昨年10月、ロジャー・フェデラー(スイス)は、ラファエル・ナダル(スペイン)の故郷マヨルカで、ナダルがつくった新しいテニスアカデミーの落成式に出席した。フェデラーは膝の手術からの回復を目指しているところで、一方のナダルも左手首に問題を抱…
昨年10月、ロジャー・フェデラー(スイス)は、ラファエル・ナダル(スペイン)の故郷マヨルカで、ナダルがつくった新しいテニスアカデミーの落成式に出席した。フェデラーは膝の手術からの回復を目指しているところで、一方のナダルも左手首に問題を抱え、ふたりともが故障中だった。どちらも、いつ自分たちがふたたびトップレベルに戻り、その先でグランドスラム大会でタイトルを目指して戦えるのかわからずにいた。
だが結果的にそれらの問題は、それほど時間をかけずにクリアできた。フェデラーは木曜日の「全豪オープン」(1月16~29日/オーストラリア・メルボルン/ハードコート)の準決勝でスタン・ワウリンカ(スイス)を倒し、2010年以来の全豪決勝進出を決めた。そしてナダルも、金曜日に行われるもうひとつの準決勝でグリゴール・ディミトロフ(ディミトロフ)を倒せば、そこにたどり着けるところまできたのだ。
「僕は片足で体を支えていて、彼は手首を故障していた。僕らはそこでジュニアたちと少しミニテニスをやったんだが、ふたりとも“これが今、僕らにできるベストだ”っていう感じだった」
35歳のフェデラーはマヨルカでナダルと過ごした時間を思い返し、こう言った。
「そのときの僕らは、ここにこうしていることになるとはまったく思ってもいなかった。もしかしたら、決勝でプレーする可能性がある、なんて」
彼らがここまで勝ち上がると予想した者もほとんどいなかったはずだ。
フェデラーは昨年の全豪オープンのあと、子供たちのために風呂に湯をためようとしているとき、はずみで膝をひねった。そのため彼の2016年シーズンは、その故障との付き合いで過ぎることになった。彼は手術をして素早くプレーに戻ったが、6月のウィンブルドン準決勝(相手はミロシュ・ラオニッチ)の試合中に転び、結局、残りのシーズンをリハビリに充てることに決めた。
第17シードという低いシードで今年の全豪に出場したフェデラーは、数ラウンドに勝つことしか期待していなかったという。特に第10シードのトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)、第5シードの錦織圭(日清食品)、第4シードのワウリンカ(スイス)、第1シードのアンディ・マレー(イギリス)らと対戦する可能性のあるドローの組み合わせを見たときには……。
ところがフェデラーは、ベルディヒ、錦織を破り、マレーはミーシャ・ズベレフ(ドイツ)に番狂わせを食らって姿を消した。
そして準決勝の対ワウリンカ戦では、観客に後押しされ、フェデラーは運命を分けた第5セットで2つのブレークポイントをしのぎ、第6ゲームでブレークを果たして7-5 6-3 1-6 4-6 6-3でワウリンカを倒した。彼はキャリア29度目のグランドスラム決勝にたどり着いたのだ。
よろよろ歩いていた35歳のベテランプレーヤー、フェデラーが、今や18度目のグランドスラム・タイトル獲得のチャンスを手に入れたのである。
フェデラーはエネルギーをしぼり取られるような長い試合にも勝った。錦織、そしてワウリンカに対する勝利。彼は2009年全仏以来初めて、同じ大会で2つの5セットマッチに勝ったことにもなる。
「僕はここオーストラリアですべてを出し尽くすよ。ここから5ヵ月、歩けなくなったとしても構わないさ」
故障による6ヵ月のオフから戻ったフェデラーは今、完全に健康を取り戻している。あの休養期間は、ふたたびトッププレーヤーたちと競い合う準備をするためのポジティブなステップだったと受け止めている。
「いま気づいたのは、気分がよくないとき、あまりに多くの問題を抱えているときには、トップ10プレーヤーを倒すことはできないということなんだ」とフェデラーは言った。「彼らと競った試合はできるかもしれない。彼らのひとりには勝つかもしれない。でも連続で勝つということはできないんだよ」。
ナダルもそのことに気づいている。ナダルは昨年負った左手首の故障を完治させるため、長い休養期間をとっている。そして、このメルボルンで復活した。彼は今、以前より活力があるように見える。
ナダルがこれまでに獲得した「14」のグランドスラム・タイトルの最後は2014年全仏だが、それ以来、久しぶりにグランドスラムの準決勝に戻ってきた。
「もちろん、ここでラファと決勝をプレーするなんて“超現実的”な感じがする」とフェデラー。「僕らふたりにとって、この大会はすでに非常に特別なものになっていると思うよ」。(C)AP(テニスマガジン)