昨年末に行なわれたGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月13日/阪神・芝1600m)は、ソダシ(牝3歳/父クロフネ)が白毛馬として初のGI制覇。デビューから無傷の4連勝で戴冠を遂げた。一方、同じく3戦3勝でレースに臨んだメイケイエール(牝…

 昨年末に行なわれたGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月13日/阪神・芝1600m)は、ソダシ(牝3歳/父クロフネ)が白毛馬として初のGI制覇。デビューから無傷の4連勝で戴冠を遂げた。一方、同じく3戦3勝でレースに臨んだメイケイエール(牝3歳/父ミッキーアイル)は4着に敗れ、明暗分かれる結果となった。



紅梅Sで完勝したソングライン

 年が明けて、GIIIフェアリーS(1月11日/中山・芝1600m)はファインルージュ(牝3歳/父キズナ)が勝利。そして翌週に行なわれたオープン特別の紅梅S(1月16日/中京・芝1400m)はソングライン(牝3歳/父キズナ)が快勝して、クラシック戦線に名乗りを挙げた。

 また、牡馬混合のオープン特別・若駒S(1月23日/中京・芝2000m)でウインアグライア(牝3歳/父マツリダゴッホ)が、同じくオープン特別のクロッカスS(1月30日/東京・芝1400m)でストライプ(牝3歳/父ルーラーシップ)が勝って、これらもまた、春の大一番を狙う注目株へ台頭。ここに来て、3歳牝馬クラシックを巡る争いは一気に熱を帯びてきた。

 こうした状況を受けて、パソコン競馬ライターの市丸博司氏はこう語る。

「前回、今年の3歳世代は『やや低調』と評したのですが、阪神JFのTF指数(※市丸氏が独自に編み出したデータ指数)はかなり高く、現時点で昨年の3歳世代とほぼ同じ指数まで伸ばしてきています。これからがますます楽しみになってきました」

 そして、今週末にはクラシックとの関連が深いGIIIクイーンC(2月13日/東京・芝1600m)が控え、3月には舞台を阪神に移してトライアルも本格化する。今回はこれら注目のレースを前にして、現時点(1月31日終了現在)での3歳牝馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今春のクラシックを目指す3歳牝馬の、現時点における実力・能力を分析しランク付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。



 1位になったのは、2歳女王となったソダシ。やや押し出されての首位となった前回とは違って、堂々たる結果と言える。

市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「阪神JFを勝って、4戦全勝。阪神JFではハナ差の勝利でしたが、TF指数はレースごとに伸ばしており、GI桜花賞(4月11日/阪神・芝1600m)での戴冠へ着実に近づいています。

 阪神JF2着のサトノレイナス(牝3歳/父ディープインパクト)と同指数のため、『桜花賞はこの馬で決まり!』とまでは言えませんが、かなり近い位置にいるのは確かでしょう。白毛のクラシック馬誕生となるか、注目です」

土屋真光氏(フリーライター)
「求められるものが異なる札幌・芝1800mと東京・芝1600mの重賞を勝って、さらに阪神JFも時計を詰めて制覇。それらのことから、他馬との着差以上の能力差、万能性を感じます。

 また、ハナ差でも勝ち切った、という点が評価できます。桜花賞では当然勝ち負けでしょうし、二冠目のGIオークス(5月23日/東京・芝2400m)も同馬の万能性を考えれば、大崩れしないように思えます」

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「血統や走法、つなぎの短さやクッション度を踏まえれば、瞬発力勝負や速い脚を求められると苦しいことは確か。ただ、スタート力があり、阪神JFの結果からもわかるように、走破時計が速くても力を出せることは証明されました。

 好位の馬込みでしっかりと脚をタメて、しぶとく伸びて、3着までハナ+クビ差の接戦をしのいだ底力は素直に評価すべきです。緩急のつく流れの対応がどうか? という疑問はあるものの、上がりが極端に速くなる競馬にならなければ崩れることはなさそうです」

 前回、メイケイエールとともに2位だったサトノレイナスが今回は単独2位に浮上。阪神JFでは2着に敗れたものの、ソダシとハナ差の激戦を演じて大きくポイントを伸ばした。


