高い素材を使えば“良質のラケット”を作れるわけではない<良質のテニスラケットを作るために、必要なものは何か?>それは、単価の高い素材が必要なのではない。シンプルに「ハイモジュラス・カーボン」に工夫を…

高い素材を使えば
“良質のラケット”を
作れるわけではない

<良質のテニスラケットを作るために、必要なものは何か?>
それは、単価の高い素材が必要なのではない。シンプルに「ハイモジュラス・カーボン」に工夫を凝らしていくことで、さまざまな特徴を持ったラケットを生み出すことができる。そうすることで、よりプレーヤーに安価に良質のラケットを届けることができる。

主要ブランドに対するアンチテーゼ、それこそ「マンティス」の創業者であるマーチン・アルドリッジ氏の持論である。2009年、イギリスで立ち上げた「マンティス」は、一般プレーヤーに、“より確かなものを、より安く”提供したいとアルドリッジ氏が立ち上げたもの。なぜ、そんなことができると思ったのかというと、メーカーの裏側を知っていたからだ。


左が創業者のマーチン氏、右はアンバサダーのグレッグ・ルゼドスキー氏


【関連記事】マンティス〈MANTIS〉テニスラケットを実打レビュー1「PS/CSシリーズ」


アルドリッジ氏は、かつてイギリスの巨大ブランド(D社とS社)のプロダクトマネジャーを務めていた。そこでジョン・マッケンローやジェームス・ブレイク、トーマス・ベルディッチ、アメリ・モウレスモといったスーパースターと仕事をし、彼らのカスタムラケットを作っていたのだという。だからこそ、何が本当に必要なのかということがわかる。すべてとまでは言わないものの、多くのメーカーのラケットが、さまざまな素材を組み合わせることで、価格を上げて利益を作り出しているという実態に疑問を抱いていた。ラケット作りに何が必要かは十分わかっていたうえ、ツアー選手に加えてコーチ経験もあり、さらにスポーツ科学のMBA資格を持っている。そんな多才な人物だからこそ、“それならば、自分で作ればいい”というおもしろい発想に至ったのかもしれない。


「ラケットは、ストリングとの
組み合わせで性能を発揮する」
という考え方

もちろん、いきなり良いラケットができたわけではない。興味深いのは、アルドリッジ氏が、ロジャー・フェデラー(スイス)やノバク・ジョコビッチ(セルビア)、スタン・ワウリンカ(スイス)、古くはピート・サンプラス(アメリカ)など、超一流プロのプライベートストリンガーであるネイト・ファーガソン(プライオリティ・ワン)氏をはじめとするツアーストリンガーたちとタッグを組んだことだ。それは、テニスラケットは、単体では意味をなさないことを理解していたから。マンティスが目指しているのは、ラケットとストリングの和が、1+1=2以上のパフォーマンスを発揮することだった。
そうして誕生したマンティスのラケット。その打球感は“無垢”と表現され、適度な飛びを含めてバランスの良さが特徴となっている。



ラケットのことを熟知するツアーストリンガーとタッグを組んでラケットを作り上げた(一番左がアルドリッジ氏)


とはいえ、なかなか、マンティスを打つチャンスがないという人もいることだろう(気になる方は、WEBから試打ラケットのレンタルを申し込もう)。というわけで、テニスクラシック編集部の試打レポート後編をお伝えしていきたい。

今回ご紹介するのは「パフォーマ(Performa)」と「PRO」シリーズの計4本。「パフォーマ」は、115平方インチでスイングが小さめの方におすすめ、そして「プロ」シリーズはボックス形状のフレームが特徴でオールラウンド向けモデルとカタログでは書かれている。それぞれ、実際の打ち味はどんなものだっただろうか!?


マンティス〈MANTIS〉のラケットインプレ(5)
パフォーマ260 Black
●Performa 260 Black
価格:オープン/フェイスサイズ:115平方インチ/ウエイト(Unstrung):260g/バランス(Unstrung):345mm/フレーム厚:26.5mm-28mm-26.5mm/レングス:27.5インチ/素材:ハイモジュラス・カーボン100% /ストリングパターン:16×19/推奨テンション:44〜62ポンド/グリップサイズ:G1、G2 ※フルカバー付き




