ここ「全豪オープン」で最多8回の優勝記録を持つ、第1シードで33歳のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と、第4シードで初めてのグランドスラムタイトルを目指す25歳のダニール・メドベージェフ(ロシ…
ここ「全豪オープン」で最多8回の優勝記録を持つ、第1シードで33歳のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と、第4シードで初めてのグランドスラムタイトルを目指す25歳のダニール・メドベージェフ(ロシア)の対戦。【写真】ジョコビッチとメドベージェフの比較表
現世界王者と、トップの座を狙う次世代スターとの楽しみな対戦だが、この試合の勝者は賞金275万オーストラリアドル(約2億2800万円)、敗者は150万オーストラリアドル(約1億2400万円)を受け取る。グランドスラムでは、賞金は男女同額だ。
この試合の結果に関わらず、ジョコビッチは世界ランキング1位にとどまり、3月8日の週には通算1位在位週が311週となり、ロジャー・フェデラー(スイス)の持つ史上最多記録である310週を抜き去ることが確定している。
一方のメドベージェフは現在世界4位だが、既に3位のドミニク・ティーム(オーストリア)と順位が入れ替わることが確定している。更に優勝した場合には、メドベージェフが2位、ラファエル・ナダル(スペイン)が3位となる。今から約15年前の2005年7月18日に、1位のフェデラーに次いで2位だったレイトン・ヒューイット(オーストラリア)以降、フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、アンディ・マレー(イギリス)以外の選手がトップ2になったことはない。
二人の対戦成績はジョコビッチの4勝3敗と、ほぼ拮抗している。しかもジョコビッチは初対戦から3連勝していたが、直近の4試合を見るとメドベージェフの3勝1敗となっている。グランドスラムでの対戦は1度だけ、2019年「全豪オープン」4回戦で、ジョコビッチが4セットで勝利した。
ジョコビッチは今大会ここまででストレート勝利は1回戦のジェレミー・シャルディ(フランス)戦と準決勝のアスラン・カラツェフ(ロシア)戦だけ。3回戦のテイラー・フリッツ(アメリカ)戦では第1・第2セットを取りながら2セットを取り返され、フルセットで辛勝。2回戦フランシス・ティアフォー(アメリカ)、4回戦ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、準々決勝アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)にはそれぞれ4セットで勝利。合計試合時間は16時間45分と、ここまで6試合中5試合でストレート勝利しているメドベージェフの12時間20分よりほぼ4時間半も長いが、最後の準決勝が2時間を切る短い試合で、日程の関係でメドベージェフより1日余分に休養日があったので、体力的な不利はそう大きくはないのではないだろうか。
「全豪オープン」にはこれが17回目の出場で、8回の優勝だけでなく9回の決勝進出も史上最多記録。現役選手で、決勝進出回数でジョコビッチに続くのはフェデラーの7回、ナダルとマレーの5回。ジョコビッチはこれまでに戦った8回の決勝で負けたことはない。
グランドスラムは63回目の出場で、決勝進出はナダルと並び、現役選手で2位タイの28回。決勝進出回数最多はフェデラーの31回。
30代になってから「全豪オープン」で2度優勝した選手はジョコビッチの他にフェデラー、アンドレ・アガシ(アメリカ)、ケン・ローズウォール(オーストラリア)の3人がいるが、今回3度目の優勝を果たせばジョコビッチが単独トップとなる。
30代になってからのグランドスラム優勝はこれまでに5回遂げており、オープン化以降では2位。今回6回目の優勝を果たせば、ナダルに並んで1位タイとなる。
グランドスラムでの戦績302勝45敗は、フェデラーの362勝59敗に次いで歴代2位の勝利数。3位はナダルの286勝40敗。「全豪オープン」での81勝8敗も、勝利数でフェデラーの102勝15敗に次ぐ2位。こちらも3位はナダルの65勝14敗。
「全豪オープン」はもちろんジョコビッチの最も得意とするグランドスラムだ。ここでの成績は優勝8回、通算81勝8敗、決勝進出9回。優勝回数を基準にすれば、以下は「ウィンブルドン」の優勝5回、72勝10敗、決勝進出6回、「全米オープン」の優勝3回、75勝12敗、決勝進出8回、「全仏オープン」の優勝1回、74勝15敗、決勝進出5回。
今大会3回戦の勝利で、キャリア通算での5セットフルセットでの勝敗が33勝10敗となった。これは勝利数で歴代3位タイ。1位はイリー・ナスターゼ(ルーマニア)の38勝19敗で、2位はイワン・レンドル(アメリカ)の36勝22敗、3位タイの他2人はピート・サンプラス(アメリカ)の33勝15敗、マリン・チリッチ(クロアチア)の33勝17敗。
またグランドスラムでは5セットフルセット30勝9敗となり、勝利数で歴代1位のフェデラー(30勝17敗)に並んだ。「全豪オープン」でのフルセットでは7勝3敗。
ここまでの6試合で合計5セットを失ったが、これはジョコビッチがグランドスラムで決勝に進出した28回で、決勝までに落としたセット数として最多。これまでに2010年「全米オープン」、2012年「全仏オープン」、2014年「ウィンブルドン」で落とした4セットが最多だったが、その3回のうち優勝したのは2014年「ウィンブルドン」だけだ。
昨年の「全豪オープン」決勝では、ティームをフルセットで倒して優勝。グランドスラム優勝17回は、フェデラーとナダルの20回に次ぐ史上3位だ。
一方のメドベージェフはこれが5回目の「全豪オープン」出場で、グランドスラムは16回目。「全豪オープン」では2019-20年の4回戦進出がこれまでの最高成績だったが、2019年「全米オープン」では決勝に進出し、ナダルに第1・2セットを取られながら続く2セットを取り返し、フルセットの末に惜敗した。
ロシア人選手でこれまでにグランドスラムで優勝したのは、1996年「全仏オープン」と2000年「全豪オープン」で優勝したエフゲニー・カフェルニコフと、2000年「全米オープン」と2005年「全豪オープン」を制したマラト・サフィンの二人だ。
メドベージェフは現在25歳10日と驚くほど若いわけではないが、今回優勝したら「全豪オープン」では2012年に24歳252日だったジョコビッチ以来の若いチャンピオンということになる。
グランドスラムでの戦績は「全豪オープン」と「全米オープン」が13勝4敗、「ウィンブルドン」が5勝3敗だが、「全仏オープン」では4年連続出場して4回とも1回戦敗退で、0勝4敗。これには本人も、SNSに「ナダルは30年後にも“全仏オープン”で優勝しているかも」というジョークが出た時に「僕もその頃には1勝できているかな」と自虐ジョークを飛ばしていたほどだ。
昨年末の「ATP1000 パリ」と「Nitto ATPファイナルズ」で2大会連続優勝を果たし、今大会前の国別対抗戦「ATPカップ」でもロシアチームを優勝に導いたメドベージェフは、現在公式戦20連勝中。トップ10選手には11連勝中である。
今大会3回戦で世界33位のフィリップ・クライノビッチ(セルビア)にフルセットで勝利したが、それがメドベージェフの5セットフルセットでの初勝利だった。通算成績は1勝6敗。
グランドスラム優勝回数をさらに伸ばしたい世界王者と、初めてのタイトル獲得に燃える次世代スター。メドベージェフはグランドスラムの決勝という大舞台で、「ビッグ3」の牙城にくさびを打ち込むことができるだろうか。
※為替レートは2021年2月20日時点
(テニスデイリー編集部)
※写真はメドベージェフ(左)とチチパス(右)
(Getty Images)