アルファタウリ・ホンダとドライバー契約を結んだ角田裕毅(20)が満を持してF1デビューする。日本人がF1に参戦するのは2014年にケータハムで出場した小林可夢偉以来、7年ぶり。育成プログラムの王道を進みながら寄り道することなく、F1の切符…
アルファタウリ・ホンダとドライバー契約を結んだ角田裕毅(20)が満を持してF1デビューする。日本人がF1に参戦するのは2014年にケータハムで出場した小林可夢偉以来、7年ぶり。育成プログラムの王道を進みながら寄り道することなく、F1の切符をつかみ、将来的には日本人初の優勝の期待も大いに向けられている。
バーレーン合同テストに参加したアルファタウリの角田裕毅((c)RedBull Conrent Pool)
12~14日にバーレーンで行われた合同テストでは最終日にレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(オランダ)に次ぐ2番手タイムをマークした。他チームがどのような内容のテストを行っているかは分からず、そのまま比較することは難しいものの、メルセデスやフェラーリなどのトップチームも走っているなかでトップ3に入れたことは何よりの朗報だ。
合同テストを終えて数日後に報道向けのオンライン会見が行われた。間もなく迎える開幕戦バーレーンGP(28日決勝)の目標について質問が及ぶと「目標は特にないです。ポイントが取れるように頑張るくらい。F1の経験がないので想像できませんが、僕がいま持っているパフォーマンスをすべて出し切ってミスを恐れずガンガン攻めていけたらな」と言い切った。
ミスを犯せば、周りの評価が下がる恐れもあるが、「そこでミスもあるかもしれませんが、それで自分の弱点も分かると思う。弱点を第2戦に改善することもできる」と逆転の発想を繰り出す。1年目の戦い方についても「できるだけ点を取る。もちろん、表彰台に乗りたいし、優勝もしたいですけど、レースでは何が起こるか分からないので、序盤はミスを恐れずに攻めていって、中盤から終盤にかけてアダプト(適応)してまとめていければと思います」とし、冷静かつ客観的に自分のレース計画を立てている様子だ。
さらに自身のセールスポイントを「ブレーキングとオーバーテーク」と断言している。具体的には「コーナーに入るには全てブレーキングから始まる。ブレーキングが良くないとクルマの挙動が乱れたり、変化をつかみづらくなったりする」と説き、「オーバーテイクは(開幕前の合同テストで)1回だけあった。相手は(ウィリアムズの)ラッセルで、決勝シミュレーション中だったが、自信を持ってブレーキングで突っ込んでオーバーテイクできた」と豪胆ぶりを披露した。
角田裕毅が駆るアルファタウリの今季型車「AT02」((c)RedBull Conrent Pool)
これだけ前向きな発言が飛び出すのはマシンパッケージが良いことを肌身で感じたからだろう。ホンダも今季が参戦最終年ながら新設計のパワーユニットを送り込む。低重心でコンパクト化もされ、チャンピオンチームのメルセデスに昨季以上に肉薄するのではないかとも予想されている。
角田がフォーミュラカーのレースに出場したのは16歳となった2016年から。4輪レース歴5年で最高峰カテゴリーをつかんだ。鈴鹿サーキットのフォーミュラレーシングスクールは首席卒業を逃したものの、日本の登竜門カテゴリーのFIA―F4にデビューしてから頭角を現し、タイトルを取って海外へ。F1に併催されているF3、F2をいずれも1年で卒業しており、昨季のF2では24レース中3勝を挙げてランク3位。パフォーマンス自体も申し分ない。ホンダとレッドブルの両系統の育成プログラムにも組み込まれており、お膳立ても整えられている。
モータースポーツの技能とは全く関係ないものの、彼の出身校にも注目したい。日本人3人目のフルタイムF1ドライバーとなった片山右京を輩出した日大三高に入学し、途中で、ホンダの育成ドライバーの先駆けとなった佐藤琢磨が卒業した和光学園高(東京)に転校。その後は多くのアスリートを送り出している日体大に進んだ。2人のF1経験者が高校の先輩というのも奇妙な縁だ。
日本人の決勝ベストは3位。鈴木亜久里(1990年日本GP)、佐藤琢磨(2004年アメリカGP)、小林可夢偉(2012年日本GP)の3人が記録している。抜群のレース環境を手に入れた角田であれば、デビューイヤーで3位の壁を越えるかもしれない。
[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]
トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)
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