KO-D6人タッグ王者としてリングに上がる彰人には、もう1つの肩書きがある。それはCyberFight取締役副社長。裏方としても会社を支える彼の怒涛の1週間が始まる。3.9後楽園「まっする4東京公演」、3.12新宿「ALL OUT解散興行『…

KO-D6人タッグ王者としてリングに上がる彰人には、もう1つの肩書きがある。それはCyberFight取締役副社長。裏方としても会社を支える彼の怒涛の1週間が始まる。3.9後楽園「まっする4東京公演」、3.12新宿「ALL OUT解散興行『ALL OUT FINAL FIGHT』」、そして3.14後楽園大会「Day dream Believer 2021」でKO-D6人タッグの防衛戦。そんな多忙を極める彼の素顔に迫る。今回は前編。

 

--彰人選手がプロレスに興味を持ったキッカケを教えてください。
彰人:初めてテレビでプロレスを観たのは蝶野正洋vs大仁田厚の電流爆破マッチでした。蝶野選手といえば「黒のカリスマ」として活躍するレスラー。対して大仁田厚選手は蝶野選手とは真逆で泥臭い感じの「涙のカリスマ」。お互い、入場からカッコ良かった。
でも試合が始まると、そのカリスマ2人がリング上で四つん這いになり頭突きし合っていた。その姿があまりにも衝撃的でした。それで興味を持ち、新日本プロレスを見るようになりました。
しかしプロレスラーになろうと決めたキッカケをくれたのが男色ディーノさんです。

--それは、いつくらいの時期ですか?
彰人:大学の時ですね。それまで観ていた新日本プロレスが総合格闘技路線に進んで、プロレスから距離を置きました。その後、大学で就活していたタイミングで、男色さんの試合をYouTubeで観ました。
それまで見ていたのが、「組んで投げて極めて」のプロレスでした。それが初めて男色さんの試合を観た時、「こんなに自由に試合していいんだ」とプロレスの幅を感じました。男色さんって素晴らしいクリエイターなんですよ。もちろん、男色さんのようになれるわけはないし、なりたくもないんですけど(苦笑)。
就職活動中、自分の本当にやりたいことを我慢してエントリシートに記入するのに抵抗を感じていました。ある時、自分を偽るのが苦しくなり、「それなら1度レスラーを目指してみよう」と思い、就活を辞めました。

--それは大きな決断ですね。
彰人:それで兄弟に卒業後プロレスをしたいと話したら「知り合いにプロレス団体を運営している人がいるよ」と言われ、地元名古屋のスポルティーバエンターテイメントの代表に会いました。

--デビュー戦が、プロレスリングZERO1の大谷晋二郎選手。新人選手には大物過ぎますね(苦笑)
彰人:試合が始まり大谷さんに張り手されて記憶が飛びました。記憶が戻った時、試合が終わってました(苦笑)。
本当に覚えてなくて、気がついたら僕が正座をして大谷さんのマイクを聞いていました。僕は大号泣していましたね。その後、また記憶がなくて、次の記憶は大谷さんの控室で泣いていました(笑)。とにかく大谷さんの凄さに終始圧倒されましたね。

--デビュー戦で、いきなりそんな試合を経験したらハートが強くなりますね。
彰人:デビュー戦の試合が、今までのプロレス人生の中で1番キツかったので、その後の試合は何とも思わなくなりました。

--彰人選手の試合で印象に残っているのが、2019年7月大田区で朱崇花選手と行った蛍光灯IPPONデスマッチです。
彰人:アイデアは僕の中にあったものですが、朱崇花選手の身体能力があってこそ出来た試合だと思います。大喜利みたいなもので、「蛍光灯を割らずに、いかにスリリングに魅せるか」がテーマでした。

--大日本プロレス(以下 大日本)の蛍光灯デスマッチと違い、ルールが「蛍光灯を割ったら試合が終わる」に驚きました。割れないようにしなければ行けない…観ていてドキドキしっぱなしでした。
彰人:プロレスは相手との戦いだけではなく、お客さんとの勝負でもあります。試合の中で「起承転結」を考えながら、僕は戦っています。蛍光灯は無機物で、どのタイミングで割れるか分からない。その緊張感はすごかったですね。
もしかすると蛍光灯が試合開始1分で割れてしまう可能性もある。だからスリリングで普段の試合以上にアドレナリンが出ました。

--初めてプロレス観戦した友達が「蛍光灯IPPONデスマッチが1番良かった」と興奮していました。
彰人:それは嬉しい!元々、木高イサミ選手とプロレスの映像を観ながら話している時、「彰人、デスマッチやりたい?」と聞かれました。僕は「切り傷とか痛いし、デスマッチはイヤです」と(苦笑)。
その頃、デスマッチは刃物が出てきて、いろいろ出尽くしてしまった感じがしていました。僕はイサミさんに「大日本が始まった頃は蛍光灯1本が出てきただけで『うわっ』と驚いていた。だから1本の大事さってあるし、むしろ1本で出来ることってありますよね?それなら出来ますよ」と。
そこで2015年9月新木場、酒場プロレスで始めたのが最初ですね。デスマッチに対してのアンチテーゼではありませんが、「蛍光灯を使って、こういう見せ方もあるよ」という提案的な意味はありました。
蛍光灯IPPONデスマッチにはスリルがあって蛍光灯が割れることへの恐怖もある。もちろん僕はデスマッチをしたことがないので蛍光灯に対しての恐怖を持ちながら戦うわけです。

