女子ツアー2021年注目プレーヤー10名の「武器」(前編)2021年の初戦となるダイキンオーキッドレディスから、日本女子ツアー2020-2021シーズンが再スタートを切った。コロナ禍にあって、無観客で開催されるトーナメントがまだまだ多いもの…

女子ツアー2021年
注目プレーヤー10名の「武器」(前編)

2021年の初戦となるダイキンオーキッドレディスから、日本女子ツアー2020-2021シーズンが再スタートを切った。コロナ禍にあって、無観客で開催されるトーナメントがまだまだ多いものの、今年は中止になる試合は少なく、これからほぼ毎週、精鋭集う女子プロたちの白熱した戦いが見られそうだ。そこで、今年注目の選手10名の「武器」「凄さ」について、森口祐子プロに解説してもらった――。




原英莉花(22歳)
はら・えりか/1999年2月15日生まれ。神奈川県出身。身長173㎝。血液型O。ツアー優勝3回。2020-2021シーズン賞金ランキング4位(獲得賞金7140万6208円)※3月17日現在、以下同

 ルックスやスタイルのよさで注目を集める原選手ですが、体育会系の明るさと礼儀正しさを備えた"真正アスリート"です。男女問わず、若い人からも人気を得ていますが、企業のトップの方々と話していても、彼女の放つ前向きさや爽やかさは好感を持って受け入れられていることがうかがえます。

 恵まれた体格と長い腕を生かしたしなやかなスイングで、ツアーでも屈指のロングヒッターです。その長い腕の肘から先の前腕部分で、インパクトからフォローにかけてヘッドを長く真っ直ぐに押しています。この巧みなフェースコントロールが、飛距離と安定性をもたらしているのです。

 国内メジャーを2つ獲った今、さらに上を目指すには、4日間を通した安定性と、フェアウェーキープ率を上げることが課題になると思います。あと、パットも。ハマればポンポンと入る力はあるのですが、彼女としては30パットを切るラウンドをもう少し多くしたいのではないでしょうか。




古江彩佳(20歳)
ふるえ・あやか/2000年5月27日生まれ。兵庫県出身。身長153㎝。血液型O。ツアー優勝3回。2020-2021シーズン賞金ランキング2位(獲得賞金9173万992円)

 古江選手の武器は、最善のルートを見つけるマネジメント能力と、そのルートに運ぶことができるショットの正確性です。そして、フェアウェーを常に笑顔で歩く姿は、彼女がいかに自己コントロール能力に優れているかを表わしています。そうやって、絶えず冷静にプレーし、自分にとっての最善のルートを選んでいくわけです。

 ショットの正確性は、スイングとグリップからもよくわかります。スイング的にはレベルなスイングプレーンで、インパクトの際にフェースでボール押しながら乗せる打ち方ができています。練習では"直ドラ"を取り入れているということですから、やはりレベルブローの打ち方を意識しているのでしょう。

 アイアンのグリップエンドを余して握ることでも、ショットの精度を高めています。少しでも飛距離を出したいゴルファーにとって、クラブを短く握ることはかなり自己制御のいること。それをやり通せることが、彼女の強みであり、正確なマネジメント能力につながっていると思います。




笹生優花(19歳)
さそう・ゆうか/2001年6月20日生まれ。東京都出身。身長166㎝。血液型B。ツアー優勝2回。2020-2021シーズン賞金ランキング1位(獲得賞金9497万1170円)

 笹生選手のゴルフからは「勝ちは狙っている。でも、小さいゴルフはしない」という姿勢が見て取れます。初優勝を飾った昨年のNEC軽井沢72では、最終日の16番パー5のプレーが圧巻でした。左ドッグレッグのホールで、視界に入る巨木を物ともせず、左コーナーを狙って矢のようなティーショットを放ち、難なくイーグルを奪いました。

 また、今年のダイキンオーキッドレディスでは、2日目の18番パー5で2オンを狙った球がバンカーのアゴ近くにつかまった際、3打目でパターを使って後方に戻すという攻め方を披露して周囲を驚かせました。ポテンシャルが高いから攻め方のバリエーションが多く、それが見るものを惹きつけ、ワクワクさせてくれます。

 力強さとしなやかさを兼ね備えたきれいなスイングで、そこから繰り出される飛距離もさることながら、アイアンショットのキレ味も相当なもの。弾道の強さやグリーン上でのボールの止まり方は、男子プロ並みのものがあります。

 昨年優勝した2試合は、ともにフェアウェーは洋芝でした。それを思うと、彼女はやはりアメリカツアー向きなのだろうな、と。その将来には期待が膨らみます。




小祝さくら(22歳)
こいわい・さくら/1998年4月15日生まれ。北海道出身。身長158㎝。血液型A。ツアー優勝3回。2020-2021シーズン賞金ランキング3位(獲得賞金8514万2208円)

 今年初戦のダイキンオーキッドレディスでは、小祝選手の我慢強さが優勝を引き寄せたと言ってもいいでしょう。最終日は雨の中、1番ホールで3パットのボギーを叩いてトップとの差は3打差に開きました。しかし、前半は周囲も伸ばし切れず、彼女もその後は4番でひとつ戻してパープレーでしのぎます。そうして、得意とするインコースまで勝負を持ち越せたことが、勝利につながりました。

 初日には3回バンカーにつかまり、その3回ともパーをセーブしているところも、彼女の我慢強さやしぶとさがうかがえました。我慢強く戦えるということは、裏を返せば、ウィークポイントがないということでもあります。

 プレースタイルは淡々としていてマイペース。"小祝さくらワールド"を醸し出しています。そんな小祝選手の持つ資質こそ、ゴルフという競技に最も向いているのではないかと思っています。

 辻村明志コーチのもと、上田桃子選手のような強い気持ちを持つ先輩たちとしのぎを削りながら、自分らしさを見失わないところにも芯の強さを感じます。「賞金女王を目指す」と明言する彼女にとって、今年は幸先のいいスタートが切れたのではないでしょうか。




渋野日向子(22歳)
しぶの・ひなこ/1998年11月15日生まれ。岡山県出身。身長167㎝。血液型AB。ツアー優勝4回(海外1勝)。2020-2021シーズン賞金ランキング33位(獲得賞金1864万5600円)

 一昨年の渋野選手の全英女子オープン優勝は、現地で「シンデレラストーリー」と報じられたとおり、"無欲の勝利"だったという見方ができます。しかし昨年の全米女子オープン(4位)では、渋野選手は無欲ではなかったと思います。

 例えがいいかどうかわかりませんが、闘牛が赤色の布に向かって邁進するように、狙ったピンに向かってショットを刺していきました。成績が振るわず苦しいシーズンを送っていましたが、USGA(全米ゴルフ協会)が仕掛けるリスクの高いピン位置に対して、逃げることなく打っていったのです。

 こうした攻め方をするため、渋野選手はグリーンを外した時に備えて、アプローチのバリエーションを増やしてきたと言います。つまり、ピンを狙って打っていったのは、無欲ではなく、強い意志を持っていた証拠です。

 ただ、ピンを狙っていく攻め方は、どこかで壁にぶち当たることになると思います。それでも今は、その攻め方にブレーキをかける必要はないでしょう。

 全英女子オープンを制した際も、最終日にグリーン右に池がある12番(パー4)ホールで、迷わずドライバーを握って果敢に1オンを狙っていきました。世界中に衝撃を与えたあの一打。それが優勝に結びついて、今の渋野選手の攻め方があるのですから、そこは貫いていってほしいと思います。