専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第292回 ゴルフとスキーは似ている――と書くと、「それはちょっと無理がある」という意見が多数寄せられると思います。あえて言うなら、野球やテニスとか、ボールを使ってスイングするスポ…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第292回
ゴルフとスキーは似ている――と書くと、「それはちょっと無理がある」という意見が多数寄せられると思います。あえて言うなら、野球やテニスとか、ボールを使ってスイングするスポーツとなら多少は共通点がある、といった感じで......。
しかし今回、私はスキーとゴルフの大いなる共通点を見出し、みなさんに報告したいと思います。
さて、いったいどこが似ているのか?
それは、マーケットおよび行動様式、そしてギアやウエアの販売会社が、まるっと一緒なんですよ。
まず、スキー&スノボ用品の日本の二大量販店と言えば、『アルペン』と『ゼビオ』(『ヴィクトリア』が傘下)ですよね。そのふたつの会社は、ウインタースポーツで大当たりし、巨大なチェーン展開をします。
それから、アルペンは『ゴルフ5』を傘下に置き、ゼビオグループではヴィクトリアが『ヴィクトリアゴルフ』を展開。双方ウインタースポーツからゴルフへマーケットを広げていったのです。
ではなぜ、スキー&スノボの次にゴルフを展開したのか。それは、スキー&スノボとゴルフが販売戦略上、よく似ているからです。要するに、売り方が一緒だから、スキー&スノボの販売ノウハウをゴルフに応用できたのです。
どこが似ているかというと、ふたつのスポーツは長距離移動して一日を費やす傾向があります。要するに、プチトラベルをして、レジャー的要素が強くなります。
しかも双方、ギアやウエアにそこそこお金をかける。ファッショナブルで、最新式のギアやウエアが好まれる、ということですね。
すなわち、どちらもお金がかかるけど、お客さんは購買意欲が旺盛なのです。
思えばあの頃は......、小室(哲哉)ミュージックが全盛で、globeの『DEPERTURES』を聞きながらゲレンデで邁進していました。高い4WD車を買って、ニット帽を被った彼女を助手席に乗せて、一路関越道へまっしぐら。休日の渋滞はすでに関越道入口の谷原交差点から始まり、苗場スキー場まで延々と続いていた......というのは冗談ですが、渋滞はそのイメージぐらい凄まじかったです。
これは、新たに登場したスノボが若年層を取り込み、マーケットが倍になったからです。みんながスキー場に一気に押し寄せて、ゲレンデでもリフト待ちの渋滞が起きていました。
けど、単に上から下に滑るだけの遊びは程なく飽きられ、ゲレンデを埋め尽くしていた人々は、蜘蛛の子を散らすようにいなくなります。ウインタースポーツのバブル崩壊が起きたのです。
『レジャー白書』によれば、ウインタースポーツの人口は1998年の1800万人をピークに減少し、2016年には580万人とおよそ7割も減ってしまいました。量販店としては、その減った分をゴルフで補おうと考えたのですが、ゴルフ人口も今やピークの半分以下。580万人ぐらいまで減っているとされています。
けど待てよ、ウインタースポーツとゴルフを足せば、まだ1000万人ぐらいのマーケットがあるじゃないか。
現在はここです。何とか生き延びることはできるぞ、と。そんな状況にあります。
そして実際、ウインタースポーツは回帰しつつあり、ゴルフもここ2~3年は復活傾向にあって、最悪の状態は脱したかに見えます。
その間、業界関係者は大変な努力をして、マーケット減少に歯止めをかけました。
ウインタースポーツが最初にやったことは、バブル組の復活です。昔、スキーやスノボをやっていたお父さん、お母さん層に向けて、今度は子どもを連れて来やすい環境を作りました。
ゲレンデで雪遊びする層もウエルカムとし、そりはもちろん、スノーモービルで引っ張るゲレンデ版バナナボードなど、たくさんのアトラクションを追加して、おもてなしをしたのです。
