オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の大会6日目は、男子シングルス3回戦。 第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が消えたドローのボトムハーフ(下半分)。錦織圭(日清食品)は…

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)の大会6日目は、男子シングルス3回戦。

 第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が消えたドローのボトムハーフ(下半分)。錦織圭(日清食品)は「反対側の山なのでまだあまり関係ない。自分のことでいっぱいで、それどころじゃないです」と言ったが、同じ山にいる選手の心情はどうだろうか。第3シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、第6シードのガエル・モンフィス(フランス)、第8シードのドミニク・ティーム(オーストリア)、第9シードのラファエル・ナダル(スペイン)が、ボトムハーフに残る一桁シードの面々だが、その全員が4回戦に駒を進めた。

 注目は〈ネクスト・ジェネレーション〉筆頭の19歳アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)とナダルとの、年の差11歳対決だった。

 一年前は83位だったズベレフのランキングは現在24位で、10代のトップを走る。昨年はツアータイトルも獲得したが、グランドスラムではまだ3回戦を突破したことがない。198cmの長身を生かし、平均でも時速200kmを越えるサービスを武器に、伸びのあるグラウンドストロークを両サイドから繰り出す。

 ズベレフから4-6 6-3 6-7(5)でセット2-1と王手をかける。

 見応えあるロングラリーが何度も繰り広げられた。最長のラリーは37本で、ナダルのトップスピンに対しても、リーチの長いズベレフは高い打点から角度をつけて返すことができる。特にバックハンドのキレが鋭く、ベースラインの後方に押し込まれるナダルには苦しい展開だった。

 しかし20本以上のロングラリーは7割以上をナダルが制した。心身のスタミナはまだナダルがまさっていたようだ。最後はズベレフの足をケイレンが襲い、ナダルは6-3 6-2で2セットを連取した。

 「(ケイレンが)影響したことは確か。でもあんな選手と5セット戦って、自分のパフォーマンスを振り返ってみたら、以前よりはるかに強くなったってことがわかる」

 ズベレフは、不機嫌な顔をしながらもポジティブな手応えを語った。

 ナダルが全仏オープンで初めてのグランドスラム・タイトルを手にしたのは2005年、19歳になったばかりのときだった。しかし、10代のグランドスラム・チャンピオンはそれから誕生していない。2008年全豪オープンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が20歳、2009年全米オープンのファン マルティン・デルポトロ(アルゼンチン)も20歳だったが、それが最年少だ。今は若い世代が活躍しにくい時代といわれるが、そこに現れたズベレフの才能を確認できる大会だった。

 そして、復活を目指し、ふたたびグランドスラム・タイトルを狙うナダルにも変化にチャレンジしようという意図が見てとれた。

 サーブ・アンド・ボレーを頻繁に仕掛ける場面があったのだ。第4セットで2度、最終セットで1度。そしてすべて成功させた。1、2回戦では一度も試みなかった戦術だ。今年、ナダルについた新しいコーチは同郷の先輩であるカルロス・モヤだが、モヤは昨年ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)のコーチを務めて彼のネットプレーを向上させたことが思い出される。

 しかし、14個のグランドスラム・タイトルを持つ30歳が変わるのはそう容易ではない。 「まだ1ヵ月しか経っていないんだ。そんなに一瞬で変わるもんじゃない。もう少し時間がほしい」 

 4回戦の相手は第6シードのガエル・モンフィス(フランス)。30代対決だ。試行錯誤の中、今度はどんなナダルのチャレンジが見られるのか。     ◇   ◇   ◇

 日本勢はダブルス2回戦で日比野菜緒(LuLuLun)とアリシア・ロソルスカ(ポーランド)がリャン・チャン/ヤン・ジャオシュアン(ともに中国)に2-6 2-6で完敗。

 土曜日からジュニアも始まり、まずは男女2人ずつがシングルスに登場した。女子第14シードの内藤祐希(TEAM YONEZAWA)は南アフリカのワイルドカード(主催者推薦)の選手に逆転勝ちしたが、第9シードの宮本愛弓(ローズヒルテニスクラブ)はドイツの予選上がりの選手にファイナル6-8という接戦で敗れ、男子第8シードの田島尚輝(TEAM YONEZAWA)は第1セット6-0の圧勝ムードから逆転負けを喫した。予選突破の菊地裕太(相生学院高)も本戦突破はならなかった。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)