2021シーズンF1注目ポイント@後編 開幕戦のバーレーンGPまで、あと約2週間。待ちに待ったF1シーズンが幕を開ける。新型コロナウイルスの感染拡大によってさまざまな変更を余儀なくされた1年を経て、今年はどんなシーズンになるのだろうか。注目…

2021シーズンF1注目ポイント@後編

 開幕戦のバーレーンGPまで、あと約2週間。待ちに待ったF1シーズンが幕を開ける。新型コロナウイルスの感染拡大によってさまざまな変更を余儀なくされた1年を経て、今年はどんなシーズンになるのだろうか。注目すべきポイントをピックアップする。

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今年こそ鈴鹿サーキットでF1のバトルが見たい

(7)熾烈な中団グループ争い。アルファタウリ・ホンダはどの位置?

 昨年は中団グループが極めて僅差の戦いになり、レースごとに勢力図が塗り変えられる大混戦となった。

 最終的にはマクラーレンが中団最上位のランキング3位を獲得したが、マシンパッケージとしてはレーシングポイントのほうが上で、サーキットによってはルノーの後塵も拝していた。それを戦略やドライバーの安定感などチームの総合力でカバーし、常にポイントを稼いで中団トップの座を射止めた。

 レギュレーションとマシンが大きく変わっていないだけに、この大混戦は今シーズンも続くだろう。

 マクラーレンは今年、メルセデスAMG製パワーユニットにスイッチ。信頼性が向上するとともに、決勝でのパフォーマンスが強化されると見られている。

 レーシングポイント(昨年ランキング4位)はマシンコンセプトを大きく変えた昨年、その習熟にやや手間取った。だが、アストンマーティンとしての参戦を開始する今季はコンセプト2年目となり、シーズン開幕から本来の速さを発揮してくるだろう。4度の王者セバスチャン・ベッテルがもたらす経験も、間違いなくチームを大きく成長させてくれるはずだ。

 ルノー(昨年5位)改めアルピーヌは、2021年規定のリアエンドに対して他チームとは異なるアプローチを採っており、これが当たれば大きい。2度の王者フェルナンド・アロンソの加入もあって、こちらもチーム全体としてのステップアップを期している。

 アルファタウリ(昨年7位)は昨年1勝(第8戦イタリアGP)を挙げたとはいえ、全体的なパフォーマンスは上記3チームにやや後れを取っていた。ノーズのスリム化によって、それをどこまで挽回しているかがカギになりそうだ。

 そして昨年、本来は3強の一角であるはずのフェラーリが大きくつまずき、まさかのランキング6位に沈んだ。しかし今季、その空力的な問題点は解消しているという。トップ争い復帰は難しいとしても、フェラーリの実力からすれば中団グループに飲み込まれることはないと思いたい。

 いずれにしても、昨年レーシングポイントとアルファタウリが勝利を挙げ、実に13人ものドライバーが表彰台に上ったことからもわかるように、トップと中団グループの差もこれまでにないほど小さくなっている。そして今季は、その傾向がさらに強まるだろう。

 メルセデスAMGとレッドブル・ホンダの2強にワンミスがあれば、中団グループにも表彰台のチャンスが巡ってくる。今年もそんなシーズンが続きそうだ。

(8)日本GPは無事に開催されるのか?

 現時点、開幕戦バーレーンGPは国を挙げての特別体制でF1関係者の出入国と新型コロナウイルス対策を管理し、PCR検査や希望者にはワクチンの接種まで行なってグランプリと開幕前テストを実現させる構えだ。

 それ以外のフライアウェイ戦はひとまずシーズン後半以降に順延となり、4月に昨年の開催実績があるイモラ(エミリア・ロマーニャGP)、ポルティマオ(ポルトガルGP)で無観客での開催を予定している。出入国の制限がないヨーロッパ内の国で、外界と隔離し、F1関係者のチームごとの隔離も行なうバブル方式であれば、レースを開催することは可能だからだ。

