オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)は第13日、女子シングルスの決勝でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)とビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)による通算28回目の姉妹対決が行われ、妹の…

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)は第13日、女子シングルスの決勝でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)とビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)による通算28回目の姉妹対決が行われ、妹のセレナが6-4 6-4で勝利。グランドスラム23回目の優勝を遂げ、オープン化以降の最多記録を単独で樹立した。史上最多記録はオーストラリアのマーガレット・コートが持つ24勝で、そこに追いつき、追い抜くのもまた夢ではなくなってきた。

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 36歳のビーナスと35歳のセレナ。足して71歳はグランドスラムの決勝としては最高齢だ。どちらが勝っても最年長のグランドスラム・チャンピオンになるのは当然だった。その記録を持っているのは、昨年のウィンブルドンを34歳9ヵ月で制したセレナなのだから。

 昨年の全米オープン後、膝と肩の治療のため年内いっぱい休業したセレナは、過去に何度も復活劇を見せた全豪に力強く戻って来た。セットも落とさず決勝進出。姉のビーナスは、選手の多くが「速い」と言うコートサーフェスにもアドバンテージを得て勝ち上がってきた。

 グランドスラムの決勝に限れば2009年のウィンブルドン以来の姉妹対決は、最初の4ゲームはすべてブレークという序盤の展開になった。印象的だったのは、第3ゲームのデュースのあとビーナスのバックハンドがネットインし、方向転換をしようとして足を滑らせたセレナがその瞬間、悔しがってラケットを地面にぶつけたシーンだ。ラケットはほとんどまっぷたつに折れた。試合はまだ始まったばかりである。セレナの気迫がうかがえた。第7ゲームのブレークが鍵になり、第1セットはセレナが6-4でものにした。

 第2セットは第1セットと異なり、前半は両者キープで進んだ。第7ゲームで3度目のブレークポイントを生かしたセレナが、続くゲームはラブゲームでキープ。すべてファーストサービスを入れ、すべてサービス1本でポイントを仕留めた。

 「私たちは、ふたりともショットを決めにいくからミスが増えるのはしょうがない」とビーナスが言ったように、アンフォーストエラーも目立った試合だったが、この日一番のロングラリーがラストゲームに生まれた。セレナのサービング・フォー・ザ・マッチの15-15。セカンドサービスから始まったラリーは、ビーナスが長いリーチを生かしたアングルショットにダウン・ザ・ラインにとセレナを振り回し、計24打目のフォアハンドのクロスがラインの上に乗り、セレナのフォアハンドがネットにかかった。それが、ビーナスがこの日得た59ポイントのうちの最後のポイント、最後の反撃だった。

 マッチポイントはセレナの強烈なバックハンドのクロスをしのいだビーナスのショットが短くなり、セレナが渾身のフォアハンドでダウン・ザ・ラインを攻めると、ビーナスのバックハンドはフラフラと上がってサイドラインの外に落ちた。

 力が抜けたように尻もちをつき、意表をついたポーズで「23回目」の瞬間を祝ったセレナ。 「本当に長い間、追いかけてきた気がする」

 2014年の全米から翌年のウィンブルドンまで18、19、28、21回と偉大な記録に向かって順調に優勝を重ね、全米オープンでグラフと並ぶ22回と、年間グランドスラムを同時に達成するはずだったが、そこでまさかの躓きを見せた。バーンアウトすら囁かれたが、翌2016年は復帰し、ウィンブルドンで「22回目」を果たす。一方で昨年の全豪と全米は準優勝に終わり、その両方で優勝したアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に全米後にナンバーワンの座を奪われた。

 華々しい35歳の今は、何度も挫折しては這い上がってきた歴史の積み重ねだ。支えたのは家族席に座っていた面々だろう。しかし、それ以上のパワーの源はこの日ネットの向こうにいた。

 勝負が終わり、やさしい抱擁を交わした姉に語りかけるように言った。 「彼女がいなければ私は23回もの優勝なんてできなかった。私が今ここに立っているのはほかでもない彼女の存在があったから」 子供の頃から誰よりも手強いライバルであり、誰よりも自分を愛してくれた人と並んで掲げる23個目のトロフィーは格別に輝いていた。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)