女子ツアー注目の「プラチナ世代」に迫る(2)西村優菜インタビュー(後編)女子ゴルフ界の新興勢力として注目の『ミレニアム(プラチナ)世代』。西村優菜はその中心選手のひとりである。今回は、彼女がプロゴルファーになろうと思ったきっかけから、プライ…

女子ツアー注目の「プラチナ世代」に迫る(2)
西村優菜インタビュー(後編)

女子ゴルフ界の新興勢力として注目の『ミレニアム(プラチナ)世代』。西村優菜はその中心選手のひとりである。今回は、彼女がプロゴルファーになろうと思ったきっかけから、プライベートな部分についての話も聞いた――。



2020年にツアー本格参戦を果たした西村優菜。写真はJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップでのもの。

――5歳からゴルフを始めた西村優菜選手。7歳の時、サントリーレディス(兵庫県)を観戦した際に宮里藍さんからボールをもらって、それがプロを目指すきっかけになったというのは有名な話です。

「ものすごいギャラリーに囲まれた宮里藍さんが輝いていて、かっこよく見えたんです。その時に『自分もプロになりたい』と、父には言ったと思います。

 父もその気になって『プロを目指すからにはがんばらないといけないんだぞ』と、私に厳しく接するようになって......。父は学生時代にテニスと陸上をやっていて、大人になってからゴルフを始めた人なんですけど、その日以来、二人三脚でゴルフに取り組みました」

――ゴルフが嫌いになることはありませんでしたか。

「ありましたよ! 中学校に入った時ぐらいに、成績も出ず、父も厳しく......反抗期みたいになってしまって。『ゴルフをやめたい』と思ったんですけど、ちょうど同じぐらいのタイミングで中島敏雅プロの『ゴルフアカデミー中島』に入って、それまでにない知識が入ってくるようになって、ゴルフが面白くなりました」

――どういったところに面白さを見つけられたのでしょうか。

「自分との戦いだし、いろんなことを考えないといけない。日によって、コースによって、自分のコンディションによって、パターンが定まっていないところも、ゴルフの面白さでした」

――実際にプロになり、賞金も稼ぐようになって、生活に変化はありましたか。

「どうなんですかねぇ......。休日はちょっとした買い物に行くぐらいで、あとは両親と住む実家で『Netflix』の韓国ドラマを見て過ごしています」

――まだ大きな買い物をしたりはしていないのですね。

「将来的には『いい家に住みたい!』というのが夢としてあります(笑)。両親にも家を建ててあげたいですし」

――好きな音楽はありますか。

「洋楽も、邦楽も、それにK-POPも聴きます。邦楽だとジェネレーションズ(GENERATIONS from EXILE TRIBE)が好きです」

――練習している時に聴くこともありますか。

「パター練習の時は、ボールにパターが当たる音が耳に入らなくなるので聴きません。ショット練習の時は、片耳だけイヤホンを付けて練習したりしていますね。音楽を聴いていたほうが、意外と集中できるんですよね。試合の日も、ウォームアップの時にアップテンポなジェネレーションズの曲を聴いたりしています」

――好きなマンガや書籍などはありますか。

「あんまり読まないんですよねぇ......」

――「西村優菜」という、ひとりのプロゴルファーとしてだけでなく、『ミレニアム世代』あるいは『プラチナ世代』と呼ばれて、注目されて期待されることについてはどう思っていますか。

「世代で注目していただいていることは、素直にうれしいですよ。同世代にはたくさん強い選手がいて、いい刺激になっていますから。私たちの世代だけではなく、『黄金世代』とか、私たちと近い世代の選手が優勝争いやいいプレーをしていたら、『自分もがんばらなきゃ』となりますし。注目されることがプラスになることはあっても、マイナスになることはありません」

――古江彩佳選手をはじめ、安田祐香選手や吉田優利選手らは、高校時代にナショナルチームで一緒になって、切磋琢磨し合ってきた仲。男子の金谷拓実選手なども含めて、ナショナルチームの経験者がプロに転向し、活躍する――という好循環が日本のゴルフ界に生まれているような気がします。