こうしたウインタースポーツで鍛えたノウハウは、当然ゴルフにも生かされました。
同時に、プロの世界で女子では「黄金世代」「プラチナ世代」が活況となり、若者のゴルフへの参入が目立ち始めます。そして、そのタイミングに合わせるかのように、ルールの簡略化が実施されました。
他、予約サイトの充実、ネット販売の拡充など、キメ細かなサービスによって、ビジター&ビギナーの受け入れ態勢も万全なものになっています。
どうです? スキー&スノボとゴルフは、そのマーケットが似ていますよね。
ゴルフとスキーは意外と共通点が多いんですよね...。illustration by Hattori Motonobu
双方、レジャー的要素が強く、自然の風景に溶け込み、インスタ映えするというのも、共通点だと思います。ロケーションがすばらしい、というのが何よりです。
また、このマーケットにおけるスポーツ量販店の"逆境に強い"伝統は、今でも健在です。アルペンの2021年6月期の連結業績予想は、営業利益が前期の3.2倍になる模様だとか。これは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ゴルフやキャンプ用品が好調に推移したからだそうです。しっかりとピンチをチャンスに変えていますね。
それでは次に、スキー&スノボとゴルフとの違いを見ていきたいと思います。
これは、いろいろとありますが、アマチュアレベルでは言えば、なんといっても"ゲーム性"があるか、ないか、です。
ゴルフは、生まれて初めてのラウンドであっても、スコアを記します。例えば「156」とかスコアカードに無理やり書かされて、すでにゴルフ慣れした同伴プレーヤーに「記念にとっておけ」などと言われたりします。
最初からルール&マナーにのっとり、多少のオマケはあるものの、とにかくスコアは出すのです。だから、ゴルフは面白いし、苦しいのです。
一方、スキー&スノボは、特にアマチュアレベルで言えば、ただ滑るだけ。ゼッケンもないし、タイムトライアルもない。もちろん、記録をつけることもありません。それでも結構楽しいから、不思議っちゃ不思議です。
個人的には、スキー&スノボと両方を20年ぐらいやっていましたか。世界有数のスキーリゾートとして知られる、カナダのウィスラーやアメリカのスノーバードにも行きました。日本でも名所と言われるスキー場、ニセコをはじめ、キロロ、サホロ、猫魔、焼額、奥志賀など、行きまくりました。
今思うと、どこに行ったかが、一番の思い出になっています。
スキー&スノボは"ゲーム性"がないから、素敵な旅として、トータルで満喫する傾向があります。つまり、誰と行くか。どんなところに宿泊するか。食事や温泉、観光をどう楽しむか。そういう冬の旅として、スキー&スノボがきっかけになっているのです。
ゴルフとスキー&スノボとはそういった違いがあるのですが、最近はゴルフがスキー&スノボのレジャー様式に似てきた――そう思えて仕方がないのです。
私も、すでにゴルフをやり始めて30年が経ちました。腕前のピークは過ぎ、今は安定した90台中頃ですか。何回やっても、似たようなスコアです。
そりゃ、ゴルフそのものは楽しいですよ。けど、もはやストイックに、ひとりで武者修行なんて、できる精神構造ではないです。
単にゴルフをやるだけではなく、気の置けない仲間と電車で弁当でも食べながら移動して。ラウンド後、夜はリゾートなら酒盛りをするし、繁華街の宿ならどこか楽しいスポットを見つけて徘徊する。そうしないと、人生やっていられませんよ。
スキー&スノボは外反母趾が悪化して、硬いブーツが履けないので諦めました。その代わり、ゴルフをネタにして、いろんなところを旅したいと思います。
今までは遠方へ出かけても、観光をおろそかにしてゴルフばっかりでした。今後はラウンドオフの日を作り、各地名所、旧跡などを回ってみたいと思います。
「牛に引かれて善光寺参り」じゃないですが、ゴルフに引かれて全国行脚。今はそんな心境です。