「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月16~29日/ハードコート)の男子シングルス決勝で、第17シードのロジャー・フェデラー(スイス)が第9シードのラファエル・ナダル(スペイン)を6-4 3-6 6-1 3-6…

 「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月16~29日/ハードコート)の男子シングルス決勝で、第17シードのロジャー・フェデラー(スイス)が第9シードのラファエル・ナダル(スペイン)を6-4 3-6 6-1 3-6 6-3で下して7年ぶり5度目の優勝を果たした。

 フェデラーは18番目のグランドスラム・タイトルを勝ち取り、彼自身と全豪オープン決勝の5セットマッチで彼が倒した男、ナダルとの間の距離を幾分広げた。

 男子シングルス決勝でフェデラーは5セット目の出だしに1ブレークを許し、ピンチに立たされていた。ネットの向こうには、彼の天敵――彼がもう10年もの間グランドスラム大会で倒していなかった左利きのスペイン人、ナダルがいた。

 35歳のフェデラーは故障した左膝を回復させるため6ヵ月のオフをとったあと、ここ全豪で初めてツアーレベルの大会に戻ったところだった。彼はまた、2012年ウィンブルドン以来、グランドスラム大会で優勝していなかった。ナダルもまた故障から戻ったところだったが、どうしたことかふたりはテニスを超越した復活の全豪オープンで、伝統のロジャー対ラファのライバル関係を蘇生させたのである。

 その瞬間、18番目のグランドスラム・タイトルはフェデラーの考えの中には浮かんでいなかった。選手とプレーせず、ボールとプレーしろと彼は自分に言い聞かせた。サーブを攻撃しろ、と。

 この精神でフェデラーはブレークバックし、10ポイントを連続で獲って勢いをつかんだ。そしてそれがその日曜の夜、彼を勝利へと推し進める助けとなったのだ。この5度目の全豪タイトルは全時代を通してのグランドスラム優勝回数のリストにおいてトップに立つフェデラーの、追随者とのタイトル数の差を4に広げることになった。ナダルは変わらずピート・サンプラス(アメリカ)とタイの14で、2位につけている。

「僕にとって重要なのはカムバックするということ、ふたたびラファと英雄伝的な試合をする、ということだけだった」とフェデラー。「グランドスラムで優勝していなかったほぼ5年のあとに、僕の歳でふたたびやってのけられるということ、それがすべてだ。僕が見ているのはそれだけだよ。グランドスラム優勝回数は心を割く最後のもの――正直言って、どうでもいいことだ」。

 この試合に先立ち、フェデラーはナダルと対戦した過去8度のグランドスラム決勝のうち6試合で敗れており、キャリア全体の対戦成績では11勝23敗だった。彼がグランドスラム決勝で最後にナダルに勝ったのは、2007年ウィンブルドンに遡る。

「ナダルに対してプレーするのは、僕にとって変わらず究極のチャレンジであり続けている」とフェデラー。「本当に長いこと、グランドスラム決勝で彼を倒していなかったから、それゆえいっそうこの勝利は美しい」。

 勝利のあとのフェデラーの表情、その笑み、叫び、涙は、それがいかに特別な勝利であるかを物語っていた。

「過去何年も彼は僕を苦しめてきたから、この勝利は僕にとって本当に大きな意味を持つ」

「大きな勝利には大きな祝いを」とフェデラーは言った。「僕らは今夜、ロックスターみたいにパーティーをするよ」。

 2000年に初めてプレーし、2004年のタイトルで世界ナンバーワンとしての長い覇権をスタートさせた場所であるメルボルンで勝ったことにより、フェデラーは1972年のケン・ローズウォール(オーストラリア)に次いで年齢の高いグランドスラム大会優勝者となった。

 フェデラーは2010年にここでタイトルを勝ち獲って以来、オーストラリアで4度準決勝で敗れていた。また2012年に最後のグランドスラム大会優勝を遂げて以来、3度決勝で敗れていた。彼は2011年全仏で敗れて以来、ナダルとグランドスラム大会決勝で対戦していなかった。