編集部(川)
適度な飛びに加えてスピン性能も○
中級者でも使える「テニスが楽しくなるラケット」

マンティスの中で、飛びという面では、間違いなくこれがダントツ。とはいえ、飛びすぎるわけではない、パワーアシストのバランスがすごくいいと思う。これならば、昔、競技をやっていたという方でも、気に入る飛びだと思う。
また、スイートエリアで捕らえた時の打球感は特に気持ちがいい。しっかりボールが食いつくし、ストリングでボールに触れている感覚がすごくわかりやすいので、さまざまなショットが打ちやすいラケットになっている。

だからこそ、特にダブルスのプレーヤーは、ボレー&ボレーになった時など、瞬時に対応しなければならない時にいいはず。そして、これならレベルは問わず、初級者から中級者まで幅広い人に使えると思う。フェイスサイズの問題で、ピンポイントなコントロールは難しいけれど、それを求めないのなら、このラケットは、絶対テニスが楽しくなると思った。



編集部(広)
当てやすく、制御しやすく、回転もかけやすい
テニス経験者でも満足できるラージサイズ・モデル

正直に、今回打った中で一番よかったのがこれ。115平方インチとフェイスサイズが大きく、よくあるテニスが簡単になるラケットでしょ? と思いきや、このラケットのすごいところは、パワー過多ではないところ。この見た目で、適度な飛びだし、かけようと思えば、しっかりスピンをかけることもできるので、使っていて楽しくテニスができる。

何より、115平方インチというサイズは、楽ちんである。特にボレーにおいては、ヒザを曲げずともいいボールが返ったりする。通常、この手のラケットはトップヘビーに感じるが、使っていて重いという印象はない。まさに“振った分飛んでくれる”というイメージ。バックハンド・スライスとの相性がいいというのも、この手のラケットを考えると素晴らしいと思う。サーブもスライスサーブがギュンと切れる。

昔、テニスをやっていたという方でも、その打ち味に満足ができるラージサイズ・モデルである




マンティス〈MANTIS〉のラケットインプレ(6)
マンティス・プロ310スリー
●MANTIS PRO 310 III
価格:オープン/フェイスサイズ:98平方インチ/ウエイト(Unstrung):310g/バランス(Unstrung):315mm/フレーム厚:20mmフラット/レングス:27インチ/素材:ハイモジュラス・カーボン100% /ストリングパターン:16×19/推奨テンション:44〜62ポンド/グリップサイズ:G2、G3、G4 ※ソフトケース付き




編集部(川)
食いつきがよく剛性が高いラケットを
探しているアスリート系プレーヤーに!

かなりのアスリート系プレーヤーが求めているラケットではないだろうか?
310gと重量があり、スイートスポットで捕らえると、しっかりスピンもかかり重さが出てくれる。とはいえ、パワーがあるラケットではないので、一定以上のスイングの鋭さが求められる。そしてスイートエリアで捕らえられる技術とスイングの速さが必要となる。しっかりスイングできる人でないと、軌道が低くなってしまい、ネットしやすくなるはず。ボールを潰せるような人に向いていると思う。
一方で、打球感は柔らかく好みの人も多いはず。食いつきよく、剛性が高いラケットを探している人は、ぜひ一度打ってみてほしい。




編集部(広)
ぶっ叩けた時はかなり良いボールが飛ぶ
310gでもしっかり振れる人ならGOOD

数字以上に、トップヘビー感を感じるラケット。中年には、厳しいが、しっかりスイングしてボールをぶっ叩けた時には、かなりいいボールを飛ばすことができる。
打っていて思ったのは、ウエスタンくらいのグリップが一番適しているのでは? ということ。薄すぎると、軌道が上がらずネットしがちだった。一方で、無理矢理軌道を上げると、オーバーが増えてしまう。というわけで、しっかり叩けてスピンもかけやすいグリップがいいというわけだ。男子でバリバリ振れる人ならば、このラケットの良さが出せると思う。
コントロール性はいいし、バックハンド・スライスもしっかり伸びてくれる。いずれにせよ、310gでも振り切れるという体力の人が使うべきモデルだ。




マンティス〈MANTIS〉のラケットインプレ(7)
マンティス・プロ295スリー
●MANTIS PRO 295 III
価格:オープン/フェイスサイズ:98平方インチ/ウエイト(Unstrung):295g/バランス(Unstrung):325mm/フレーム厚:20mmフラット/レングス:27インチ/素材:ハイモジュラス・カーボン100% /ストリングパターン:16×19/推奨テンション:40〜60ポンド/グリップサイズ:G2、G3、G4 ※ソフトケース付き




