辻発彦新監督を迎え、3年連続Bクラスからのチーム再建を目指す西武ライオンズ。昨季の低迷の原因として「投手力不足」が挙げられる中、絶対的エースだった岸がFA移籍でチームを去った。投手陣のステップアップが求められる一方で、リーグ屈指の打線はどん…
辻発彦新監督を迎え、3年連続Bクラスからのチーム再建を目指す西武ライオンズ。昨季の低迷の原因として「投手力不足」が挙げられる中、絶対的エースだった岸がFA移籍でチームを去った。投手陣のステップアップが求められる一方で、リーグ屈指の打線はどんな様相を呈するのか。2017年に注目されるトピックスを取り上げてみた。
■3年連続Bクラスからの脱却目指す西武、2017年の注目ニュースは?
辻発彦新監督を迎え、3年連続Bクラスからのチーム再建を目指す西武ライオンズ。昨季の低迷の原因として「投手力不足」が挙げられる中、絶対的エースだった岸がFA移籍でチームを去った。投手陣のステップアップが求められる一方で、リーグ屈指の打線はどんな様相を呈するのか。2017年に注目されるトピックスを取り上げてみた。
○辻新監督の手腕やいかに?
何と言っても、今季最大の注目は、新しくなった指揮官によって、チームがどのような変化を見せるかだろう。昨季ダントツでリーグワーストだった失策数「101」を減らすため、守備のテコ入れが至上命題の1つとされる中、西武黄金期に“名二塁手”としてその名を轟かせた守備の達人が、いかにそのメソッドを選手に植えつけられるか。また一方で、昨季は6球団のうち打率2位、得点2位タイ、本塁打1位と、リーグ屈指の破壊力を誇った打撃力をどのようにして生かしていくか。起用選手、打順、投手起用法など、“辻カラー”をどこに色濃く出していくのかは必見だ。
○主将就任による浅村のさらなる進化
“辻カラー”として、まず最初に出色したのが、浅村のキャプテン抜擢だった。昨秋キャンプに「まだ仮にだから」と“お試し期間”として任命した時点で、おそらく決意は固まっていたのであろう。同キャンプ終了直後に行われた11月末のスポンサー向けパーティーの席で、早々に正式指名した。中学、高校時代を合わせても初となる大役に、本人も「言葉ではなく、プレーで引っ張るのが理想。そして、ピンチの時こそ声を掛けにいけるような、周りがしっかりと見られるキャプテンになりたい」と、意欲十分だ。さらに、今季から念願の背番号『3』のユニフォームを身に纏うことになった。「背番号3は、チームの顔の人がつけてきた番号。自分もその“顔”になれるように頑張っていきたい」と話しており、チーム牽引の責任感はより一層増すことは間違いない。自身の目標に「すべての数字でキャリアハイ」を掲げていることからも、今季最も注目すべき選手である。
■菊池はエースになり得るか、中村の本塁打王返り咲きは?
○菊池はFA移籍した岸に代わるエースになり得るか?
投手陣で最大のキープレーヤーは、昨季チーム最多の12勝を挙げた菊池雄星だ。絶対的大黒柱だった岸がFA移籍したため、現時点でチームはエース不在。その“エース”という選ばれし者のみが与えられる称号を受け継ぐのに、今、最も近い存在が、背番号16である。昨季は、プロ7年目で初の開幕投手を務め、快投。シーズン通しても、初の2桁勝利、規定投球回数到達と、キャリア最高の成績を残した。さらなる飛躍を誓う今季、“エース”と位置づけられれば、常にカード頭を任され、毎回相手チームのエースクラスとの対戦が待つ。その苦境下で、どれだけ勝利を挙げられるか。安定感、粘り強さ、勝負強さ、信頼感など、すべての部分でより一層のレベルアップを遂げられるかが、チームの成績を左右する鍵を握っている。
○牧田のポジションは?
その対応能力の高さゆえ、プロ1年目から先発を基本としつつも、中継ぎ、抑えと、チーム状況によってあらゆるポジションで起用され、結果を残し続けてきたが、6年目の昨季は初めて中継ぎのみでの起用となった。その中で7勝と好成績を残せたことで「中継ぎの方が貢献できるのかな、と考えるようになった」と話す。一方で、先発としての実績も十分なだけに、岸の移籍で空いた1枠に入り込みたい思いも「捨ててはいない」というのも本心。菊池、ウルフ、十亀、野上、多和田、高橋光の7枚に加え、新外国人キャンデラリオと頭数は揃っており、その候補者全員が揃ってシーズンを通して実力を発揮できれば問題はないが、果たして……。チームとしては、牧田を中継ぎに専念させられることが、投手陣の理想形だろう。
○今季こそ正遊撃手が固定できる?
