オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月16~29日/ハードコート)の大会3日目。 猛暑の前日から17、8度も気温が下がったメルボルンだが、多くの日本のファンが詰めかけた『ハイセン…

 オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月16~29日/ハードコート)の大会3日目。

 猛暑の前日から17、8度も気温が下がったメルボルンだが、多くの日本のファンが詰めかけた『ハイセンス・アリーナ』は我らがヒーローを後押しする熱気でヒートアップ。錦織圭(日清食品)は声援に応え、世界ランク72位のジェレミー・シャルディ(フランス)を6-3 6-4 6-3で退けた。全豪での3回戦進出は7年連続。

 また、この日はダブルスも始まり、まずは穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)/加藤未唯(佐川印刷)が1回戦でワイルドカード(主催者推薦)の地元ペア、エレン・ペレス/オリビア・チャンドラムリア(ともにオーストラリア)を7-6(3) 7-6(3)で下し、ウィンブルドンからグランドスラム3大会連続の2回戦進出を果たした。しかし青山修子(近藤乳業)/二宮真琴(橋本総業ホールディングス)は、第3シードのエカテリーナ・マカロワ/エレナ・ベスニナ(ともにロシア)に4-6 7-5 2-6で敗れた。

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 サービス力とはスピードとパワーだけでは測れない。わかりきったことかもしれないが、それを目の当たりにする試合だった。

 シャルディの武器の一つはビッグサービスで、この日も最速で時速212km、平均で時速188kmを記録した。いずれも錦織を20kmも上回るスピードだ。しかし相手に返されなかったサービスの確率は29%と31%でわずかながら錦織のほうがまさっている。コースや球種などスピード以外のサービスの要素に加え、リターン力もものを言った結果だった。

 第1セットは錦織が2つのブレークで6-3と危なげなく奪ったが、第2セットはブレーク合戦。先にシャルディがブレークしてすぐにブレークバックするという展開だった。特に第5ゲームをブレークされたあとの第6ゲーム、4度のデュースの末にブレークバックするが、このゲームだけで2本のダブルフォールトをもらった。

 シャルディには一つ不名誉なデータがあって、サービスにまつわるさまざまな統計をもとに割り出した「サービス力」のランキングのトップ75人のうち、1試合平均のダブルフォールトの数が5.5本ともっとも多い。この試合でも5つのダブルフォールトをおかした。 

 第3セットも錦織はいきなりブレークを許したが、精神的にはそう苦しくなかっただろう。「展開が速く、アグレッシブな選手だけど、その分ミスも多い」と錦織が言ったように、そこまでの内容を見ても、必ずブレークバックのチャンスは訪れるという確信が持てた。

 実際に、またすぐ次のゲームでブレークバック。最後はダブルフォールトだった。錦織は第5ゲームも第7ゲームもブレークポイントを握られたが、これらをしのぐと、第8ゲームでブレーク。サービング・フォー・ザ・マッチは危なげなく締めくくった。

 「チャンスはあったけど、ブレークしても毎回すぐにブレークバックされてしまってはどうしようもない」

 シャルディはそう言って肩をすくめ、「錦織の弱点はサービスだけで、あとはまったく隙がない。だからトップ5なんだ」と続けたが、そのサービスでも総合的には錦織のほうが上というデータは、この試合を見る限り、間違ってはいないようだ。

 3回戦の相手は世界ランク121位のルーカス・ラッコ(スロバキア)。予選を突破した勢いで第26シードのアルベルト・ラモス ビノラス(スペイン)を破り、67位のデュディ・セラ(イスラエル)も退けてきた。丸2年対戦していないが、対戦成績は錦織の2勝。見通しはいい。

 同じブロックにいるロジャー・フェデラー(スイス)も2回戦を突破した。フェデラーはトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)との3回戦が最初の山場だが、そこを越えれば4回戦で錦織との対決となる。

 「もっと楽に勝てる選手のほうがそれはいいですけど、フェデラーとやるのは勝ち負け関係なしに楽しい。自分がテニスをしていて楽しいと思える選手なので、まあ楽しみです」と、錦織は「楽しい」「楽しみ」を何度も口にした。みんな、楽しみにしている。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)