着と実績は十分。ここ2戦はいずれも後方に控えて届かず、という結果でしたが、ペースが遅ければ前へ行く脚もあります。どんな展開でも好走できる要素は備えています。

 ただ、この血統はコンスタントに走る一方で、重賞、特にクラシックに縁がないのも事実。上を見ると、全兄のカミノタサハラが弥生賞を勝ったのみ。一族悲願のクラシック制覇なるか? というと、疑問を感じます」

本誌競馬班
「重賞で常に安定した走りを見せているのは強み。切れ味勝負になれば、勝ち負けというシーンがあっても......」

 4位もラーゴムが初のランク入り。オープン特別や重賞で善戦を重ね、きさらぎ賞でついに重賞勝ちを決めて評価を上げた。

市丸氏
「ラーゴムは派手さこそないものの、相手なりに走る堅実味が売り。エフフォーリアと同じく、脚質的にも中山向き。面白い存在と言えます」

土屋氏
「過去2回の敗戦は、ともに切れ味で上回る馬にかわされたもの。終(しま)い勝負という展開は分が悪いイメージがあります。

 しかし、クラシックでは前半からそれなりに流れるでしょうから、持ち味となるしぶとい伸び脚が生きるはず。行きたがる面も、折り合いを欠くというより、前の馬への闘争心の表われ。そんな『前の馬は絶対に捕まえる』といった意思が、レース終盤まで途切れないのも魅力です」

 大混戦を象徴するように、5位には4頭の馬が名を連ねた。前回2位からランクダウンしたステラヴェローチェ、前回と同じ順位をキープしたオーソクレース(牡3歳/父エピファネイア)、そして初のランクインを果たしたタイトルホルダーとヴィクティファルスだ。

市丸氏
「ステラヴェローチェは、朝日杯FS2着の指数がそのまま残った形。共同通信杯では、エフフォーリアにはコンマ5秒差をつけられて5着と惨敗。指数1位とはいえ、皐月賞は正直厳しいかもしれません」

木南氏
「クリストフ・ルメール騎手には、グラティアス(牡3歳/父ハーツクライ)やシュネルマイスター(牡3歳/父キングマン)といったコンビ候補が他にもいるなかで、クラシック本番に向けて、同騎手とノーザンファームがオーソクレースを選んだという事実は大きいです。そういう意味では、皐月賞を回避したのは残念です」

吉田氏
「タイトルホルダーはハミ受けに課題があり、舌を縛ってレースに臨んでいましたが、弥生賞ではノーズバンドに馬具を変更。ハナを奪ったこともあって、道中での力みがなくなりました。それが、安定した末脚にもつながったと言えます。行き脚がよく、主導権を握れるのは強み。自分のペースで運べれば、堅実に走れるタイプです」

土屋氏
「ヴィクティファルスは、共同通信杯ではエフフォーリアに敗れたものの、シャフリヤールやステラヴェローチェには先着。それを考えれば、スプリングSは順当勝ちと言えます。重馬場だったことに加え、レースレベルに疑問符が投げかけられて前評判は低いですが、人気の盲点といった存在。ひょっとすると、という期待はあります」

 今回のランキングは、3歳牡馬戦線がまさに「大混戦」であることを示している。ということは、本命党にとっても、穴党にとっても、馬券的な妙味は増す。好配当への夢が膨らむ皐月賞のゲートインまで、まもなくである。