--通常のプロレスの面白さだけではなく、「蛍光灯が割れるかどうか」もドキドキしながら試合を観る。蛍光灯IPPONデスマッチは1試合で2倍楽しめました。
彰人:あの試合、控室に戻った時、みんなに拍手で迎えられました。そんなこと、あとにも先にもないですね。青木真也さんに、「あんなエクスタシーを感じる試合をしたら、他の試合をして物足りなくなるんじゃない?」と言われました(笑)。

--あの試合の後、戦っていて気持ちが高まった試合はありますか?
彰人:元々、リング上では冷静に戦う方なので、あそこまで高揚感を感じる試合はなかなかないですね。蛍光灯IPPONデスマッチは試合が終わっても、アドレナリンで手が震えていたので。

--今後、また蛍光灯IPPONデスマッチを行う予定はありますか?
彰人:2019年7月大田区の試合が良かったので、比べられてしまうと思うんですよ。だから「あの選手となら、大田区の試合を超えることができる」と思える選手が現れるまで、僕の口からは言いたくない。それは朱崇花選手にも失礼になると思います。

--「蛍光灯が割れない」という点に注目するのは、たくさんの蛍光灯が割れる蛍光灯デスマッチの真逆にあるプロレスです。
彰人:DDTならではのデスマッチだと思います。「DDTらしさ」や「DDTでしか出来ないこと」というのを、僕は大事にしています。普通の蛍光灯デスマッチをDDTでやるのは違和感がある。だったら、「これをDDTに置き換えたらどうなるのか?」というところを意識しています。
そう言った意味で、DDTなりのデスマッチを形にしているのが、後輩の勝俣瞬馬やMAOだと思います。先日の2.28後楽園大会で、2人はDDT EXTREME級王座をかけキッズルームデスマッチを行いました。これは他の団体の方では、なかなか発想しにくいと思います。
僕たちがやってきたことをDDTの若い後輩たちが受け継ぎ、「彼らなりのDDTの見せ方」をしてくれている。キチンと後輩は育っていると思いますね。

--彰人選手はDDTに所属する前、いろいろな団体のリングで活躍されていました。そんな中DDTの所属になったのは、どういった理由があるのですか?
彰人:誤解があるかも知れませんが、「控室の雰囲気が1番良かった」からです。自分にフィットしました。
プロレスをするために会場に来て準備をし、本番まで待機している場所が控室です。ほとんどの団体の選手は淡々と準備をして試合を行い、淡々と後片付けをして帰っていく。でもDDTの控室は和気あいあいとして明るい。全くプロレスに関係のない話もします。それが1番大きかったですね。
あとは男色ディーノさんと仕事がしたかった。プロレスラーになろうと決めたキッカケをくれたのが人なので。

--ところで先日の試合でも彰人選手のグラウンドテクニックに見入ってしまいました。そのテクニックは、いつくらいから学んだのですか?
彰人:名古屋にいた頃ですね。「どうやったらレスラーとして注目されるか?」というのを考えた時、「自分は飛び技が出来ない」「力が強いわけでもない」…では、どうしたらいいのか?そこで思いついたのが「一点集中攻撃をする若手はいない」ということでした。
全日本プロレスの青木篤志選手は腕攻めのスペシャリストのイメージがあった。武藤敬司さんもいますが、若い頃から足攻めのスペシャリストはいない。だったら極めてみよう、というのが始まりですね。当時のコーチと、お客さんに認識してもらうキャラクターは、とても大切だと話していました。
レスラーとして、僕は飛び技等が主流になった近代的なプロレスができない。だからお客さんには見えないかも知れないけど、昔から腕の取り方1つこだわり学んできました。今は、それは自分の長所だと思っています。

--お客さんの記憶に残るようにキャラクターって大切ですよね。ところでCyberFightで彰人選手は取締役副社長という立場です。例えば、普通の会社で中途採用の社員が、取締役副社長というのはなかなか難しいと思います。
彰人:それに関して高木社長が僕をどう評価してくれているのか分からないんですけど(苦笑)。飲食事業部のお金の管理やグッズの開発やBOYZのプロデュース等、振られることに関しては断らずに引き受けていました。受けたものに関して形にしてきた自負があります。そういうことを認めてくれたのかも知れないですね。

 

<後編に続く>

 

<インフォメーション>
彰人選手、怒涛の6日間!3.9後楽園ホール「まっする4東京公演」 3.12新木場1stRING「ALL OUT解散興行『ALL OUT FINAL FIGHT』」 3.14後楽園ホール「Day dream Believer 2021」でKO-D6人タッグの防衛戦を行います。詳細はDDTプロレスリング公式サイトをご確認下さい→https://www.ddtpro.com

また3.9後楽園ホール「まっする4東京公演」 3.14後楽園ホール「Day dream Believer 2021」は動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEで生配信されます。→https://www.ddtpro.com/universe

彰人 Twitter →https://twitter.com/akitonsgk

 

取材・文/大楽聡詞
写真提供/DDTプロレスリング