 これから感染状況に大きな変化がなければ、ワクチン接種が進むヨーロッパ各国での開催は増えていくだろう。

 オーストラリアのように、完全に外国人の入国を制限している国での開催は難しい。現時点では、日本もこれに近い状態にある。

 感染状況の改善が見られなかった場合、バーレーンのようにF1関係者のために特別扱いでの出入国管理ができないのであれば、確実に開催できるという保証が得られないため、F1側としても一定のタイミングで開催の中止または延期を決断しなければならなくなるだろう。

 現在のところ2021年のF1カレンダーには、第17戦に日本GPが組まれている。決勝開催日は10月10日で、場所は鈴鹿サーキットだ。

 すべては今後の感染状況の変化と、夏に開催が予定されている東京オリンピック次第。オリンピックが開催されれば、海外選手団の入国に関するノウハウも得られることによって、F1の日本GP開催も可能になるかもしれない。いずれにしても、まだまだ状況を見守る必要がありそうだ。

(9)F2、F3にも逸材。次のF1ドライバーは誰だ?

 今季はアルファタウリ・ホンダの角田裕毅(つのだ・ゆうき/20歳)を含め、3人のルーキーがF1へとステップアップを果たすが、すでに関係者の視線はFIA F2やFIA F3を走るF1ドライバー候補生にも向けられている。そのなかでも有力視されているのは、やはりF1参戦メーカーやチームの育成プログラムに所属しているドライバーたちだ。

 今のF1は金だけでシートを買える時代ではなく、FIA F2で結果を残さなければスーパーライセンスは取得できない。ただ、速さがあれば育成プログラムへの加入が果たせ、F1のシートが一気に近づく側面もある。フェラーリのシャルル・ルクレール(23歳)やウイリアムズのジョージ・ラッセル(23歳)、そして角田らはまさにその好例だ。

 2021年のFIA F2に参戦するなかで、以下のドライバーたちはF1チームと深いつながりを持っている。

 ロバート・シュワルツマン(ロシア/21歳)とマーカス・アームストロング(ニュージーランド/20歳)はFDA(フェラーリ)所属。ユーリ・ヴィップス(エストニア/20歳)とリアム・ローソン(ニュージーランド/19歳)はレッドブルジュニアチーム所属。周冠宇(チョウ・グアンユー/中国/21歳)、クリスチャン・ルンガー(デンマーク/19歳)、オスカー・ピアストリ(オーストラリア/19歳)はアルピーヌ所属。ダン・ティクタム(イギリス/21歳)とロイ・ニッサニー(イスラエル/26歳)はウイリアムズアカデミー所属。テオ・プルシエ(フランス/17歳)はザウバー所属。

 このなかでもスーパーライセンスポイントでは、FIA F3王者のシュワルツマンとピアストリ、そしてこのオフに行なわれたF3アジア王者となった周が一歩リードしている。

 日本からは佐藤万璃音(まりの/21歳)がFIA F2にフル参戦2年目を迎える。トライデントという下位チームだけに苦戦は予想されるが、チームの実力以上の光る速さを見せれば、さらなる有力シートの獲得や昨年末のアブダビテストのようにF1テストドライブのチャンスに恵まれることもある。

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 そしてFIA F3には、HFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)とレッドブルジュニア所属の岩佐歩夢(19歳)が参戦する。FIA F3は31台が走る大激戦区だが、ここで結果を残して勝ち上がったドライバーたちはFIA F2でも好走を見せている。昨年フランスF4で王座を獲得し、このオフにF3アジアで学習した腕を存分に発揮してほしい。

 FIA F3でシーズン序盤は苦戦を強いられるだろう。それでも、日本のFIA F4での戦いぶりを知る関係者は岩佐のことを角田以上の才能だと証言する。シーズン前半戦に苦戦しながらも後半戦に大きく成長し、わずか1年でFIA F3を卒業してF1まで駆け上がった角田のように、もしくはそれ以上の成長を岩佐が見せてくれるか注目したい。