吉田氏

「全兄のサトノフラッグと似た姿形や走法ですが、精神面はこちらのほうが安定しています。ディープインパクト産駒ながら、しっかりと踏んでいって、いい脚を使えるタイプです。

 阪神JFでは、スタート力の差でソダシの一列後ろから進む形となりましたが、最後はハナ差まで詰める奮闘ぶり。4角手前から残り1ハロンぐらいまではエンジンのかかりが甘く、前が開いてからグイッと伸びたことを踏まえると、外を回る形のほうが、もっとパフォーマンスが上がるかもしれません。

 阪神JFでのソダシとの差は、枠順とポジショニングの差。完成度や伸びしろ、ペースへの対応などを考慮すれば、本番での逆転も難しくはないと見ています」

市丸氏
「阪神JFでは、一旦は内から先頭に出たようにも思いましたが、差し返されての2着。ともあれ、中団待機からの、狙いすましたクリストフ・ルメール騎手のイン強襲にはしびれました。このレースができるなら、ソダシと互角と見ていいでしょう。

 弥生賞を勝って、菊花賞で3着だったサトノフラッグの全弟で、まだまだ奥がありそう。桜花賞も有力ですが、オークスでも十分やれそうな血統です」

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「阪神JFでは、強い2着でした。ソダシとサトノレイナスは皐月賞、ダービー、菊花賞も含めてクラシック5大レースすべてに登録しており、年末年始の取材を通して、サトノレイナスも牡馬クラシックへのチャレンジを検討している様子がうかがえました。

 最終的には、桜花賞直行を発表。となれば、取りこぼしは許されない必勝態勢と見ていいでしょう」

 3位はユーバーレーベン(牝3歳/父ゴールドシップ)がランクイン。阪神JFで際どい3着となったことが評価されたようだ。

土屋氏
「父コールドシップ×母父ロージズインメイという血統からイメージされるようなパワー型ではなく、良馬場での末脚にも光るものがあります。阪神JFでも時計勝負にきっちり対応して見せました。

 立ち回りの器用さは、父譲りでしょう。全体のスケール感では上位2頭ほどではないものの、どんな条件でも確実に上位に食い込んできそうなイメージがあります」

 4位には3頭が入った。前回2位だったメイケイエールの他、紅梅Sの勝ち馬ソングラインと、1戦1勝のアールドヴィーヴルが圏外からランクインを果たした。

市丸氏
「メイケイエールは、おそらく短距離馬。阪神JFは出遅れて後方から進んだため、何とかこなしたように思えます。とにかくかかる馬で、鞍上の武豊騎手がだましだまし絶妙なタイミングで追い出しましたが、最後は一杯になってしまいましたしね。

 次走はGIIチューリップ賞(3月6日/阪神・芝1600m)ということですが、本番の桜花賞ともに距離的にはギリギリでしょう。短距離戦線での活躍を、いずれ見てみたいと思っています」

木南氏
「ソングラインは、未勝利戦(11月22日/東京・芝1600m)の勝ちっぷりのよさから注目していました。紅梅Sでしっかり結果を出したことで、桜花賞へ楽なローテが組めるようになったことは大きいと思います。

 牝系がロジユニヴァースら重賞勝ち馬を多く輩出しているソニンクというのも魅力。これから、まだまだ強くなりそうです」

本誌競馬班
「アールドヴィーヴルはフサイチコンコルドの母バレークイーンからなる血筋。近親には2017年のダービーで1番人気に推されたアドミラブルがいて、代々受け継がれている切れ味が魅力です。

 不良馬場だった新馬戦(10月10日/京都・芝1600m)の勝ちっぷりは圧巻でした。クイーンCの結果次第で、クラシックへの楽しみが膨らみます」

 現状、上位2頭以外は大混戦と言える3歳牝馬戦線。ランク外にも今後の浮上が見込まれる素質馬が多く、本番までには勢力図がガラッと変わる可能性がある。一段と熾烈さが増すトライアルシーズンから目が離せない。