「特集:なぜ『呪術廻戦』にハマるのか」(1)証言者:ケンドーコバヤシ 現在、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が高まっている『呪術廻戦』。同作は『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の、作者・芥見下々によるダークファンタジー漫画で、コミックスのデジタ…

「特集:なぜ『呪術廻戦』にハマるのか」
(1)証言者:ケンドーコバヤシ

 現在、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気が高まっている『呪術廻戦』。同作は『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の、作者・芥見下々によるダークファンタジー漫画で、コミックスのデジタル版を含む累計発行部数は3600万部を突破。昨年10月から放送を開始したTVアニメがさらなる話題を呼び、爆発的ヒットを記録している。

 芸能界でもファンが多く、『呪術廻戦』どハマり芸人も続出。そのひとりであるケンドーコバヤシ(吉本興業)は複数の番組で「今年絶対くる漫画」として紹介している。人間の負の感情から生まれる"呪霊"と、それを祓(はら)う呪術師との迫力ある戦いがファンを熱狂させているが、大のプロレス・格闘技好きでも知られる"ケンコバ"の目にはどのように映っているのか。印象に残る3つのバトルシーンや好きなキャラクターについて聞いた。

※アニメ視聴者の方にはネタバレもあります

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『呪術廻戦』の魅力を語ったケンドーコバヤシさん

── ケンコバさんから見る、『呪術廻戦』の魅力を教えてください。

「やはり、登場するキャラクター全員が、それぞれ"矜持(きょうじ)"を持っているところが大きな魅力だと思います。そこは誰も揺るがなくて、お互いの矜恃を守るために戦っている。だから当人同士は善悪でなく、信念に基づいた行動を取っているんです。なんか、僕の好きなプロレスに通ずるところがありますよね」

── まさに今回は、そのプロレスに通ずるバトルシーンベスト3をお聞きできたらと思います。

「確かにプロレスを思い起こさせるシーンはいくつかありますね。まず3位は、パンダVS究極メカ丸(与幸吉:むた・こうきち)。作られた命であることを、あまりヘビーに受け止めていないパンダと、逆に生まれつき枷(かせ)を負った体をヘビーに受け止めすぎているメカ丸。お互い命としては恵まれていない者同士の戦いなので、胸にくるものがありました。これ本当に、『週刊プロレス』の記事にしやすいバトルやったと思いますよ(笑)。

 あとこれは余談なんですけど、実はこれ、僕のトラウマがほじくり出される戦いでもあるんです。小学1年生の頃に岡山のおばあちゃんの家に預けられている時期があったんですが、ある時、いとこと屋根の上でトランプをして遊んでいたのを、おばあちゃんにめちゃくちゃ怒られたことがあって。それがトラウマになったんです。だからパンダとメカ丸が屋根の上で戦っているのを見ている時は、当時のドキドキ感が蘇ってきました(笑)」

── どちらも「屋根の上の戦い」という(笑)。

「僕らはババ抜きでのバトルでしたけどね(笑)。さらにその直後には、近くのダムから落ちてしまって高所恐怖症になったんです。実は、その事件にもいとこが絡んでいて。密かに俺を呪い殺そうとしてるんちゃうかって思いましたよ(笑)」

── 続いてバトルシーン第2位は?

「両面宿儺(りょうめんすくな)vs漏瑚(じょうご)です。まぁ漏瑚が好きっていうのもあるんですけど、彼が戦いの終わりに、花御(はなみ)や陀艮(だごん)と空想の中で語り合うという仲間想いなところがいい。最後、宿儺から言葉をかけられた時に、それで救われる漏瑚もかわいかったです。

 現実の世界では、例えば五輪競技などでもなかなか敗者が輝くことは難しいですよね。『決勝戦で負けての銀メダルが一番嫌。だったら銅メダルのほうがいい』と、アスリートの方から聞いたことがあります。もちろん、見ている側からするとどんな結果でもすばらしいと思いますけどね。なので、この宿儺と漏瑚の戦いでは勝者ではなく敗者が輝くところが魅力ですし、一試合のストーリーとして見ても、かなりプロレスにも通ずるところがあります」

── 次はいよいよ、第1位をお願いします!

「虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)&東堂葵(とうどう・あおい)VS真人(まひと)ですね。これはいいバトルでした。東堂の"不義遊戯(ブギウギ)"の能力をフルに使っての入れ替え戦法がものすごく効いていて、『ルチャリブレ(メキシコ式プロレス)』を見ているようでしたよ。ルチャリブレって"自由な戦い"っていう意味でもあるんですけど、その名の通り、タッグマッチの場合はタッチなしで別の選手がリングに上がれるんです。 だからルチャドール(ルチャリブレのレスラー)も、このバトルを見たら食いつくと思います(笑)。

 僕は東堂が好きなんですけど、この戦いで平家物語の冒頭をそらんじながら登場したシーンを見て『どんだけカッコえぇねん!』って思いましたよ。そのシーンを見て以降、テレビなどでも同じような登場をしたいとずっと狙ってるんですが、それに合ったシチュエーションに巡り合わないんですよねぇ......」

── 見られる日を楽しみにしています(笑)。ちなみに東堂と虎杖の組み合わせというのは、プロレスのタッグチームで例えると誰になりますか?

「そうですね......あのタイプは意外といないかもなぁ。だから僕も、ここまで興奮しているのかもしれません。花御との戦いでもそうでしたけど、東堂が虎杖に、"特級呪霊"を相手にぶっつけ本番で戦い方を教えていますが、あんなタッグチームは見たことがないですから。2人はスピードもパワーも抜群。年末の全日本プロレスの『世界最強タッグ決定リーグ戦』に出てくれたら盛り上がること間違いなしですよ」

── ちなみに、バトルシーンベスト3に五条悟の戦いが入らないのは、「強すぎるから」といった理由からですか?

「いや、嫉妬ですね(笑)。というのも、僕の彼女も『呪術廻戦』にハマっていまして。五条先生を見てから、男性の好みが変わったらしいんですよ。それが原因で、もう僕には興味ないっていう(笑)。本当は『あんな奴のどこがえぇねん!』ってツッコミたいんですけど、完璧すぎてそれを言う隙がないんですよ。

 僕からすれば、逆に東堂のほうがあまり女性人気がないことが不思議で。女性の方は『強くてユーモアがある人が好き』ってよく言うじゃないですか。それでいえば東堂がナンバーワンだと思うんです。

 それに彼には『性癖にはソイツのすべてが反映される』という持論があるんですけど、僕はそこにめちゃくちゃ共感していて。やっぱり性癖には人間性が表れますから、そこを語り合えない人とはホンマの友達にはなれないと、僕も感じてるんです。だから東堂は、つくづくすばらしいキャラやなって思います。まぁただ、僕が今までの人生でそんなに女性から絶賛されたことがない理由が、"東堂好き"というところに垣間見えた気はしますけど(笑)」

──今後の展開として期待していることはありますか?

「個人的に、もっと伏黒恵が出てきてほしい、という願いはありますね。今回のバトルのランキングにも、本当は伏黒の戦いが入ってこなきゃダメなんですよ。彼は、『SLAM DUNK』でいえば流川楓、『NARUTO -ナルト-』でいえばサスケ的なポジションだと思いますけど、そこの地位をしっかり築いてほしい。

 お父さん(甚爾=とうじ)や義理のお姉ちゃん(津美紀)のことなど、背負っているものが大きいキャラでもありますしね。そういった過去のことやポテンシャルも含めて、今後は主役のように存在感を放っていくんちゃうかなって、勝手に思ってます。ファンの方からは『どこ目線やねん!』って言われるかもしれませんが(笑)」

── 伏黒、そしてケンコバさん的には東堂もさらに出てきてくれるといいですね。

「そうですね。作品をひとつのプロレス団体として見るなら、彼らにはもっと人気が出てもらわないと(笑)。五条先生と、狗巻棘(いぬまき・とげ)の人気が突出している印象がありますから。

 とにかく、どのバトルを見ても、戦うキャラそれぞれのストーリーが色濃く描かれていますし、哀愁のある結末が多いので、プロレス好きの方なら読めば絶対ハマると思います。ぜひ読んで、見ていただきたいですね」

(証言者2 DeNA今永昇太>>)