画像提供:日本ブラインドサッカー協会“目をオフにすると発見がある”というコンセプトにもとづき、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)が開催する【OFF T!ME(オフタイム)】というブラインドサッカーのエッセンスを活用した体験プログラムがあ…

画像提供:日本ブラインドサッカー協会

“目をオフにすると発見がある”というコンセプトにもとづき、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)が開催する【OFF T!ME(オフタイム)】というブラインドサッカーのエッセンスを活用した体験プログラムがある。コロナ禍で対面でのプログラム実施が難しくなったため、昨年8月からオンライン版が実施され、好評を博している。実際にこのオンラインプログラムを体験してみた。

オンライン版の【OFF T!ME】は実際にボールを追いかけてプレーをするわけではないが、声でコミュニケーションをとり、いくつかのワークショップを通してブラインドサッカーに必要な“繋がり”を体験できる無料プログラム。JBFAのホームページから申し込むと、ZOOMのリンクが送られてきて、当日はほかの参加者と協力して、さまざまなワークショップを行う。

プログラムはトータル2時間で、参加者は原則上限15名まで。JBFAからファシリテータ(進行役)が登場し、ブラインドサッカーの解説なども交えてプログラムを進めていく。毎回必ずブラインドサッカーの選手が参加して、リアルな情報を聞くことができるのも大きな魅力だ。この日はブラインドサッカーナショナルトレセン(「トレセン」は代表を育成するトレーニングセンター制度)指定選手の山川聖立さんが参加。一般の参加者は満員だった。

画像提供:日本ブラインドサッカー協会

まずはブラインドサッカー初心者のために競技の解説。アイマスクや転がすと音の鳴るボールを使うこと、選手は全員が視覚障がい者ではなくゴールキーパーは目が見える人が行うこと、コートのサイドラインにはサイドフェンスがあり、ゴール裏にはシュートする選手に指示を出すガイドが存在することなどが説明される。ブラインドサッカーは見える人と見えない人が協力し合って行うスポーツ。だから「声を出して伝える」というコミュニケーションがとても重要で、勝敗を左右するポイントにもなる。

ブラインドサッカーにおいて大切な「見えない人にどう伝えるか?」に着目して生まれたのがこのオンライン版。どのように表現すれば正しく伝わるか、見えない人全員でコンセンサスを取るためにはどんな工夫が必要か? 「繋ぐ」をテーマにしたワークショップを通して「伝えて一体となる」ことを体感していく。

ちなみに日本国内における視覚障がい者は約32.5万人(出典:厚生労働省「令和元年度福祉行政報告例」)、精神疾患などを含む障がい者は約963.5万人(出典:内閣府「令和元年版 障害者白書」)で人口の7.6%を占める。これは日本の名字ランキング上位6位までの人口とほぼ同じ人数だと言われている。佐藤さん、鈴木さんは身近に何人もいるのに、障がい者に出会うことは少ないというのが日本の現状だ。JBFAは障がい者と健常者が当たり前に混ざりあう社会の実現に向けて、さまざまな活動を行っている。

基礎知識を得たところでプログラムがスタート。最初はいくつかのチームに分割されたブレイクアウトルームにて自己紹介。参加者は学生、会社員、大学職員など性別、職業、世代もさまざま。この日のアジェンダ(課題)は1.イメージマッチング(声なし)、2.ブラサカ体操、3.イメージマッチング(声あり)、4.漢字でヒント、5.チームブラサカ、6.懇親会(自由参加)の6項目。(※ブラサカはブラインドサッカーの略称)

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「イメージマッチング」では目を閉じてひとつの言葉から連想されるものを各自がポーズで表現。一言だけだと参加者のイメージはまとまらず、ばらばらになるが、言葉を重ねて伝えるとことで全員が同じポーズをとるようになる。「ブラサカ体操」は講師(ブラサカ選手)の動きをひとりのガイド役が声や言葉を使って誘導し、目を閉じたプレイヤー(参加者)たちが体操を行う。「漢字でヒント」は画面上に表示されたお題を、目を閉じた回答者に漢字一文字のヒントを出して答に導いていく。いかに的確な一文字を選ぶかが鍵となる。このようにさまざまな視点から、伝える工夫を学んでいく。

最後の「チームブラサカ」は自己紹介したグループに分かれて行うクイズ方式のゲーム。各自が背番号を決めてプレイヤーとなり、ボール(キーワードが描かれたカード)を探してシュート(キーワードから連想される答を出す)して、ゴール(正解)を決めていく。それぞれの問題には難易度があり、得点が異なる。得点数によってチームのランキングを競うという内容。ゲームのどの場面でもコミュニケーション能力が必要で、進めていく間にチームとしての結束力や一体感が生まれる。

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最後は感想をアンケートフォームに記入して懇親会になるが、懇親会は参加自由。懇親会ではブラサカ選手に直接質問をすることもできる。ブラサカの選手たちもコロナ禍で思うようにチームでの練習ができないことや、同行援護が受けられないことなど、視覚障がい者の現状を知ることができた。

参加する前は、2時間は少し長いと思っていたが、終わってみればあっという間。しかもその間に「伝えるとはどういうことか?」、コミュニーションの本質を学ぶことができる。「チームブラサカ」では初対面の人々と協力しあって問題を解くうちに、連帯感も生まれ画面越しに“繋がる”ことが体験できた。アジェンダごとにブラサカに結び付けた解説が入るから、ブラインドサッカーの奥深さも知った。実際に試合観戦をしたくなった、競技場で応援したくなったという人も多かったと思う。

目を閉じて、少しの時間だけでも見えない世界を体験することで、言葉の重要性や伝えるということは「相手を思いやるということ」だと感じた。改めてコミュニケーションについて考えるいい機会にもなった。

このプログラムは新人研修やコミュニケーションのスキルアップ、チームビルディングの研修としてもとても有効で、企業向けにもアレンジして展開することが可能だそうだ。まずはひとりで参加して、オンラインで“繋がる”ことを体感してみてほしい。

【最新開催日程】
4月8日(木) 18:00~20:00
4月22日(木) 20:00~22:00
*申し込みは下記URLから
http://www.offtime.jp/