オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の大会6日目、女子シングルス3回戦。 ベテランのミルヤナ・ルチッチ バローニ(クロアチア)と新顔のジェニファー・ブレイディ(アメリカ)の双方にと…

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の大会6日目、女子シングルス3回戦。  ベテランのミルヤナ・ルチッチ バローニ(クロアチア)と新顔のジェニファー・ブレイディ(アメリカ)の双方にとって、それはまったく予想していなかった状況だった。

 全豪オープンの準々決勝の座をかけて、プレーするということは----。  彼女たちはどうやってここまで進んできたのか、その歩みは、これ以上ないというほど劇的に、種を異にしている。

 ルチッチ バローニは、はるか昔のことだが、かつてこのような舞台に立ったことがあった。それは17歳だった彼女が1999年ウィンブルドンで準決勝に進んだときのことである。

 そのすぐあとに、彼女は個人的理由でテニス界から完全に去り、ふたたびグランドスラム大会に戻っていくため、険しい坂を登ることに何年も費やすことを強いられた。  一方、ブレイディは今、グランドスラム大会で試合に勝つこと、満杯の記者会見場で自分のストーリーを語ることなど、すべてを初めて経験しているところだ。今、このふたりのうちひとりが準々決勝に進出することになる。それは、ふたりのどちらもが年の初めには想像もしていなかったスポットだった。  「実際、私のゴールのひとつは、今から数年のうちにグランドスラム大会の2週目でプレーできるようになることだったの」と、第14シードのエレナ・ベスニナ(ロシア)を7-6(4) 6-2で倒したあとにブレイディは言った。「その目標を紙に書いて自分に言い聞かせた。そう言いはしたけれど、自信を持って言ったわけではなかったのよ」。  ブレイディは間違いなく、より伝統的なテニスの教育を受けてきた選手だ。勝利のあと、彼女はそれを非常に簡潔に要約してみせた。人生のストーリーを53ワードで。  「私はペンシルベニアに生まれ、ただ自然にラケットをとった。9歳のときにフロリダに引っ越し、それはテニスのためではなかったけれど、結果的にそれがうまくいったの。私はクリス・エバート・テニスアカデミーに行き、大学に入学し、2年間プレーした。私は今、ツアーで2年目を始めたところなの」  とはいえ実際は、これよりもう少し複雑だ。  21歳のブレイディは、若いときからテニスで成功できるような教育を受けてきた。彼女はしばらくの間、UCLAでの勉学とプロサーキットを両立させようとしていたが、勝利を重ねてランキングを向上させたあと、フルタイムでテニスに専念することを決めたのだった。  「ただ、そうすべき時だと感じたの」とブレイディは今週初めに言っていた。「出て行ってプレーする準備ができていると感じたのよ」。  ブレイディはまた、拠り所として全米テニス協会のサポートも得ていた。オーストラリアに来る前、彼女はフロリダの新しいUSTAナショナル・テニスセンターで4週間のトレーニングキャンプを行った。それは、あらゆるタイプのコートが100面以上ある、1億ドルをかけて建設された最先端のキャンパスなのだ。  それはルチッチ バローニが、1990年代の終わりにクロアチアからアメリカに移民した際に夢見ていたような施設だった。  現在34歳のルチッチ バローニは、1997年、15歳のときに初めて出場した最初のWTA大会で優勝を遂げた。そしてその数ヵ月後には、マルチナ・ヒンギス(スイス)とペアを組み、全豪オープンの女子ダブルスのタイトルを獲得した。  しかし、1999年のウィンブルドンでの驚きの快進撃のあと、彼女のキャリアは急降下していく。2003年までには財政的困窮のため、プレーをやめることを強いられた。それは彼女が今だ話したがらない、暗黒の時期だった。  エリートレベルへの帰還の道は、フロリダとアラバマでのマイナー大会で得た、68ドルの小切手から始まった。  「ほかの多くの人なら諦めていたと思う。本当に厳しかったから。やってのけたことを本当に誇りに思うわ。私は、どんなワイルドカード(主催者推薦)も得られなかった。どんな特別な扱いも受けなかった。本当に自分で道を切り開かなければならなかったの。そしてそのために、本当に激しく戦わなければならなかったのよ」とルチッチ バローニは言った。  彼女はメルボルン・パークで2番目の勝利を勝ち取るために19年待った。そして土曜日にマリア・サカーリ(ギリシャ)を3-6 6-2 6-3で倒したあと、彼女は今、4回戦に進出した。 「私のキャリアは本当に長く、立ち止まっては、また進むというものだった」とルチッチ バローニ。「すべての勝利が私にとって大きな意味を持つの。それは、大会で優勝するような価値を持つものなのよ」。(C)AP