メジャー各球団は今季の戦力調整の最終段階に入っているが、今季だけを見ているだけでは球団経営は成り立たない。これまで潤沢な資金を武器に、FA市場で即戦力を集めてきたヤンキースは、ここ数年ファームシステム(傘下マイナー)に有望株が枯渇していると…

メジャー各球団は今季の戦力調整の最終段階に入っているが、今季だけを見ているだけでは球団経営は成り立たない。これまで潤沢な資金を武器に、FA市場で即戦力を集めてきたヤンキースは、ここ数年ファームシステム(傘下マイナー)に有望株が枯渇していると言われていたが、方向転換に成功している。

■昨季のチャプマン、ミラーのトレードで他球団から有望株獲得

 メジャー各球団は今季の戦力調整の最終段階に入っているが、今季だけを見ているだけでは球団経営は成り立たない。単年で強いチームを作るのではなく、選手が代替わりしても強いまま勝てるチームを作ることに、GMをはじめ首脳陣の手腕が試される。メジャーレベルにいい才能を集めることはもちろんだが、傘下マイナーチームにいかに多くの将来有望な原石を蓄えておけるかも評価のポイントだ。

 これまで潤沢な資金を武器に、FA市場で即戦力を集めてきたヤンキースは、ここ数年ファームシステム(傘下マイナー)に有望株が枯渇していると言われていたが、方向転換に成功。昨季途中に守護神だったアロルディス・チャプマンをカブスへ、左のセットアッパーだったアンドリュー・ミラーをインディアンスへトレードし、数多くの有望株を手に入れた。先日、米スポーツ専門局ESPN公式サイトのキース・ロウ記者が発表したメジャー球団のファームシステムランキングでは、ブレーブスに次ぐ2位にランクイン。前年の13位から大きく順位を上げた。

 MLB公式サイトによるヤンキースのプロスペクト(有望株)ランキングで堂々の1位と2位に輝いているのは、昨季のトレードで獲得した選手だ。1位のクリント・フレイザーは、左腕ミラーとのトレードで獲得した外野手。2013年ドラフト1位指名された22歳だ。2位のグレイバー・トーレスはチャプマンとのトレードでカブスから獲得。ベネズエラ出身の遊撃手で守備に定評があり、“次期ジーター”との期待が高く、二塁、三塁も守れる。20歳ながら今季メジャーデビューしてもおかしくない逸材だという。

 この2人に続くのが、ヤンキース自前の3選手、ホルヘ・マテオ(遊撃・二塁)、アーロン・ジャッジ(外野・13年ドラフト1位)、ブレイク・ラザフォード(外野・16年ドラフト1位)。さらに、6位につけるのは、ミラーのトレードで獲得したインディアンス14年ドラフト1位の左腕フスタス・シェフィールドと、上位6人の中にドラフト1位選手が4人もひしめく形だ。

■米メディア「(ヤ軍ファームシステムは)どこにも弱点が見当たらない」

 ESPNのロウ記者は「投手の層も厚いし、本来は遊撃手ながらどのポジションでも守れる野手が山ほどいる」と指摘。ヤンキースのファームシステムは「どこにも弱点が見当たらない。各レベルに有望株があふれている」と高く評価し、「今季ブロンクス(メジャーチーム)に何人か昇格するだろう」と予測している。

 彼ら有望株が期待通りの成長を遂げれば、ヤンキースは近い将来、数年先には昨季のカブスのように世界一を狙える可能性は十分にある。2009年以来ワールドシリーズ優勝から遠ざかってしまった強豪チームだが、光明は間違いなく差し込んでいる。

 そんな中、注目を集めるのは、やはり今季終了後にオプトアウト(契約破棄)の権利を手にする田中将大投手の動向だろう。昨季108年ぶりに世界一となったカブスは、若手の勢いに加え、左腕レスターらベテランの経験が大きな意味を持った。若手台頭が確実なヤンキースだが、やはり先発ローテのアンカーとなる田中の存在は貴重だろう。さらに、田中にとっても慣れ親しんだヤンキースに明るい未来が待っているとなれば…。

 今季中に果たして何人の有望株がメジャーの舞台に登場するのか。そして、WBC出場を回避した田中がどんなパフォーマンスを見せ、シーズン終了後にどんな決断を下すのか。シーズンを通じて、その流れを追ってみたい。