女子ツアー注目の「プラチナ世代」に迫る(1)西村優菜インタビュー(前編)古江彩佳や安田祐香、吉田優利、そして西村優菜――。彼女たちに共通するのは、2000年度生まれの『ミレニアム(プラチナ)世代』であることだ。アマチュア時代の2019年にプ…

女子ツアー注目の「プラチナ世代」に迫る(1)
西村優菜インタビュー(前編)

古江彩佳や安田祐香、吉田優利、そして西村優菜――。彼女たちに共通するのは、2000年度生まれの『ミレニアム(プラチナ)世代』であることだ。アマチュア時代の2019年にプロツアーで勝利を挙げ、プロ入り後も3勝を挙げた古江に続いて、西村もプロ1年目の昨年、樋口久子 三菱電機レディスでツアー初優勝を飾った――。



2020年の樋口久子 三菱電機レディスでツアー初優勝を飾った西村優菜

――昨秋の樋口久子 三菱電機レディス(10月30日~11月1日/埼玉県・武蔵丘GC)。最終日に6打差を逆転してのプロ初優勝は、改めて振り返ってみても劇的な勝利でした。

「まさかこんなにも早くプロで勝てるとは、正直、思っていなかったです。こういううれしさを、たくさん経験したいなと思いましたね」

――最終日に一緒に回ったのは、2歳上の『黄金世代』の勝みなみ選手と、申ジエ選手という強者でした。

「前半はいつもどおり、優勝を意識せずに回ることを意識していました。とにかく、最終日・最終組を『楽しもう』という一心でしたね。後半に入って、勝さんとの差が2打差になった時に、『強い気持ちで臨もう』と切り替わりました。

(最終日を単独首位で迎えた9月の)日本女子プロ選手権の時に、守りに入ってしまって、(スコアを4つ落として7位タイと)失敗してしまった。それで、次に優勝争いをする時は『攻めの気持ちでがんばろう』と誓っていたんです。後半はそれを思い出していました。

 勝さんとは初めて一緒に回るということで、すごくうれしかったですし、(首位スタートの勝と)あの雰囲気の中であのプレーができたのは、今でも信じられないんですけど、自信になりました」

――「憧れ」と公言していた申ジエ選手からも刺激を受けたのではないですか。

「アマチュア時代から一緒に回らせてもらっていたんですけど、どんな時でも、どんな天候でも、リズムが変わらないというのは本当にすばらしいなと思うんです。ショットもパッティングもリズムが変わらないから、スイングもブレない。改めて『すごいな』と思いましたし、憧れます」

――その申ジエ選手から、優勝後に声を掛けられていましたね。

「はい。『ナイス! おめでとう』と」

――優勝して、目に入ってくる世界に変化はありましたか。

「あんまり変わらないです(笑)」

――改めてプロとしてのデビューイヤーを振り返ると、開幕2戦は予選落ちという結果でした。

「シード権獲得を目標にしてシーズンに入りましたが、序盤はゴルフの調子が悪くて......。(開幕戦となった)アース・モンダミンカップの週の月曜日に突然、ドライバーが振れなくなってしまって。そんなこと、ゴルフ人生で初めてのことだったので、戸惑いましたね。

 結局、修正できないままデビュー戦が終わり、コーチとも相談しながら、一つひとつ問題をクリアしていこうと心がけました。ようやく気持ちよくドライバーが振れるようになったのが、日本女子プロの時でした。

 プロとしてトーナメントを戦う難しさは、たとえば予選落ちしたとしても落ち込んでいる暇なんてないことですね。経験のあるプロを見ていると、すぐに気持ちを切り換えているのがわかりました。

 反対に、私は優勝した翌週(TOTOジャパンクラシック)も、疲れもあって、気持ちの持って行き方がうまくできませんでした。そのあたりは、難しかったですね。一度、気持ちをフラットに戻して戦った結果、なんとか9位タイで終えられましたけど......」

――シーズンは今年まで続きますが、2020年は出場14試合でトップ10入りが6回、賞金ランキング7位という成績で終えました。充実の一年だったのではないですか。

「一試合、一試合、成長ができたというのがいちばんよかった。しかも、優勝までできました。そのなかで、昨年最も気にしていたのがトップ10の回数でした。その回数が増えるということは、優勝のチャンスも増えるということですから。

 そういう意味では、シーズンの満足度で言えば、優勝よりも、トップ10回数(が多かったこと)のほうが勝りますね。また、プロ1年目で、すべてが初めての経験のなかで、あくまでも現時点ですが、シード権獲得という当初の目標をクリアしている状況にあるのは、やっぱりうれしいです」

――西村選手というと、150cmという身長が話題に挙がります。身長が低くても戦えるという自負は、人一倍強く感じます。

「決して体格に恵まれているとは言えない宮里藍さんが、世界で活躍していた影響は受けていると思います。海外の選手は身長も高いですし、飛距離も出るんですけど、ゴルフというスポーツは飛距離以外の部分で、いくらでもカバーできるということを、宮里藍さんは証明されましたよね。私もそう信じています」

――初優勝を遂げた時、試合後のリモート会見で「飛距離には限界がある」とはっきり口にしていたことが印象的でした。

「もう少し身体を大きくすれば、あと5~10ヤードは飛距離が伸びると思うし、昨年末に全米女子オープン(予選落ち)に出場した時にも、あと5〜10ヤードの飛距離が自分にあれば、戦い方がぜんぜん違うな、とは感じました。

 そうは言っても、目下のところ、海外の選手は(ドライバーで)私より30〜40ヤードは前にいく。飛距離を競り合うのは私の身長だと、とうてい無理! だからこそ、ショートゲームで飛距離をカバーしないといけないと思っています」

――その全米女子オープンから帰国したあと、2週間の自主隔離期間があったんですよね。

「はい。ちょうどオフに入るタイミングと重なりましたから、(自主隔離期間によって)かえってゆっくりできました。ずっと自宅にいました」

――コロナ禍にあって、2年にわたる長いシーズンとなりますが、中間点にあたるこのオフの間は、どのぐらいの練習を課しているのでしょうか。

「(師事する中島敏雅プロの)アカデミーに行く時は、朝の9時から18時ぐらいまで練習しています。ドライビングレンジで打つのは200球ぐらい。あとは、アプローチとパターに時間をかけて、コースでそれを確認しています」

――重点的に取り組んできたことは、やはりショートゲームでしょうか。

「そうですね。昨年のツアーを戦ってみて、さらに『ショートゲームのスキルを向上させないといけない』と強く思いました。グリーン周りのバリエーションを増やすことと、苦手な30~40ヤードのアプローチですね。もう少し、自信を持って打てるようになりたいです」

――パッティングに関してはいかがですか。

「嫌いじゃないです。リズム、テンポを大事にしながら、目標に定めたスパットと、自分の目線がきちんと合っているか、毎日確認していますね。アドレスに入って、自分が思っているラインと、実際のラインがズレると迷いが生じますから、そこを一定にできるように」

――ゴルフ人生を歩むうえで、大事にしている言葉はありますか。

「『日々成長』という言葉を、高校に入ってナショナルチームに選ばれた頃から、大事にしています。昨日の自分より、今日の自分は成長したか。それは毎日、確認していますね」

(つづく)



リモートでのインタビューに対応してくれた西村優菜

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。身長150cm。血液型O。『黄金世代』に続く『プラチナ世代』の注目選手のひとり。昨年からツアー本格参戦を果たし、樋口久子 三菱電機レディスで早くもツアー初勝利を飾る。2020-2021シーズン現在の賞金ランキングは7位(獲得賞金4796万4000円)。