オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の女子シングルス準決勝で、世界2位のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)がミルヤナ・ルチッチ バローニ(クロアチア)を6-2 6-1で下し、決勝での…

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の女子シングルス準決勝で、世界2位のセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)がミルヤナ・ルチッチ バローニ(クロアチア)を6-2 6-1で下し、決勝での“ウイリアムズ姉妹対決”をセットアップした。今、彼女の行く手に立ちはだかるのは姉ビーナスのみである。

 6つの全豪タイトルを誇るセレナは、ルチッチ バローニをわずか50分で圧倒した。この試合の前に行われたもうひとつの準決勝では姉ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)が、やはりアメリカ人のココ・バンダウェイを6-7(3) 6-2 6-3で下していた。

 「彼女(ビーナス)は私にとってもっとも厳しい対戦相手よ。ビーナスほど私を倒した選手はほかにいない。私は決勝で何が起ころうと、私たちは勝ったという感じを覚えている」とセレナは言った。

 「彼女は多くの困難を乗り越えてきた。そして私も多くのことを乗り越えた。彼女がこうして活躍するのを目にできるというのは、本当に素晴らしいことよ。対戦を楽しみにしている。ウイリアムズのひとりが、この大会で優勝することになるんだから」

 36歳のビーナスは、2009年ウィンブルドン以来のグランドスラム決勝の舞台へ戻る。全豪では2003年以来のことだ。その年、ビーナスはメルボルンパークで起きた唯一のウイリアムズ姉妹対決の決勝で敗れた。それは当時「バトル・ロイヤル」と銘打たれた対決だ。

 ビーナスはバンダウェイに対して4度目のマッチポイントを決めて2時間26分の戦いに終止符を打ったあと、信じられないといった表情でラケットを空に投げ、それから腕を胸の前で交差させて喜びを表した。そして、観客がスタンディングオべーションを送る中、満面の笑みを浮かべ、上品にくるりと回転してみせた。

 ビーナスは2011年にシェーグレン症候群と診断されて以来、このエネルギーをしぼり取る病気を克服し、今や「最高」と呼べるテニスをプレーしている。

「皆に、それぞれの“光の中の瞬間”というものがある」とビーナス。「もしかしたら、私のそれはしばらくの間、去っていたかもしれない。でも今はそれを保ち続けたいわ。それ以外に私にはやることがないから。このままの流れで進め続けましょうよ」。

 34歳のルチッチ バローニに対する一方的な勝利のあと、セレナの喜びは抑制されたものとなった。

 ルチッチ バローニにとって、これは1999年ウィンブルドン以来のグランドスラム準決勝だった。今大会は多くのカムバック・ストーリーがあふれたが(例えば、6ヵ月の休養から戻ったフェデラーをはじめ、多くの復活劇があった)、中でも彼女がテニス以外のことで長く苦しみ続けた末にトップレベルへ戻ってきたことに対して皆が心を揺さぶられた。

 1998年にルチッチ バローニと対戦したことがあったセレナさえが、ルチッチ バローニの物語は「インスピレーション」だと言った。

 ルチッチ バローニは観客に手を振ってロッド・レーバー・アリーナをあとにする前に、携帯電話を取り出して自らの記念写真を撮った。

 セレナは姉ビーナスの試合をほとんど見ていなかったというが、試合に入る前にその結果は知っていたという。

 「言うまでもなく、私はビーナスを本当に誇りに思う。私の姉はインスピレーションの源よ」とセレナ。「彼女は基本的に私にとっての“世界”であり、私の“人生”なの。彼女は私にとって“すべて”なのよ。彼女のためにすごくうれしく思うわ。私たちふたりともが決勝に進んだということは、私たちにとって最大の夢の実現なのよ」。

 ビーナスはこれまでに7つのグランドスラム・タイトルを獲得しているが、2008年ウィンブルドン以来、優勝していない。前回のグランドスラム決勝から今回の決勝までの“時間的ギャップ”は、オープン化以降の時代でもっとも長いものである。

 ビーナスはまた、妹セレナと対決したグランドスラム決勝の8度のうち6度で敗れており、キャリアを通しての(ツアーレベルでの)対戦成績は11勝16敗で負け越している。

 決勝で勝つには何が必要かと聞かれたビーナスは、「率直に言って、私は今プレーしているようにプレーし続ける必要があるだけだと思うわ。悪いプレーはしていないから」と答えた。

 「今日、私はセットを落とした。それについてはうれしく思ってはいない。でも私の対戦相手は、あのセットを取るに値した。だから、次の2セットを取る以外に何ができるかしら?」

 そして妹セレナに対しては「(今日と)同じようにプレーするよう努めるわ」とビーナス。

 ビーナスは史上2番目に年齢の高い、女子のグランドスラム決勝進出者だ。彼女の前には、37歳と258日で1994年のウィンブルドン決勝に進んだマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)がいる。

 初めてのグランドスラム準決勝を戦った25歳のバンダウェイは、準決勝進出者の中で唯一30歳を超えていない選手だった。

 バンダウェイは4回戦で世界1位で昨年の全豪と全米の優勝者、アンジェリック・ケルバー(ドイツ)、準々決勝で昨年の全仏優勝者のガルビネ・ムグルッサ(スペイン)を連続で破り、そして準決勝でビーナスに6-7(3) 2-6 3-6で敗れたが、第1セットのタイブレークを奪った。

 しかしビーナスは今大会で初めてセットを落としたあとバンダウェイに対してプレッシャーをかけ返し、残りの2セットで4度バンダウェイのサービスを破って挽回することに成功した。

 大会のより早い段階でバンダウェイは、自分がより若い選手だった頃にウイリアムズ姉妹に憧れていたこと、一度ビーナスにサインを求めたことがあったことを明かしていた。ビーナスは長くキャリアを続けることのよいことのひとつは、ほかの選手たちに影響を与えられることだと言った。

 「まだ若く、子供だった頃、私が欲していたのはこのような大会でプレーするチャンスを得ることだけだった。でも実際にそこにたどり着き、そしてほかの選手たちにインスピレーションを与えるチャンスを手にするようになった」とバンダウェイ。「それは、ケーキの上の仕上げのチェリー(魅力的なものに、さらにいいものが加わること)以上のものよ。私が夢見ていた以上のものだった」。(C)AP(テニスマガジン)