2013年シーズンから毎年、遊撃のレギュラー固定を大きなテーマとしてきたが、現時点でも未だ答えは出ていない。だが、今季こそ、いよいよ固まりそうな気配だ。ルーキー時から5年間「最大候補」とされつつもレギュラーを獲りきれていない永江が、打撃さえ向上すれば即答となる立場にあることに変わりない。だが、そこに割って入りそうなのが、外崎と昨季ルーキーながら急成長を遂げた呉だ。永江が故障で秋季キャンプに参加できなかった一方で、外崎と呉は同キャンプで辻監督の直接指導を受け、さらなる成長を遂げた。また、2016年度社会人ベストナインに遊撃部門で選ばれた源田壮亮が新加入し、指揮官も即戦力として大きな期待を抱いている。現役時代「守備の名手」と称された辻監督から合格印をもらえるのはどの選手か。
○主砲・中村剛也のホームランキング奪還なるか?
2015年後半から状態の悪かった右膝が、昨季はさらに悪化。その影響で思うようなスイングができず、結果的に108試合21本塁打61打点と、規定打席にも届かず不完全燃焼に終わった。「なかったことにしたい」と本人の悔しさも相当で、リベンジの思いから、右膝への負担を軽減した打撃フォームへの改変を決意。昨秋から着々と新フォームを固めつつある。西武第二球場で行っている自主トレでは、すでにマシンに向かい、13日からはスパイクを履いての打撃練習と、本格的にギアを上げている。「ケガなく、シーズンフルで戦いたい」と目標を口にしたが、キャリアで規定打席に達した6シーズンは、いずれも本塁打王に輝いており、規定打席に到達すればタイトル奪還が大いに期待できる。昨季リーグ2位だったメヒアとのハイレベルな本塁打王争いが、ぜひとも見たい。
■森は炭谷の脅威になるか、警戒される盗塁王・金子侑は…
○捕手・森は正捕手・炭谷をどこまで脅かせるか
昨季は、ルーキーイヤーの2014年以来2年ぶりに捕手として起用された森友哉。26試合でマスクを被り、そのうち22試合が先発だった。フル出場でマスクを被る試合も大幅に増え、さらには1カード全てのスタメンマスクを任されることも経験した。1年目は、捕手として出場する負担が、最大の武器である打撃に明らかなマイナス影響を及ぼしてしまったが、昨季はその課題を見事にクリアした。辻新監督も「捕手しか考えていない」と断言し、本人も「銀さんにライバルだと思ってもらえる存在になりたい」と気合十分。2009年以来、怪我での長期離脱を除いて正捕手に君臨し続ける炭谷銀仁朗に真っ向勝負を挑む。無論、炭谷も黙って譲る気は毛頭ない。昨季は、攻守にわたり「何もかも納得いってない。悔しいの一言」に終わった。特に「守備を一から見つめ直さないと」と自戒し、今季は原点回帰のシーズンとすることを誓っている。果たして、森は炭谷の脅威になれるのか。はたまた『侍JAPAN』経験者・炭谷が実力差を見せつけるか。大きな見どころである。
○ドラ1今井の1軍活躍はあるか?
西武は2012年シーズンから5年連続で、ドラフト1位選手が1年目からしっかりと活躍を見せている。即戦力として獲得する社会人卒に限らず、2014年入団の森(3試合連続本塁打など)、15年の高橋光成(5勝2敗1完封、月間MVP最年少受賞など)と、高卒ルーキーもそれぞれ印象的な活躍を見せ、実力を発揮している。今季のドラ1投手・今井達也も高卒だが、森、高橋光に続くことができるか。2016年夏の甲子園優勝投手(作新学院)という強運の持ち主。さらに、「入団時の岸(孝之/楽天)みたいで、ものすごくバネがある。キャッチボールの球質も素晴らしい」と、自主トレを見た関係者が揃って絶賛するポテンシャルを兼ね備えているだけに、期待度は高い。
○盗塁王・金子侑は盗塁数を増やせるか?
53盗塁を記録し、盗塁王のタイトルを獲得した金子侑司が、今季どれだけの盗塁数を挙げるかは非常に気になるところだ。当然、タイトル保持者に対し、相手チームの警戒が強まることはいうまでもない。また、昨季は1番打者に固定され、周りの打者の多大な協力もあったことも受賞の大きな要因となったが、打順など今季の起用法によっては、昨季とは違う状況になる可能性もある。その中で、いかにして武器を発揮できるのか。昨季は「変わった自分を見せたい」と決意し、実際に台頭を見せられたからこそ、今季がさらに重要になることを本人も熟知している。“辻野球”の中でどれだけ足で生きるか。実に楽しみだ。
上岡真里江●文 text by Marie Kamioka