オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の男子シングルスはベスト4が出揃い、35歳のロジャー・フェデラー(スイス)、31歳のスタン・ワウリンカ(スイス)、30歳のラファエル・ナダル(ス…

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の男子シングルスはベスト4が出揃い、35歳のロジャー・フェデラー(スイス)、31歳のスタン・ワウリンカ(スイス)、30歳のラファエル・ナダル(スペイン)、そして25歳のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)が名を連ねた。

  ほとんど“レトロ”な雰囲気を持つこの全豪の中で、ロジャー対ラファの決勝は、いまだ起こり得ると可能性を存続させている。彼らはドローの上と下という反対の位置におり、顔を合わせるまでにあと一勝を残すのみという位置にいる。そうなるとフェデラーにとっては18度目の、ナダルにとっては15度目のグランドスラム・タイトルが見えてくる。

 ナダルは、世界3位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)に対して第2セットで6つのセットポイントをしのぎ、6-4 7-6(7) 6-4で倒した。

 この勝利でナダルは、2014年全仏以来のグランドスラム準決勝進出を決めた。ナダルは次にディミトロフと対戦する。ディミトロフは、ベスト4の中で唯一の20代プレーヤーだ。

 フェデラーと世界4位のワウリンカは、ナダルとディミトロフが対戦する前夜にロッド・レーバー・アリーナでスイス人対決を行う。

 30歳以上の選手が3人もグランドスラムの準決勝に進んだことは、オープン化以降の時代では、1968年の全仏以来のこととなる。今年は女子もベスト4に30歳以上の選手が3人勝ち上がっている。

 ナダルはことを複雑にしたがらず、世代の問題については話したがらなかった。彼は準々決勝の勝利の味を堪能している間は、決勝など先の先のことや、それどころか次の相手の「ベイビー・フェド」----フェデラーにプレースタイルが似ているという理由で、より若いときにディミトロフにつけられたあだ名----についてさえ、考えたがらなかった。

 「今日はただ、この勝利を、準決勝に進んだことを楽しませてほしい」とナダルは言った。「僕にとってこれは素晴らしいニュースなんだ。これはいいシーズンのスタートなんだよ」。

 しかし落ち着くと、ナダルもようやく「ディミトロフに対する非常に厳しい試合が待っているね」と認めた。

 ディミトロフはナダルと対戦した8回のうち7回に敗れているが、しばらく続いた停滞の時期を抜け出して、今月はブリスベンで優勝を飾り、大いに自信をつけつつある。

 「グランドスラムで勝つために、近道なんてないんだ」とディミトロフ。「考えてみてほしい。簡単な準決勝なんてものがいつあったかい? 勝利をつかむためには努力して、奮闘しなければならない。戦わなければならないんだよ」。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)とアンディ・マレー(イギリス)の台頭まで、長くテニス界を支配してきたフェデラーとナダルは、当然、ほかの誰よりも多くのことを知っている。両者が、故障による長い活動休止期間から戻ったところだ。その必要だった休養は今、ふたりともうまく機能しているところを見せている。

 フェデラーは昨年のウィンブルドン準決勝のあと、左膝を休ませるため6ヵ月休んだ。彼は2012年のウィンブルドン以来、グランドスラムで優勝していないが、決勝には3度進んでいる。

 ナダルは昨年の全仏オープン3回戦を前に、左手首の故障のため大会を棄権。数ヵ月のオフをとり、途中でプレーしたものの、結局シーズン終盤は休養することになった。その後、今年のブリスベンからプレーし始め、徐々に勢いをつけているところだ。

 ナダルは3回戦でアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、4回戦でガエル・モンフィス(フランス)に勝ち、そして準々決勝で、2週間前にブリスベンで自分を倒したミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を倒すことにより、準決勝へたどり着いた。調子が上向いていることは明らかだ。

 全豪で4度優勝しているフェデラーも、厳しい相手を倒して勝ち上がってきた。グランドスラムの決勝を経験している強豪のふたり、3回戦でトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)、4回戦で錦織圭(日清食品)を倒したあと、準々決勝では、その2日前に世界1位のアンディ・マレー(イギリス)を倒したミーシャ・ズベレフ(ドイツ)を圧倒した。

 もし、の話だが、もしナダルがフェデラーの行く手に立ちはだかっていなかったら、フェデラーはもっと多くのグランドスラム・タイトルを獲得していたに違いない。ナダルは、ふたりが対決した8度のグランドスラム決勝のうち、6度でフェデラーを倒し、キャリアを通しての対戦成績を23勝11敗とリードしている。前述のナダルの勝利の中には、2009年の全豪決勝や、2012、14年の準決勝など、重要な勝利も多々含まれている。

 しかしナダルは、フェデラーをこのモダンテニスの時代において、議論の余地なく、もっとも成功を収めたプレーヤーだと認めている。

 「ドローの逆サイド(トップハーフ)で起きたことは、テニスにとって素晴らしいことだと思う。ロジャーは、故障のあと…多くの人が彼はたぶんもう決して(高い位置に)戻ってこないだろうと、よくあるいつものことを話していたあとに、ふたたび“そこ”に戻ってきたんだ」とナダルは言った。

 「実際に起こったことは、彼が戻ったということであり、彼にはおそらく、グランドスラムで優勝を目指してふたたび戦い、ふたたび勝つ準備ができている。それはファンにとっていいことだ。なぜって、彼は僕らのスポーツの“伝説の英雄”なんだから」。

 そのあとナダルはこう言い添えている。 「僕もここに来ることができてうれしいよ。僕は自分の準決勝に集中する」(C)AP(テニスマガジン)