編集部(川)
振り抜きがよくスピンもかかる!
バランスがいい295III

310のあとに打ったこともあり、非常に使いやすいなというのが第一印象。そしてプロ310のフィーリングやフレーム剛性、面安定性をマイルドにしたラケットというのが、この295である。その分、使えるプレーヤーの幅は広がるし、中級者なら十分使えるラケットだと思う。
競技系ラケットが好きだけど、実際に使えるということまで考えて、ラケットを選びたいということなら、この295がベターなはず。

310と同様に、思った以上にインパクトでヘッドの振り抜きがいいので、スピンもしっかりかけられるし、打ち味もズシっと重くならず、スパンと打てる。テイクバックにしても、フォワードスイングにしても、295gという重さが活きるラケットなので、個人的にもこちらがお気に入り。300gではちょっと重いという人は、こちらを検討してみてほしい。



編集部(広)
フラット系が伸びるし、スピン系もよし
スイングしやすいオールラウンドな1本

スイングしていて、ヘッドが走るのがわかる。
正直310gは、私にはオーバースペックだな…と思っていたので、「プロ295スリー」はかなり打ちやすいと感じた。
ストロークではフラット系が伸びるし、スピン系もしっかりかかってスピードも乗る。かなり使い勝手がいいラケットである。シリーズの共通点と言える、バックハンド・スライスもかなり伸びていい。スイングしやすい分、サーブも叩きやすい。そういった特徴を考えても、オールラウンド・プレーヤー向きということがわかる。
一つ思ったのは、もう少しだけパワーがあったらいいなということ。試打ラケットはポリだったのだが、ナイロン・マルチならばもっと良さが出せるのではないだろうか。そんなストリング選びもおもしろくなりそうなラケットだ。




マンティス〈MANTIS〉のラケットインプレ(8)
マンティス・プロ275スリー
●MANTIS PRO 275 III
価格:オープン/フェイスサイズ:98平方インチ/ウエイト(Unstrung):275g/バランス(Unstrung):325mm/フレーム厚:20mmフラット/レングス:27インチ/素材:ハイモジュラス・カーボン100% /ストリングパターン:16×19/推奨テンション:42〜58ポンド/グリップサイズ:G1、G2、G3 ※ソフトケース付き



編集部(川)
軽いけれど、テニスをやっていた人が
求めるような食いつき感がある

ボールが食いついてくれる。275gという軽さで、競技志向の人にといったら変に思うかもしれないが、テニスをやっていた人が求めるような食いつき感だと思う。この軽さでこの食いつきというのは、うまく仕上げているなと感じる。

何より軽いから振れてしまう。そして振れるからスピンが結構かかる。ただし、上に振りすぎてしまう人は注意。ボールを前に飛ばす意識があると、ネットの高いところを通ってコート深くに落ちるような質のいいボールが打ちやすい。打球感は、結構球離れが早い。面安定性は⠀すごく高いけど、その分、ボールコントロールは少し難しいかもしれない。
それとやはり軽い分、芯を外した時は苦しくなる。なので、最後までしっかり振り切るクセがついている人がいいだろう。逆に振り切れば、コートの中に入ってくれるので、そこは良かった。



編集部(広)
軽量モデルだが、飛びすぎないのがイイ!
ストリング、鉛など調整する楽しみもありそう

この手のラケットは、過度に飛びやすい物が多いが、これは違った。
275gと軽いので、とにかく振りやすいのだが、意図した分飛ばしてくれるラケットである。つまり、過度に飛ぶようなことはない。これだけ軽く振りやすいラケットで、こういった特徴を持ったラケットはそうはないと思う。打っていて思ったのは、フラット系のほうがいいなということ。スピン系を打つと、スピードをミックスさせるのは、ちょっと難しい。それと、軽量な分、フェイス先端では飛ばしにくいので、スイートエリアのある真ん中から少し手前くらいが、最も気持ちよく打つことができる。
打球感は、シュアという感じ。そこらへんは、テニス経験者が喜ぶものだと思う。それはボレーでも同様でシュアな当たりで、飛びすぎないので、扱いやすい。
飛びがすごいとかスピンがすごいとかというものでなく、いい意味でバランスがいいラケットなので、ストリングを色々と試したり、鉛を張ってみたり、と好きに楽しめるラケットでもあると思う。




取材協力:株式会社テニック大阪℡06-6358-5031、東京営業所℡03-5439-6250
[URL]http://www.mantis-tennis.jp/index.html#
ただ今、MANTIS試打ラケットの無料レンタル実施中!