テレビ東京の「有吉ぃぃeeeee!」。芸人・タレントが楽しくeスポーツタイトルをプレーする 2018年の流行語の一つに「eスポーツ」が選ばれた頃から、eスポーツは広く人々の知るところになり、数々の大会やリーグが開催されてきた。その流れを察知…


テレビ東京の

「有吉ぃぃeeeee!」。芸人・タレントが楽しくeスポーツタイトルをプレーする

 2018年の流行語の一つに「eスポーツ」が選ばれた頃から、eスポーツは広く人々の知るところになり、数々の大会やリーグが開催されてきた。その流れを察知して動き出したのがテレビ局だ。今では各局がこぞってeスポーツ番組を制作して、独自の情報を発信している。

 その代表的な番組が、日本テレビの「eGG」(エッグ)、テレビ東京の「有吉ぃぃeeeee!そうだ!今からお前んチでゲームしない?」(以下:有吉ぃぃeeeee!)、テレビ朝日の「ReAL eSports News」(リアル・eスポーツ・ニュース)だ。これらの番組プロデューサーに番組を立ち上げた理由について聞いた。

 まずは日本テレビのeスポーツ応援番組「eGG」。2018年7月にスタートした同番組は月1回、火曜日深夜に放送。DAIGO、武田玲奈、岸大河、佐藤梨那(日本テレビアナウンサー)を中心に、日本テレビ傘下のプロeスポーツチーム「AXIZ(アクシズ)」も出演。最新eスポーツタイトルやeスポーツに関わる仕事の紹介などeスポーツのホットな情報から、番組主催大会に密着した特集番組、さらにはAXIZの活躍までeスポーツをさまざまな角度から取り上げている。立ち上げの理由について「eGG」小林大祐プロデューサーはこう語ってくれた。

「2017~18年頃は『eスポーツ』がキーワード化した時期だったこともあり、社内で新規事業の募集があった時に、20名弱がeスポーツの企画を挙げていました。その中で番組『eGG』とチーム『AXIZ』の設立に絞られました。テレビ局である以上は番組を活用することは必然ですし、テレビの力でeスポーツを世の中に広める役割もあります。

 またeスポーツの主役はやはり選手やチームです。彼らがライバルと切磋琢磨し、感動や興奮、くやしさを体現することで、応援しているファンに画面を通じて共有していくことが一番大切だろうなと思い、チームの設立にも挑戦することにしました」

 テレビ東京の「有吉ぃぃeeeee!」は2018年10月にスタート。毎週日曜日の夜10時~10時48分の番組で、芸能界きってのゲーマー有吉弘行を中心に、アンガールズ田中卓志、タカアンドトシのレギュラー陣、そして女性タレントとともに、芸能人宅を訪れたりして、ゲームをみんなで楽しむバラエティー色の強いeスポーツ番組だ。話してくれたのは、「有吉ぃぃeeeee!」の平山大吾プロデューサーだ。

「当時はeスポーツという言葉こそ広まっていましたが、まだ『eスポーツなんてスポーツではない』という意見が主流だったように思います。そこでeスポーツをしっかりとブランディングすること、そしてeスポーツを文化にすることをコンセプトに番組を立ち上げました」

 日本テレビ、テレビ東京に続き、2019年11月にスタートしたのが、テレビ朝日の「ReAL eSports News」。毎週日曜日の深夜0時25分からの30分番組(関東地区での放送)で、山里亮太、並木万里菜(テレビ朝日アナウンサー)、平岩康佑(eスポーツキャスター)が出演し、eスポーツの旬な大会情報や最新のゲーム情報を届けつつ、スタジオ内でeスポーツタイトルを実際にプレーしてその楽しさを伝えている。「ReAL eSports News」宇喜多宏美プロデューサーが番組立ち上げの狙いを明かす。

「テレビ朝日が2019年に『RAGE(レイジ)』という国内最大級のeスポーツイベントに参画しました。テレビ局として若い世代にリーチしたいという思いがある中で、若い世代に圧倒的に人気のあるeスポーツに活路を見出したい、そして今後も発展していくだろうというところから番組もスタートさせました」

 いずれのテレビ局もeスポーツのムーブメントに乗る形でのスタートだが、番組の内容は三者三様でユニークだ。それぞれ番組スタートから2~3年が経っているが、各局とも歩みを止めることはなく、番組は右肩上がりで成長してきている。

 番組の放送周期や時間が少しずつ拡大しているのが、テレビ朝日の「ReAL eSports News」だ。

「最初は深夜の月1回30分番組からスタートしましたが、そこからeスポーツの盛り上がりの時流に乗る形で、週1回のミニ番組になりました。さらに昨年10月から週1回の30分番組に拡大しました。徐々にステップアップしているのかなと思います」(テレビ朝日 宇喜多氏)

 そして、番組とは違うチャネルで成長を見せているのが、テレビ東京の「有吉ぃぃeeeee!」だ。

「視聴率では当初からまずまずの数字を取っているのですが、YouTubeの登録者(約25万人)が増えています。YouTubeを作ったのは、編集しないゲーム画面をそのまま見たい人もいるだろうなと思ったのが理由です。番組が違う形で派生するいい例で、想定外のベクトルで広がりを見せていますね」(テレビ東京 平山氏)

「有吉ぃぃeeeee!」のYouTubeチャンネルでは、テレビで放送しきれなかった動画がすでに250本近くアップされており、なかには100万再生を超える動画も出てきている。テレビとネットの2方向で成長している好事例と言えるだろう。

 日本テレビは他局とは違い、チーム運営、大会事業と多角的に取り組んでいるが、eスポーツ市場参入から3年で黒字化を達成するなど、こちらも着実に成長している。

「番組、チーム、大会が互いに連携するように工夫をして収益構造を作り上げた、まさにサステナブルな形での黒字となります。出た利益を再投資して成長を加速することもできています。『eGG』はチーム事業、大会事業と連動して、これらの事業をビジネスとして大きくするために存在している側面もあります。だから視聴率を気にしてやっているわけではないんですが、同時間帯の視聴率シェアでは一番を取っている日が多いですね」(日本テレビ 小林氏)
 
 この日本テレビのeスポーツ市場への参入の形とは少し異なるが、テレビ朝日は「RAGE」、テレビ東京は「STAGE:0(ステージゼロ)」という大規模なeスポーツ大会の運営に関わり、特番を放送しながら存在感を見せている。

 このようにテレビ局とスポーツ大会のつながりはリアルスポーツでは珍しいことではない。日本テレビが箱根駅伝や全国高校サッカー選手権大会など、テレビ朝日が世界水泳や全米・全英ゴルフ、全国高等学校野球選手権大会など、テレビ東京が世界卓球などを放送し、多くのファンを育ててきた。eスポーツも同じ流れで今後も広がりを見せていくのは間違いないだろう。

後編に続く>>