専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第297回 東京メトロの混雑解消キャンペーンのCMをご存じですか? 過去に一世を風靡した芸人が出演し、「ピークじゃないくらいがちょうどいい」と諭しています。 CMに出演しているのは…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第297回
東京メトロの混雑解消キャンペーンのCMをご存じですか?
過去に一世を風靡した芸人が出演し、「ピークじゃないくらいがちょうどいい」と諭しています。
CMに出演しているのは、ダンディ坂野、小島よしお、スギちゃんなど、今でも活躍している方々で、「全盛期はすごかったんだよ~」と言いつつ、充実度では「ピークをすぎた今が一番」という納得のさせ方をしています。
これは、ラッシュのピーク時を外して通勤してはどうですか、と言いたいのです。
この話をマクラにして、今度はゴルフのネタを振りましょう。
私は全盛期をすぎたアマチュアゴルファーを「オフピークゴルファー」と命名しました。つまり、「腕前のピークをすぎた今が、ゴルフを達観して見られるから、いちばん楽しい」という考えです。
アマチュアゴルファーの平均スコアは、常に右肩上がりで伸びるのではなく、浮き沈みがある場合が多いです。しかも、個人のラウンド回数による差が激しいので、一概に年齢で表わすのは難しいです。
一般的には、アマチュアゴルファーの全盛期は50代。60代を迎えると、飛距離も落ちてきて退行期に向かうとされています。
ただ、ゴルフは飛距離を競うゲームではないので、若者がティーショットでアドバンテージを取ったところで、上がってみると、オジさんに逆転されている――このどんでん返しが痛快と言えば、痛快なんですよね。
そんなことも含めて、今回は「オフピークゴルファー」について考察していきたいと思います。まずは、先にも触れたこの話から。
(1)アマチュアのピークは?
アマチュアゴルファーのピークは、先述したように基本的にはラウンド頻度によります。才能やセンスも大事ですが、コンペに出る程度のゴルフなら、手間暇かけた者のほうが上達します。
要するに、頻繁にラウンドすれば、それだけうまくなる、ということ。それにプラスして、練習量を増やして、定期的にレッスンを受ければ、効率よくゴルフを覚え、平均80台でラウンドするのは可能でしょう。
個人的には、約20年前がピークでした。ベストスコア75が出たのもその頃だし、ここ10数年、70台は出ていませんもの。ハーフで30台が勢いで出ることはありますが、1ラウンド好調を維持するのは難しく、後半崩れるパターンがほとんどです。
(2)オフピークの実情
一度、自分なりの"てっぺん"を極めてしまえば......といっても、すごく小さい山ですが、80台の出し方を知ることとなります。
例えば「この短いサービスミドルはパーか、悪くてもボギーを取る」とか、「このコースの4つのショートホールは全体的に距離が短いから、2つはパーを拾いたい」といった具合に、自分なりにスコアメイクの設計図を描くことができます。
ただ"オフピーク"を迎えると、設計図どおりにことが運ばないのが、たまに傷。その理由は、頭の中では全盛期のショットをイメージしてしまい、実際にはそこまでの技術&体力を持ち合わせていない、ということです。
よく言うでしょ。「昔は4番アイアンで180ヤード飛んだ」とかね。そもそも今は、4番アイアンを使う人こそ、珍しいんですけど......。
(3)オフピークの攻め方
歳を取ると、筋肉が衰え、現場感覚も鈍るので、確実なショットを心がけたいです。例えば、110ヤードをピッチングでフルショットするよりは、9番や8番アイアンで軽く打って乗せる、という技をやるのです。
もちろん、ピッチングのフルショットが決まった時は、ピン近くにボールが寄っていくかもしれませんが、オフピークゴルファーはその確率が低いです。だったら、とにかくグリーンに乗せておけ、というショットをしたほうがいいのです。
オフピークゴルファーは、衰えたパワーに頼ることなく、なるべくショートゲームでスコアメイクする。そのほうがエネルギーロスをしなくて済みますし、あまり疲れませんよ。
(4)ゴルフの浮き沈み
アマチュアゴルファーは、ゴルフを始めてから2~5年ぐらいで100切りを達成します。そこで延々と100を切れないと、リタイヤする確率が非常に高くなります。
まずは100切り達成。さすれば、どこに連れて行かれても恥ずかしくありません。誰とでもあまり迷惑をかけずにラウンドできるし、「この人はゴルフが好きな人」として周りから認められます。
そこから10年、ゴルフを始めて15年~20年目ぐらいが全盛期じゃないですか。あとは"マンネリ"という言葉が重くのしかかってきます。何回やっても80台が出ないとか。人それぞれレベルが違うので、うまい人だと「いまだ72を切ったことがない」という高度な悩みとなります。
こうした場合、うまい人の悩みのほうが深刻です。なまじっかプライドがあり、仲間内で一目置かれる存在であれば、なおさらです。
それでもし、スランプにでもなったら目も当てられません。だって、もし下手な人のほうがスクラッチで勝ったら、その当事者を含めて、周囲はどう対応していいか......。慰めたりしたら、ますます不機嫌になるだろうし......。
逆に、しょっちゅう100を叩いている人は"大叩きにも強い"って、褒め言葉になっていませんが、叩いたところで立ち直りが早いです。うまい人に比べて、周囲もそこまで気を遣うことはありません。
とにかく、頂点を極めると、落ちた時に何かと面倒くさいのは確かです。
(5)今後のオフピーク人生
プロゴルファーは、50歳からシニアツアーに参加できます。レギュラーツアーに比べてやや距離の短いコースで、往年のスターがしのぎを削り、40代を迎えて低迷していたプロの復活の場として、最近は活況を呈しています。
アマチュアの場合、50歳になってもシニア競技に出られませんが、60~65歳ぐらいになると、各倶楽部のシニア競技に参加できます。そこを目指すのも悪くないでしょう。
さらに70歳あたりから、グランドシニア競技を設定しているコースもあり、オフピークになっても、まだまだ現役でがんばれます。
ゴルフは腕前を上げることも大事ですが、どれだけ長く楽しめるかということこそ、重要な気がします。illustration by Hattori Motonobu
そういう意味では、ゴルフは息が長く、まさに生涯スポーツと言えるでしょう。
結局のところ、ゴルフの"オフピーク"というのは自らが自覚した時点、そこからが"オフピーク"になるのではないでしょうか。長い人生、仕事も、趣味も、フルスロットルで飛ばし続けることは不可能ですからね。
ともあれ、30代、40代、50代では付き合い程度のゴルフで、60歳になって定年を迎えてから一気に目覚めて、トップアマになった人もいます。
反対に、学生時代にゴルフ部で自らの全盛時代を極め、その後はただのアベレージゴルファーになってしまった人もいます。
いずれにせよ、腕前は二の次。いかにゴルフを楽しめるか。それが、ものすごく重要な気がしますね。