 ナダルは1セットダウンから2度挽回し、第5セットではフェデラーの最初のサーブをブレークしてリードを奪ったが、そのリードを守って4つのグランドスラム大会のすべてで最低2回優勝した男になることはできなかった。反対にフェデラーはオープン化以降の時代で3つのグランドスラム大会で最低5度優勝した初の男子選手となった(ウィンブルドン7回、全米5回、全豪5回、全仏1回)。

「この試合の重大さが、特異な感触を与えている。僕はこの勝利をほかのどの優勝とも比べることができない。たぶん、09年に全仏優勝を例外に」とフェデラー。「僕は全仏のタイトルをずっと待っていた。トライし、戦った。何度もトライし、失敗した。そしてついに、やってのけたんだ。この勝利もそれに似た感じがする」。

 3ヵ月前、フェデラーとナダルはナダルの故郷マヨルカで行われたナダルのテニスアカデミー開校のイベントの場で、自分たちは果たしてふたたびグランドスラム大会で競い合うことができるのかいぶかっていたのだ。ところがご覧のとおり、シーズン最初のグランドスラム大会で10年前にテニス界を支配したふたりの伝統のライバル関係が再興されたのだから、運命とは奇妙なものだ。

 試合の波が双方の側に交互に行き来した4セットのあと、第5セットはこのふたりの戦いにつきものの緊迫感とドラマにあふれていた。

 フェデラーは右腿の治療のためメディカルタイムアウトをとり、最終セットの最初のサービスゲームをブレークされた。しかし彼は巻き返し、アグレッシブなプレーでナダルをプレッシャー下においた。ナダルは第8ゲームで3つのブレークポイント凌いだが、フェデラーが26本続いたこの試合最長のラリーをダウンザライのフォアのウイナーで制したときに、ふたたび流れを失ってしまった。

 フェデラーは勝負を分けるブレークを果たして5-3とリードするが、ナダルは最後のポイントまでライバルにハードワークを強いた。

 フェデラーはサーブをキープすればゲームセットという第9ゲームで2度ブレークポイントを凌いだあと、デュースからダブルフォールトのコールを受けた。しかし彼はセカンドサーブの判定にチャレンジし、コールは覆される。

 そして2度目のマッチポイントでフォアクロスのウイナーを叩きこんだあとナダルがコールにチャレンジしたために、フェデラーの祝いのジェスチャーは遅れることになった。

 フェデラーはリプレーを見つめ、映像が彼の最後のショットがオンラインだったことを見せた瞬間に喜びに跳び上がった。全豪オープンでの彼の100試合目にふさわしい、完璧なフィニッシュだった。

「おめでとうロジャー。ああも長い期間ツアーから離れていたあとにこんな風にプレーするなんて、本当に驚くべきだ。これを実現するため、ハードワークを積んでいたに違いない」とナダルは言った。

「この2週間、僕は大いに戦った」とナダルは言い添えた。「今日、ロジャーはたぶん僕よりほんの少し余計に勝利に値した」。

 そしてフェデラーは、同じ敬意をナダルに返した。

「(故障の具合で)ここに来られるかわからなかったのだが、ご覧のとおり僕はここにいる。僕らはやってのけた」

 フェデラーは年間グランドスラムを2度達成したテニス界の偉人、ロッド・レーバー(オーストラリア)からトロフィを受け取ったあとに、こう言った。

「テニスは引き分けというものがない、厳しいスポーツだ。でももしあったなら、僕は今夜よろこんで、それをラファと分け合っただろう」

 女子決勝で35歳のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が姉のビーナスを倒して23度目のグランドスラム・タイトルを獲得したあと、このフェデラーの優勝は男女シングルス決勝進出者4人全員が30歳以上という『三十路ための驚くべき週末』を、完璧な形で締めくくるものだった。(C)AP