「私がナショナルチームに入った時は、ゴルフに関して本当に無知で......。いろんな新しい情報が頭の中に入ってきて、新鮮でしたし、たくさんのことを吸収できました。

 なかでも、コースマネジメントの大事さを学んだと思います。プロとして、毎週、異なるコースを転戦していくうえでは一番役に立っていると思います。また、海外の試合にもたくさん出場させてもらって、日本と異なるコースで、日本なら使える技が使えなかったりして、そこでさまざまなテクニックを吸収することができたと思います」

――そういえば、英語も得意なんですよね。

「えッ!? ......(苦笑)。得意ではないんですけど、ナショナルチームのコーチがオーストラリアの方で、みんな、通訳さんを入れずに喋るので、英語を勉強しないとコーチと会話ができないんですよ。

 私はJGA(日本ゴルフ協会)から英語のアプリを提供いただいて、勉強していました。将来、アメリカツアーに参戦することを見据えれば、英語が話せて損はないですし、必ずプラスになる。そのことは、頭に入れていました」

――2019年には古江選手がアマチュアながらプロのトーナメントで優勝。プロ入りしてからも2020年、古江選手が先にデサントレディースで勝利を挙げました。同世代の選手に先を越されて、悔しさや焦りといった気持ちが芽生えることはありませんでしたか。

「どちらの優勝も、私はグリーン脇で見守っていました。彼女が勝った時も、素直にうれしかったし、私もこのうれしさを自分自身で体感したいと思いました。先に彼女が勝ったことで、焦るようなところはありませんでしたね。

『私も近づきたい』『がんばろう』という気持ちだけ。同世代の誰かには負けたくないとか、そういう感情はないですよ。それぞれに特徴があって、みんなが自分の持っていないものをたくさん持っている。同世代の仲間のプレーを見て、自分の強化すべき点もはっきりしますから」

――それにしてもなぜ、同じ世代に強い選手が集まるのでしょうか。

「どうしてなんでしょう、不思議ですよね(笑)。でもみんな、本当に仲がいいですよ」

――今年1年の目標を教えていただけますか。

「複数回優勝と、賞金ランキングのトップ5以内を目指します。まだまだ足りない部分はありますが、シーズンに入ってからもいろんなことを勉強して、吸収して、その次の試合に生かしていきたいです」

――長期的な目標などはありますか。

「海外メジャーで優勝するというのが、最終的な目標です。そこに、少しでも近づけるような1年にしたい。これまでは海外メジャーというか、海外ツアーというのは遠く感じていたんですけど、(昨年の経験によって)一歩近づいたと思って、練習にも取り組んでいます。そして、さらにスキルアップ、ステップアップしていければいいと思っています」

――ということは、米ツアー参戦も視野に入れているのでしょうか。

「若いうちに米ツアーに行きたいとは思っていたんですけど、(昨年末の)全米女子オープンに出場して、米ツアーに参戦するというよりは、"海外メジャーを勝つためにアメリカに行く"という考え方のほうが、私には目標に近づきやすいのかな、と。まずは日本で経験と優勝を積んでからかなと思っています」

――海外メジャーを勝っている日本人選手は、樋口久子氏と渋野日向子選手のふたりだけ。渋野選手とは一緒の組でラウンドすることもあると思うのですが、他の選手との違いを感じるところはありますか。

「常に前向きにゴルフと向き合っているんだろうな、というのは感じますね。それでいて、淡々とプレーする。いい意味で、神経質になりすぎないことが大事なのかな、と学ばせてもらっています」

(おわり)前編はこちら>>

西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。身長150cm。血液型O。『黄金世代』に続く『プラチナ世代』の注目選手のひとり。昨年からツアー本格参戦を果たし、樋口久子 三菱電機レディスで早くもツアー初勝利を飾る。2020-2021シーズン現在の賞金ランキングは7位(獲得賞金4796万4000円)。